以心伝心
【前回までのあらすじ】
・野盗、狩り終わる
・ウォーリーさん、いきなりプロポーズする
「おお・・・イリスサマも宇宙人とか信じるタイプなのデスカ。嬉しいデス。」
野盗のキャンプを出た俺たちは、いつものトラックと野盗たちからパクったジープに分乗し、ドラゴンの町に向かっている。トラックは来た時と同様ウォーリーが運転しているのだが、助手席にはイリスさん・・・もちろん、今はきちんと服を着ている・・・が座り、楽しげに話していた。いや、イリスさんは一言も喋っていないし表情は虚ろなので、楽しげに話しているのはウォーリーだけなのだが・・・不思議なことに、ウォーリーは無言で虚空を見つめる彼女と会話できるらしい。
「え・・・そうデスか?カッコいいなんて言われたのは初めてデス。超照れてしまいマス。」
「・・・。」
「イリスサマも、最高に可愛らしいデス。・・・デヘヘ・・・。」
「・・・。」
最初はウォーリーが彼女欲しさのあまりついにバグったのかと思ったのだが、そうではないらしい。というのも、俺たちが知らないイリスさんの情報を正確に聞き取っていることがわかったのだ。彼女はドラゴンの町の町長の孫娘でイリスさん、16歳。結婚はしておらず、両親は若くして亡くなったので、祖父母が親代わりに育ててくれた・・・というようなことをウォーリーがスラスラと話し、しかもそれが他に捕まっていた子たちから聞き出した内容と完全に一致するのだ。
「そうデスね。しかし我のことをお爺サマは認めてくださるデショウか・・・心配デス。」
「・・・。」
「そっそうデスか?いえ、絶対に認めてもらいまショウ。我におまかせくだサイ。」
「・・・。」
しかもあの唐突なプロポーズ、オッケーをもらえたらしい。俺たちには承諾の言葉は一言も聞こえなかったが。ウォーリーは飛び上がって喜んでいた。
「ねぇマキちゃん・・・あれ、どういうことだと思う・・・?」
俺の質問に、マキちゃんは首をかしげ、形の良い眉にシワを寄せて答えた。
「確かに、ウォーリーは人間をよく観察する傾向がありましたわ。3000年も孤独に過ごしていましたから、コミュニケーション能力に不安があったのでしょう。私たちにボディを与えられてから、少しでも早く人間社会に溶け込むためにそういうクセがついたのです。」
「ふむふむ。」
「そしてイリス様ですが、彼女はあまりにも強烈な恐怖体験と苦痛、ストレスにさらされ、強引な人体再生を繰り返された結果として、脳の機能は正常ながら精神と肉体が分離したような状態になってしまったものと予想されます。ほとんど肉体が意思に反応することはありませんが、それでも精神の動きがわずかな呼吸の乱れや汗、体温の変化などに現れるのでしょう。それをウォーリーが読み取っているのですわ。」
「・・・そんなので、人名とかまで正確にわかっちゃうもの?」
俺の疑問に対して、マキちゃんはなかば投げやりに言った。
「ご主人様、愛に不可能などないのです。」
「それ、最近だれかが言ってたね・・・。」
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野盗のアジトを出る前、ハルはいつの間にかアジトの中にやってきて、女の子たちに射撃の仕方を教えていた・・・それも、ジョージを射撃練習のターゲットにして。俺が声をかけると、「ひゃっ!」と叫んでからパッと顔を赤くし、すぐに目を逸らす。どうやら愛がうんぬんと言ったことを思い出して照れているらしい。
「ハル・・・さっきはありがとね。おかげで助かったよ。」
「に、にーさん!さ、さっき・・・さっきのアレアレアレアレは違うのよ?ちょっとしたジョークっていうか・・・ううん、冗談っていうわけじゃないんだけど・・・その・・・」
「グエッ!」
ハルは照れに照れまくり、しどろもどろになっているがそれでも片手で持った銃は正確に敵の方に向いている。照れた拍子に引き金が引かれて、地面に転がるジョージの脚に命中した。アイツも自業自得とはいえ、ちょっとだけ可哀想だ。ちょっとだけ。
「いやいや、光学迷彩で消えてる相手をあの距離で狙撃するとか・・・マジで神業だよ。」
