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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第三章

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執事と忍者は相容れない

遅れました、申し訳ありません

というより書き上がっていたモノを更新し忘れていました


とりあえず三話連続で更新します

※本日一話目

 第三試合はレヴィVSファント、だったのだが。


「勝ちました、ね?」


 他の二試合がいい勝負だったからなのか、勝者のレヴィが自信なさそうに戻ってきていた。


 ファントは元々偶然が重なって勝ち上がったプレイヤーなので、一対一では偶然が起こり得るはずもなくあっさりと敗退している。

 レヴィが少し申し訳なさそうにしていたが、当たり運もトーナメントには必要だと言っておいたので気にしすぎないといいのだが。


 気を取り直して第四試合だ。うちのクノとユイのギルド《魔導学院》所属の女性プレイヤー、セバスチャンの試合となる。


「……じゃあ、さっさと勝ってくる」


 クノがじっと俺の方を見てきてそう言った。……クノにしては随分と挑発的な発言だな。


「ほう? 私では相手にならないと?」


 ギルドマスターのユイがいるからか近くで待機していたセバスチャンがクノにじろりとした視線を向けた。


 セバスチャンはどちらかというと女性に人気のありそうな女性プレイヤーだ。

 燕尾服に身を包み、下も黒いズボンである。髪は艶やかな黒色だが、瞳は蒼い。クノが獣人族なのに比べて彼女はダークエルフのようだ。肌は浅黒く、耳が尖っている。切れ長の瞳で手には白手袋をしており、いかにもというような恰好をしている。クノと同じくロールプレイということなのだろう。彼女が仕えているのはユイなのだろうか?

 男装の麗人という風情ではあるが、女性らしい体型を隠そうとはしていなかった。


「……西洋かぶれには負けない」

「和風気取りがなにを言っているのやら」


 なぜかばちばちと二人の間で火花が散っていた。一応《忍者ニンジャ》も《執事バトラー》も主に仕えるという点では同じ種類だからだろうか。


「……ふん」

「……はっ」


 そして同時にそっぽを向く。……実は仲がいいのだろうか。ユイのギルドメンバーと交流を持ったことはないので、個人的な知り合いかもしれない。そもそもマスターを務めている俺が人付き合いをしていくタイプではない。


 とりあえず、俺はギルド仲間であるクノを応援するとしよう。


 二人は距離を開けはいるが横に並んで入場していった。クノの手札はある程度知っているが、セバスチャンの手札は知らない。俺としてはまだ見ぬスキルを持っていないか気になるところだ。


 二人の姿が見えなくなってからはモニターに目を向けて試合の開始を待つ。


『それでは、試合を始めます!』


 アナウンスがあり、試合が始まった。


 二人は同時に得物を袖から四本出して右手に持つ。クノは《忍者ニンジャ》としてずっと愛用しているクナイだが、セバスチャンの持っている武器は――あれは食事用のナイフか?


「……真似しないで」

「そちらがパクったのだろう」


 二人はお互い様だと思うが、むっとしたような表情で言い合ってそれらを『投擲』する。息が合っているのか合っていないのか、二人の放った武器は空中で見事に衝突して地面に落ちた。そして二人同時に舌打ちする。

 その後も何度かクナイとナイフ&フォークを投げ合っていたが、一向に当たる気配がなかった。


 遠距離では埒が明かないと見たのか、忍者刀とレイピアを構えて接近戦に移行する。軽快な近接職(?)の激しい剣戟に会場も盛り上がっていった。


 今のところ目ぼしいスキルは持っていないようだが、クノといい勝負をするとはなかなか強い。


「セバスちゃんはクノちゃんとネットで知り合って凄く共感したらしいんだけど、方向性の違いで色んなゲームで争ってる仲なんだって」


 字面は同じだが微妙にアクセントの異なる呼び方をして、ユイが二人の関係について補足してくれる。


「……道理で仲がいいわけだ」

「ねー」


 俺が二人のいないところで絶対に否定されそうなことを言うと、ユイも微笑ましそうにしていた。


「【四連刃】」


 そのようなことを言っていると、事態が動いた。セバスチャンが四本のナイフを四回連続で『投擲』すると、クノの身体にその内の三本が突き刺さる。

 しかし次の瞬間にはどろんと煙を出して服を着た丸太へと変わった。『忍術』の一つである【変わり身の術】だろう。

 身代わりを使った後に一定時間本人の姿を見えなくする効果も付随するため、いきなりセバスチャンの背後にクノが現れたように見えた。完全に無防備な背中に忍者刀を突き立てようとするが、それがわかっていたかのように身を翻して受け止めた。


「相変わらず変わり映えのしない戦い方だな。だから隙ができる」


 セバスチャンはそう言うと、忍者刀を持つクノの右手首を内側から掴み、腕を引いて身体を引き寄せると腹部に膝蹴りを叩き込んだ。クノは表情を歪めると堪らず地面に膝を突く。


「これで私の勝ち越しだな。【スパイシング・シアー】!」


 セバスチャンは渾身の突きをクノ目がけて放った。確か、突きを放った後に同等の威力を持った攻撃を自動で追加する技だった気がする。釘を打ちつける時のように何度も、というヤツだな。


 これで勝負が決まったかと思ったその時、


「……『透歩スケーティング・ウォーク』」


 立ち上がったクノがするりとセバスチャンの身体をすり抜けた。


「っ!?」


 セバスチャンは大技を放った反動で動けない。なにせ【スパイシング・シアー】は効果中次の行動に移れないのだ。スキルレベルを上げれば上げるほど威力は上がって必殺の一撃を生み出すが、その分発動している時間がなくなり隙が大きくなっていくピーキーな技だと誰かに聞いた覚えがある。


「『透歩スケーティング・ウォーク』は普通は通り抜けられない障害物、壁とか木とかをすり抜けるスキルだな。スキルレベルを上げると人もすり抜ける対象に含まれるってのは聞いたことがあるんだが」

「……スキルを屈んで避けられるタイミングで発動させたのは流石」


 ジャンとカタラがクノの取った行動について解説をくれた。……ふむ。『透歩スケーティング・ウォーク』か。面白そうなスキルだ。今度クノに取得条件について教えてもらおう。


「いつの間にそんなスキルを!」

「……いつまでも同じ私じゃない。六千七百四十一戦、三千四十勝三千四十敗六百六十分け」


 反動で未だ動けないセバスチャンを振り返り、クノが忍者刀を構えた。


「……これで、私の勝ち越し。【影縫かげぬいの太刀】」


 背後から首を切り取るように刃を振るった。その後、黒い影の刃がセバスチャンの首を斬り落とす。


『試合終了!』


 彼女のHPが全損したところで、終了の合図がされた。


 クノも無事に勝てたようだ。これでカタラ、ティアーノ、レヴィに続いて四人目となる。……すでに半分試合が終わって全員が《ラグナスフィア》の面々となっていた。ギルドを支えている皆だからな。強いのは当然と言える、と思う。


 次の試合は《魔導学院》のギルドメンバーとプレイヤー装備を奪っていた真の《盗賊シーフ》バーグだ。

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