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基本

【前回までのあらすじ】


・旅の途中で野盗狩り

「軽トラが殺られた!撃て撃て!弾幕薄いぞ、なにやってげぼふ」


次々と現れる野盗をこともなげに射殺しながらウォーリーは前進していく。大型のアサルトライフルを片手で乱射しながらズンズン進む姿は、さながら昔のアクション映画のようだ。ちなみに映画のように弾丸が避けてくれるわけでもなければ光学迷彩も相変わらず使えない状態なので、俺もウォーリーもちょくちょく弾丸を食らっている。しかしウォーリーの分厚い人工筋肉に守られたボディはライフル弾をエアガンの弾のように弾き、俺は撃たれる度にひっくり返っているがすぐに治るのであまり関係なく、起き上がってウォーリーの後に続く。敵からしたら相当気持ち悪いふたりに見えるだろう。


「ご主人サマ、このまま一番奥の小屋を目指しマス。そこに生体反応を多数確認しまシタ。」


「はいよ、りょうかげぼふ」


「撃たれてないで、ちゃんと聞いてくだサイ。」


「撃たれるのは仕方なくない・・・?」


それにしてもさっきから10人以上死んでるのに、俺の撃った弾が当たった気配がまるでない。この銃、壊れてるんじゃないか?と思って手元の銃を見ていると、マキちゃんが声をかけてきた。


「ご主人様、当たらないのは銃のせいではございません。腕の問題ですわ。」


「・・・心を読まないでくれる?」


「ハル様に習った基本がまるでできていないではないですか。」


「基本・・・基本ってなんだっけ。」


「いいですか、まずワキを締めて。」


「ワキ。」


「肩幅に足を開いて。」


「アシ。」


「この距離でしたら、目標の少し上を狙った方がよろしいですわ。」


「ウエ。」


「そうしたら撃ちましょう。指は急に動かさず、引き金を引き絞るようにするのですよ。」


「ユビ。」


ワキアシウエユビ。よし、完璧だ。俺が放った弾丸は狙った野盗のはるか頭上を通過して、その代わり無造作に積まれていたドラム缶に命中した。燃料が詰まっていたドラム缶は大爆発を起こし、周囲にいた野盗をまとめて焼き尽くす。俺は自分の射撃の成果に驚くばかりだ。


「基本ってスゴイな・・・。」



「ひっ・・・ひっ・・・やだぁ・・・」


「くくく・・・動くなよ・・・いきなり血まみれになりたくねぇだろぉ・・・」


恐怖で動けない少女の服を、ジョージはナイフを滑りこませてゆっくりと切り裂いていく。他の少女たちは地面に座って身を寄せ合い、身を震わせながらジョージのすることを見ていることしかできない。そんな様子を下卑た笑いを浮かべながら、10人以上の荒くれ者たちが酒を飲んでいる。イリスは相変わらず衣服もまとわず、虚空を見つめて立ち尽くすだけだ。外からは銃撃の音が響いているが、気にかける者はいない。「一撃一殺のワイズ」がいる以上、侵入者がここまでたどり着くなど夢にも思っていないのだろう。


「キレイな肌してるじゃねえか・・・少し切れ目を入れてやったらどんな声で鳴くかなぁ・・・?」


「やっやっ・・・やめて・・・」


「ああ・・・いいぞ、その怯え方ァ・・・!だめだ、もうガマンできね・・・なッ!?」


ジョージのナイフが少女の肌に肉薄した瞬間、巨大な爆発音が小屋を揺らした。基本を大事にした銃撃による爆発である。


「なんだァ、なにが起きてる!?ワイズはどうした!?」


「俺たち、見てきます!」


酒を飲んでいた男たちがバタバタと小屋を出て行く。お楽しみを邪魔されたジョージが憎々しげにそれを見送ると、依然として立ち尽くすイリスの手をつかんで小屋の裏手から逃げ出した。ワイズが殺られたとなれば、相手は相当な手練であることは間違いない。故に、迷うことなく人質を連れていく。少女たちではなくイリスを選んだのは、むろん人質としての価値が高いと考えたからである。そうでなければ精神が壊れたイリスはとっくに殺されていただろう。