「そりゃまあ、だってにーさんにピンチだったし・・・。助けてあげようと思ったら自然とカンが冴えわたったっていうか・・・愛の力っていうか・・・やだ、なにいってんのかしら、あたし・・・」
「ギョアッ!」
赤く染まった頬を指でかくと、反対の手で持ったハンドガンから弾丸が飛び出して今度はジョージの尻に命中した。
「・・・いつもありがとね、ハル。本当にすごいよ。」
「もう〜!そんなに褒めたってなにも出ないよ〜!」
「グワッ!アギャア!タスケテ!ヤメッヤメテッ!」
とろけそうな顔でニヤニヤしながらイヤイヤするハル。そんな時でも彼女の銃口は常に敵に向いている。イヤイヤする度に弾丸が飛び出して、発射されたすべての弾丸がジョージの身体に命中して風穴を開けた。ハルの銃はフェザータッチトリガーにでも改造してあるのだろうか、簡単に弾が出すぎだと思う。褒めても何も出ないとわりに弾丸だけは大盤振る舞いされ、虫の息になったジョージは女の子たちがキャッキャしながら本日何百回目かの再生装置に引きずっていった。合掌。
ふいにハルが火照った顔のまま、じっと俺のほうを見た。赤い夕陽がタンクトップから覗く胸元や、ホットパンツから伸びる脚線美のみずみずしい肌を赤く染めている。乾いた風が吹いてハルの長い髪を揺らした。女の子らしい服もアクセサリーもないが、手に持った銃や漂う硝煙の匂いのさえ彼女の魅力を引き出す小道具に見える。ハルは、ハルでしか発揮し得ない強烈な引力で人を惹きつける。彼女はそっと俺の目の前に立つと、いたずらっぽく笑いながら上目づかいで俺を見た。
「にーさん・・・あたしの愛の力、思い知った?」
「・・・うん、これでもか!ってぐらいね。」
「えへへ・・・えへへへへへへ・・・」
「うん、ハル、危ないから照れるときは銃をしまおうか。」
荒野の天使は今日も最高に魅力的だ・・・息を吐くように弾丸が飛んでくるので気をつける必要があるけど・・・。
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ほどなくして、俺たちはドラゴンの村に到着した。大きな門は固く閉ざされ、外壁の上には複数の銃口がこちらを狙っている。野盗どものせいで酷い被害を受けたのだから無理もないだろう。外壁から、よく通る男性の声が響いた。
「何者だ!この町は現在、よそ者の立ち入りを完全に禁止している。すぐに立ち去らないのであれば攻撃させてもらう!」
するとジープの方からドヤドヤと女の子たちが降り、外壁に向かって大声で怒鳴った。
「あんた、2丁目に住んでるホアンでしょ!おねえさまたちに失礼なことを抜かすんじゃないわよ!さっさと門を開けなさい!」
「そうよそうよ!あんたの◯◯◯を◯◯◯するわよ!」
「キャハハハハハハ!」
ほどなくして大慌てで門が開かれ、俺たちは町を上げての大歓迎を受けることになった。町長の家に招かれ、飲めや歌えの大騒ぎである。女の子たちはみんな生きて帰り、町に訪れた脅威はあっという間に去ったのだ。ちなみにジョージはすぐに治安維持部隊の人に引き渡したので、尋問などの用事が済み次第、すぐに処刑されることになるだろう。もっともすでに廃人のようになっていたので、死んでいるのと変わらない気がするけど・・・。
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翌朝。
町長の家に泊めてもらった俺たちは、柔らかなベッドでゆっくり休むことができた。俺は大きく伸びをしてから、割り当てられた部屋を出てダイニングに向かう。まだ早朝だがもう起きている人がいるらしく、声が聞こえてきた。
「いや・・・しかしこんな・・・孫娘はこんな状態で・・・」
町長の戸惑うような声が聞こえる。孫娘・・・?・・・ん、なんだか嫌な予感が・・・。
「なんだか楽しそうな話題ですわね。」
「マキちゃん・・・この流れでそれはないでしょ・・・。」
ワクワクするマキちゃんと、ドキドキする俺の予感は見事に的中する。聞こえてきたのはウォーリーの声。ド定番の、なんの捻りもないストレートな言葉だった。
「イリスサマを・・・お嬢さんを我にくだサイ。」
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