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狂人

【前回までのあらすじ】


・ハルさん、愛の力を発揮する


※ 残虐描写が苦手な方はややご注意ください。

「ヒャッハァァァァァァ!新しい女だァァァァァ!酒だァァァァァ!」


野盗のアジトに大きな声が響いた。バリケードの先にはスクラップを寄せ集めて作った小屋がいくつも並び、アジトというよりはひとつの集落のようになっている。最奥にある少しだけ大きな小屋の中で、ドラゴンの町から拉致されてきた5名の少女が身を寄せ合って震えていた。彼女たちを取り囲むようにむさ苦しい男たちが並び、奪ってきたばかりの酒瓶を片手に低俗な笑みを浮かべている。


「まぁそう緊張するなよぉぉぉぉぉ・・・優しくしてやるからよぉぉぉぉ?」


酒臭い息を撒き散らしながら女性たちに近づいたのは、この野盗のリーダー・・・「不死身の血まみれジョージ」である。ジョージはふいに真面目な顔をしてヒザをつくと、少女のひとり目線の高さをあわせて話しかけた。


「なぁ、お嬢さん・・・名前、なんてんだ?」


「・・・?」


急に雰囲気が変わったジョージについていけず、恐怖に震える少女は返事ができない。


「いや、無理もないな・・・怖いもんな。でも約束するぜ。君たちの身体には傷ひとつない状態で解放しよう。」


「・・・!?」


ジョージの目は真剣そのもの。少女の頭の中に、ひょっとして彼は悪人ではなく、なにか事情があって自分たちを拉致したのか・・・そんな考えが浮かんできた。冷静になればそんなことは絶対にあり得ないのだが、こんな状況では仕方がないかもしれない。戸惑う少女に、ジョージは小屋の片隅を指差してみせる。そこには、少女にとって見覚えのある人物が立っていた。


「イ・・・イリスさま・・・?」


町長の孫娘、イリスである。彼女は一糸まとわぬ姿で、まるで亡霊のようにそこに立っていた。少女は本当にそれはイリスの亡霊ではないかと疑った。なぜなら、薄暗い照明に照らされたイリスの裸体が「美しかった」からである。ここまで拉致されてくる段階で、少女は満身創痍でクレーン車に吊り下げられたイリスを見ている。にも関わらず、目の前のイリスの身体は傷一つなく、白磁のような美しい肌がつやつやと輝いている。それは同じ女性の自分が見ても赤面してしまうような、美しい肌だった。


「イリスさま・・・イリス・・・さま・・・?」


しかしイリスは返事をしない。その目は何も見ておらず、ただ中空を彷徨っている。その姿に気を取られて気づかなかったが、よくよく見れば様子がおかしい。口からはよだれを垂らし、虚ろな表情。魂が抜けてしまったかのようだ。呼びかける少女に、しかし代わって答えたのはジョージだった。


「なあ、お嬢さん・・・俺は『不死身の血まみれジョージ』って呼ばれてるんだが・・・なぜだか分かるかい?」


「・・・?」


「『不死身』で『血まみれ』ってな。意味わかんねぇだろ。まずひとつめの『不死身』だが・・・これはそのまんまだよ。俺は不死身なんだぜ。あの機械のおかげでな。」


ジョージが視線をやった部屋の隅には、棺桶のような機械があった。


「あの機械は俺がずっと前に見つけた『再生装置』ってヤツさ。アレに入れば、例えどんなに死にかけだろうと元に戻るんだ。手足がなかろうと、目玉を抉り出そうとな。これが俺の不死身の秘密さ。」


ジョージの話の意味が分からずただ黙って聞いていた少女は、イリスの身体に傷一つ無い理由に気がついてハッとした。ジョージは少女の様子を見ながら話を続ける。その顔は徐々に化けの皮が剥がれはじめ、明らかな狂気を宿しつつあった。


「ああ、気づいたか。そう、町長の孫娘は100回ぐらいダルマになって再生されてる。いや、200回か?切ったり刺したり、抉ったり・・・すりおろしたりもしたな。でも綺麗なモンだろ?・・・ただな、身体は治っても、精神の方は元に戻らねぇ。今じゃあ手足を細切れにしてもなんのリアクションもしない、つまらん肉人形になっちまった・・・。」


少女は震えた。知らず、足元に温かい水たまりを作ったが、そんなことには気づく余裕はない。


「さっき言っただろ?『君たちの身体には傷ひとつない状態で解放しよう』ってな。アレは本当だぜ。・・・何度でも治してやる。何度でも、な。」


「・・・あ・・・あ・・・!」


「で、俺が『血まみれ』って呼ばれるわけだが・・・。」


ジョージは大きなナイフを取り出した。柄がドス黒くまだらに染まった、明らかに人の血を何度も浴びたナイフである。もはやそこに貼り付けた正気の仮面はない。ただただ悪意のみを撒き散らす狂人の姿がそこにあった。


「女を細切れにしながら犯るのが大好きだからだよぉぉぉぉぉぉぉん!ギャハハハハハハハ!」


少女は反射的に逃げ出そうとしたが、すぐに周りを囲む男たちに笑いながら突き飛ばされ、部屋の中央に転がった。見れば他の少女たちも同じように震え、その瞳を絶望に染めている。荒くれ者たちの下卑た笑いとアルコールの匂いが小屋を満たした。死ぬことすら許されない地獄、本当の地獄が目の前に迫っている。誰かに届くはずはない、それでも言わずにいられなかった・・・少女の口から、絞り出すような声が漏れた。


「たすけて・・・誰か、助けて!」



「・・・ハッ!」


「どしたの、ウォーリー?」


ハルの狙撃で銃座を破壊された軽トラが、ならば轢き殺してやろう、とばかりに俺たちの方に爆進してきた。ウォーリーは無造作に俺の前に立ち、両手を構える。えっ嘘だろ?


「失恋パワァァァァァァ!」


烈火の気合とともに正面から軽トラを受け止めたウォーリーは、そのままの勢いで軽トラを投げ飛ばした。俺の頭上を軽トラが紙くずのように飛んでいき、ずっと後ろの方に墜落して爆発する。俺はあまりの出来事に立ち尽くすしかない。っていうか・・・


「ウォーリー、まだ失恋引きずってたの・・・?」


「・・・。」


「普通にミリィさんと話してたじゃん・・・?」


「我は表情に出ないタイプなので・・・アレでも色々とがんばっていたのデス。」


「お、おう・・・なんかごめん。」


ウォーリーは俺の方を向くと背中に背負ったアサルトライフルを構えた。光学迷彩は壊れたけど、構わず突撃するつもりらしい。


「ご主人サマ、急ぎまショウ。新たな出会・・・・いえ、助けを求める女性の声が聞こえまシタ。正義を執行せねばなりまセン。」


「出会いって言おうとしたよね?」

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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