ギルド方針
遅くなりましたが、先週分の更新です
他の作品も更新したいんですが、さくっと書けるヤツ選んじゃいますよね……
今週分はきっと別作品になる(はず)
俺は真っ先にギルドホームに戻ってきたがメンバーも続々と戻ってきてくれて、リビングに全員が集合していた。
ギルド創設時からのメンバーである俺、カタラ、クノ、ウィネ。第二陣のプレイヤー参入時に加入したリアナ、レヴィ、ティアーノ、セルフィ。それから続々と入ってきたリリス、ルイン、アカリ。
以上が今の《ラグナスフィア》のメンバーだ。計十一人となっている。加えてクーアとテーアがいるくらいか。
「……じゃあ、ギルドイベントに向けて、今後どうしてくか話し合う」
副ギルドマスターであるカタラがクーアを胸に抱きながらそう切り出した。
「それはいいけど、ギルドとしてどこを目指してくのかとかはギルドマスターが決めなきゃいけないでしょ?」
ウィネが軽く手を挙げて俺をちらりと見てくる。……ギルドマスターだから、ギルドとしての方針を決定しておかなければならないということか。
彼女の言葉に十二人の視線が俺を向いた。
「……そうだな。方針だが、ギルドイベントでどの辺りを目指すというようなことでいいのか?」
「……ん。ここにいる皆は、リョウの決定に従う」
クノがテーアを抱えながら言い、他のメンバーもこくんと頷いてくれた。……あまりこういう立場は慣れないのだが、仲間達がせっかく俺に委ねてくれるのだ。これくらいのことは、少し頑張ってみてもいいだろう。
俺は視線が集中する中、テーブルを見つめて思案しながら話し始める。
「……まずはギルドイベントでどの辺りを目指すのかだが、俺はやるなら一番上のグループを目指したい」
実現可能かはわからないが、ユイやジャンと別のグループになりたいとは思えなかった。元々少数でやる予定だったので、二人のギルドのような大手に真っ向からやって勝てるとは思っていない。今回は特に。
「この人数でやるなら相当予選を頑張る必要があるわね。初めてのイベントだから他のギルドがどれくらい走るかもわからないわ」
ティアーノが淡々と懸念を述べる。
「……確かにそうだが、今から言っても仕方がない」
「……ティアーノ。皆リョウの決定に従うって言った。リョウがしたいなら、そうできるように頑張るだけ」
俺が言うと、クノがティアーノを見つめて告げた。
「わかっているわ。でもきちんと懸念事項を言っておくべきでしょう?」
本人もわかっているようで、肩を竦めていた。
「じゃあギルドイベントの予選は、トップクラスのとこに割り込めるように皆で頑張るってことですね?」
レヴィが結論をまとめる。俺の我が儘ではあるがその通りだ。彼女に向けて頷いてから、
「……一番上のグループに入りたいとは言ったが、今回は初めてのギルドイベントということもあって同盟を組む気はない。新規プレイヤーは入れても2、3人と考えている。入れてすぐ戦力になるわけでもないから、現状この人数でギルドイベントに臨むと考えて欲しい」
自分達だけでどこまでいけるのか、それを推し測るにはいい機会だった。
「かなり厳しい条件ですけど、下剋上って燃えますよね」
リアナが気合い充分に握り拳を作る。
「……ギルドとしての方針はそれくらいだ。そのための施策だが、ユイやジャンのギルドとの提携を一時的に中断し、自分達の強化と準備に時間を費やすこととする。アイテム作成、装備開発、スキル強化とそれらのための素材収集。あとは一対多の状況が予想されるからな、そういう状況下にいいアイテム、スキル、装備、戦法を考える。他には、他のメンバーに依頼したい装備やアイテムがあれば事前に言っておく、ぐらいか」
俺はとりあえず、自分がぱっと思いつくだけの施策を並べていく。実行できるかはわからないが、いいだろう。なにせ、言うだけならタダだ。
「アイテム供給の停止はまぁ、妥当ですよね。この人数でユイちゃんのギルドに当たったら、って思うとアイテムなんていくらあっても足りませんし」
セルフィが頷きながら同意を示してくれる。
「自分達の強化は必須よね」
「私なら銃火器で殲滅して差し上げますわ」
「火縄銃が造れねえからな、メンバー内で依頼していいってんなら楽だ」
リリス、ルイン、アカリも賛同の声を上げる。
「……素材収集なら日替わりで班作った方がいい」
「そうね。創りたいモノがあるならその素材も班に依頼して、一日かけて回ってもらった方がいいわ」
「……いっぱい使う素材のリストアップしないと」
「新しいフィールドにも行って素材確かめないとですね」
俺の考えを否定せず、皆は次々と具体的な方法を話し合っていく。……本当に助かる。もし俺がソロでやっていればこうはいかなかっただろう。ギルドイベントにも参加せず通常通りフィールドを回っていたと思う。または、一人でギルドを創設して下の方でギルドと戦っていたかもしれない。
「……助かる」
俺は簡潔に感謝の気持ちを告げる。メンバーは話を止めてこちらを向き、
「「「いつも通りだから」」」
と各々の口調で言ってくれた。そしてまた話し合っていく。……いつも助けられてばかりだな。なにか形のある礼をしたいものだが、俺にできることなどたかが知れている。
「……なにか装備などで造って欲しいモノがあれば言ってくれ。素材を調べる必要もある」
他の人に素材収集を頼むであれば、俺も持っていない素材を使う場合同じようにしなければならない。
俺の発言を受けて、一人一人が欲しいモノを言ってくる。《銃士》達は基本的に銃だった。『銃部品作成』のスキルは今のところ自力で習得する方法がわかっていないからな。当然の依頼と言える。
色々決まってきて、ふと思い出したことがあった。
「……そういえば、ユイが組織がどうとか言っていたが、そのようなモノが存在するのか?」
普通なら戯言と受け取ってもいい発言だったが、なにしろ言ったのは我が妹である。
「……ネットでは噂されてる」
「そうね。実際にあるかどうかは兎も角、そういう噂があるのは事実よ。ほら、UCOって一撃死のシステムとかがあって現実に近い部分とかあるでしょ? そういう機能を使って人の、犯罪欲求を満たして犯罪を減らそうとしてるとこがあるとかなんとか」
「あとはあれですね。色々悪用してる人達がいるとか根も葉もない噂があったりします」
皆が知っている噂とやらを話してくれるが、どれも信憑性が薄いモノばかりだった。今度リアルでユイに尋ねてみるとしよう。
なにやら知っていそうなユイに聞くこととし、その場ではこれで終わりとなった。
こうして俺達《ラグナスフィア》は、ギルドイベントに向けて動き出していった。




