三八三年 祝の二十日
昼、一番混雑する時間帯に。
入ってきた若い男を見て、ククルが動きを止めた。
その反応を見て、テオも来店したのが警邏隊の男だと気付く。
俺が行く、と手で制し、メニューと水を持っていく。
相手はひとりで帯剣もしていない。これなら自分でも何とかなるかと思ったが、事を構えても仕方がないと思い止まった。
素知らぬ顔で接客をし、カウンターへ戻る。
結局男は今回も普通に食事をして帰っていった。
そう、ふたりは思っていたのだが。
昼食の客が落ち着いた頃。リオルの妻のシェリーが店にやってきた。
アレックには話してきたと前置いて、シェリーは昼過ぎの出来事を語る。
店の前で遊んでいたレミーに通りかかった男が何やら話しかけていたらしい。
店中にいたリオルが気付いて声をかけると、町の様子を聞いていただけだと返して去っていったというのだが。
「レミーに聞いたら、剣を持った人がたくさん来なかったかって聞かれたって言うのよ」
どうしてシェリーが話しに来てくれたのかを理解したふたりに、シェリーは頷いて続ける。
「来てたと答えたら、困ってないかって言われたらしいわ」
「訓練のせいで困ってると…?」
「訓練のことは皆了承しているから、そんな話が出るわけないんだけれど」
ククルの言葉を否定してから、シェリーは微笑む。
「アレックさんが町の皆に確認を取るって言っていたから、また話してもらえると思うわ」
それだけ伝えに来たと言うシェリーに礼を言い、見送って。
ククルはテオと顔を見合わせる。
シェリーに尋ねた男の服装を確認したが、やはりあの警邏隊の男のもので。
「訓練のことで来てたのか…?」
「でもエト兄さん、皆に話してたのに…」
警邏隊が来ていたことをアレックに話してくる、と宿に戻るテオ。
何が起こっているのだろうかと。
ひとり残ったククルは、漠然とした不安に両手を握りしめた。