「ナニモンか知らねぇが、舐めたマネしやがって・・・!」


ジョージは怒りに顔を引きつらせ、「それ」の前に立つ。どんな手を使っても自分は生き残り、相手は殺す。彼はそうやってこの世界を生きてきた。そして今回もそうする。勝利を確信したジョージはニヤリと獰猛に笑い、「それ」に手をかけた。



「これで全員かな?」


目標としていた小屋から次々と野盗が飛び出してきたが、ウォーリーの間髪入れない射撃であっという間に全員が蜂の巣にされた。銃撃の音は止み、あたりを静寂が包む。しかしウォーリーは銃を構えたまま、油断なく周囲を警戒している。戦場で油断してはいけない。初恋と引き換えに学んだ貴重な教訓のひとつである。


ふいにウォーリーが何かに気づき、アイカメラが空に向けられた。


「パワードスーツの駆動音を確認。上から来マス。」


ウォーリーがパッと後ろに飛び退くと、さっきまで立っていた場所に巨大な金属の塊が落ちて地面を揺らした。それは身長3メートルはある巨大な人型ロボットだ。マキちゃんの冷静なアナウンスが響く。


「ウォーテック社製軍事用パワードスーツ、PS-200と思われます。見たところ武装は特にないようですが、高い馬力と運動性能にご注意ください。」


突然現れたパワードスーツに驚いていると、その鉄の塊から拡声器を通して大声が響いた。


「貴様ら、たった2人でこの『不死身の血まみれジョージ』様のアジトに乗り込むとは・・・よっぽど凄腕の賞金稼ぎのようだなァ!いい度胸だァ!」


「不死身の・・・なんだって?」


「だがいいかァ!このパワードスーツにはドラゴン町長の孫娘が乗ってるゥ!攻撃しようものなら・・・分かるなぁ!?」


ウォーリーのアイカメラがキュウウウという機械音とともにフォーカスされる。パワードスーツ内部の生体反応を探っているのだろう。何も言わないところを見ると、本当に人質が乗っているらしい。


「わかったかァ!わかったら武器を捨てろォ!」


『マキちゃん、アレってハッキングできる・・・?』


『いいえ、ご主人様。旧文明で使われていた軍事用の機械は外部からのハッキングに強いのですわ。』


『そりゃそうか・・・どうしよ。』


俺がどうするべきか迷っていると、目の前のウォーリーはなんのためらいもなくアサルトライフルを投げ捨てた。それから腰に隠したハンドガンも捨て、完全に丸腰になる。


「う、う、う、ウォーリー?どうするつもりなの?」


しかしウォーリーは俺に背中を向けたまま、横顔だけ俺に向けて言った。


「ご主人サマ、武器は戦う時に必要なものデス。」


「はぁ?」


「これから行うのは戦いではナイので、必要ありまセン。」


「・・・え、なに?なにすんの?」


身長2メートル超えのウォーリーから見ても、パワードスーツはさらに大きい。その巨大な鉄の塊に対して、しかし丸腰のウォーリーは無造作に歩みを進めていく。その異様な迫力に俺は自然と後ずさり、なんとパワードスーツのほうも少しずつ後退していく。俺ははっと気づいた。


あ、これ・・・怒ってる。


ウォーリーさん、女の子を人質に取られてめっちゃ怒ってらっしゃる。たぶん女の子を傷つけるのは、彼のおちんちん様が許さない行為なんだろうな。合掌。


「な・・・なんだァ!?なんなんだ、お前はァ!?」


「これから我が行うのハ・・・」


ウォーリーは立ち止まると、パワードスーツの中まで射抜くようにするどく指を突きつけた。


「ただの暴力デス。」

野盗編、こんなに長くするつもりは・・・。

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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