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第六十五話 迷宮装備の力

「いやぁ〜、どっこいしょ」


 お待たせしましたと言って後ろから現れた男性は、続けてそう言うと、人の良さそうなニコニコ顔を浮かべながらティーノさんの隣に座った。


「か、川田さん!?」


 その男性、川田さんを見て、俺は驚きの声をあげる。


 お待たせしましたと言って来たので、てっきりお店の人が料理を運んできてくれたのかと思った。


「あっ、古森くん、いやぁ、災難でしたねぇ」


 突然現れた川田さんは俺のそんな声を聞いて、優しい声色でそう言葉を返す。


 その口振りから察するに、俺が昨日、色々あったことを知っているのだろうか?


 昨日の今日で、どうやって知ったのだろう。


 俺がそんなことを思っていると、今度は仁平さんが口を開いた。


「悪いな、おっちゃん。事情は伝えた通りなんだ。この手の話なら、アンタが一番だと思ってな」


「いやいや、ちょうど下から帰るところでしたから大丈夫ですよ」


 仁平さんはというと、川田さんが来るのを知っていたらしい。


 いや、今の会話からして、仁平さんが川田さんを呼んだのだろうか。


 この手の話、というのは俺の迷宮装備についてだろう。


 それにしても、迷宮って、携帯とか使えないのにどうやったんだ?


 電波なんてものがない迷宮では、情報の伝達はかなり苦労することの一つだ。


 パーティの役目に伝達役なんかがあるほどである。


 流石に昨日の今日で、しかも何処にいるのか確実に把握できるわけでもない迷宮の状況で、伝達役の人が川田さんに情報を伝えられたとは思えない。


 上級冒険者ほどになれば、何か凄い連絡手段でも持っているのだろうか。


「あら、ヒナちゃんは一緒じゃなかったのかしら」


 俺がそんな疑問を頭の中で駆け巡らせていると、今度はティーノさんがそう尋ねる。


「途中まで一緒だったんですけどねぇ。なにか用事を思い出したとかって帰っちゃいました」


「あらぁ、思春期かしら」


 ティーノさんはそういうと、俺の方を見てニヤリと笑った。


 俺はそれの意図するところが分からず、少し困惑する。


 どうやら甲賀も来ていたらしいが、しばらく会っていないし、あんな所を見られたので今更合わせる顔もない。


 というか気まずいので、なんだか微妙にホッとした。


 そんな感じで突然の川田さんの来訪の後、お待たせしましたと今度は本当にお店の人がテーブルにやって来た。


 俺は運ばれて来たミルクを一口飲んで、トーストされたパンにバターを塗る。


 迷宮の中で温かいものが食べられるとは思ってなかったので普通のパンがとてつもなく美味しく感じられた。


 そして皆んなが食事を終えると、話は本題に戻る。


「つまり、突然赤い煙のようなものが見えて、いつもとは違うバリアーが現れた……と」


 昨日、俺が感じた異変。


 赤いバリアーに体を覆う赤い煙、そして謎のハイテンションについて、あらためて川田さんやティーノさん、仁平さんの前で説明した。


 そしてそれを聞いて言葉を発したのは川田さんだ。


「はい……、正直俺もこんなこと初めてで……。それに、あの時は凄く自信に溢れていたと言うか、なんでもできる!って気分になってました。たまたまかもしれないんですが、実際にモンスターの攻撃も防げたりして……」


「いや、たまたまじゃねえな。たまたまで変異体を瀕死まで追いやることは出来ねえよ、おっちゃん、どう思う?」


 俺が昨日感じたことを言うと、仁平さんがそう声を出す。


 たまたまじゃない、と言われたことは喜ぶべきなのだろうか。


 仁平さんの話曰く、仁平さんが駆けつけた時には人工変異体は瀕死だったと言うから本当に俺がそこまでやったのか?


 自分ではあり得ないと思うが、どうもそうとしか考えられない気もする。


「そうですねぇ……、やっぱり実際見ないことには確信は持てませんが……、似てますねぇ、私が魔石を使った状態に」


 そうして、一通り話し終えたところで川田さんが、ふと結論を出すかのようにそう言った。


「やっぱそうか」


「そうねぇ」


 それに続いて、仁平さんとティーノさんがそう声を漏らす。


「マセキ……?」


 全員が納得?したかのような状況で、ひとりだけよくわかっていない俺は尋ねる。


「ええ、魔石です。魔法の石」


「魔法の……石……?」


 あまりにも普通にそう返答された俺は、オウム返しのように言葉を発した。


「本当は秘密なんですけどねぇ、古森くんは色々と巻き込まれてしまったし言っちゃいますとね」


 俺がそう困惑していると、川田さんはそう言って、そして、いつもとは違う笑みを浮かべた。


 それから続けて


「実は私、モンスターに変身できちゃうんです」


 と笑顔で話した。


「へぇ……?」


 あまりにも突拍子のない返答と、いつもとは違う不思議な笑顔に、そう声にならない声を俺は出した。

しばらく忙しくて、まったく見れていませんでした。

かなり更新遅れてしまって申し訳ないです。

これからもしばらく不定期なのですが、良ければ読んでください。


追伸

ネット小説大賞、二次選考落選してました。

残念ですが、これからも楽しく書いていきます!

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― 新着の感想 ―
[一言] とても楽しく読ませていただいてます。 なぁんか主人公さんが、すぐ隣にいるような身近な感じがしています。 素敵なお話をありがとうございます。 (((o(*゜▽゜*)o)))
[良い点] 安定して読める。 [気になる点] 更新が遅くなってる。 [一言] 良いと思う。
[一言] これからも応援してます。続きたのしみにしてます。
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