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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第三章

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73/88

スキル連弾

ストックあったのに更新するの忘れてました


気づいたら日付変わってましたが二月十一日分ということで(笑)


明日は休みなのでいくつか更新できるといいなぁ、と思います

あと順次古い方から感想やらコメントやらに返信していきますね

 決勝トーナメント第一試合。《インフィニティ》ギルドマスタージャンVS《ラグナスフィア》所属カタラ。

 互いに元βテスター同士であり、しかしβテスターでトッププレイヤーだったカタラは転職していてジャンはβテスト時と基本は同じ。手の内を晒しているのはジャンだけだ。

 と言っても面識はあるためある程度カタラの手の内もジャンは知っているハズだった。


 条件は同程度、と言ったところか。


 加えて言うならカタラが生産職なのに対してジャンは純粋な戦闘職と言う点。これは何でもありのルール下においては何とも言えないが、ジャンが有利と思われる。カタラが戦闘技術でジャンに劣ると言う訳ではなく、戦闘において切れる手札が多いのはジャンと言うことだ。

 だがほとんど回復アイテムを重視しているだろうジャンのアイテムバッグと違いカタラのアイテムバッグには様々なアイテムが眠っている。その辺りを上手く使えば勝算は上がる。


 それに、カタラには俺が提案したオリジナルスキルが多く、ジャンの知らないスキルもある。


 結局、言ってしまえば勝負は終わるまで分からないと言うことだ。


『それでは、始めて下さい!』


 適当なのかバラバラな開始の合図から、十分のカウンドダウンが上空で刻まれる。


「……いくぜ、カタラ。手加減はなしだからな!」


 ジャンが楽しげに笑って宣言する。


「……負けないから」


 カタラはいつになく真剣な表情で言って、鈍い鋼色の金属鎧に身を包み大きな盾と騎士剣を構えるジャンに対して、二本の短い刀を構えた。ジャンはドラゴニアと言う種族なので戦闘時には鱗が生えてくる。短髪と瞳の赤と同じ色の鱗が全身を覆い、瞳孔が縦に開いて爬虫類のようになっている。

 カタラの装備は胸当て以外は金属ではない。だが『二刀流』を取得しているため両手に短い刀を持っている。このゲームでの『二刀流』はそこまで難しいスキルではない。俺の『双銃術』も両手に武器を持つスキルであり、中には『双槍術』と言う二本の槍を手に戦う者もいると言う。剣や刀を含む全ての武器において、最初の分岐点では両手に一つずつ、と言う装備分岐が訪れるようになっているようだった。


「……私の『灼熱火炎(フレア・ボルケーノ)』と『劫火無双』に勝てると思わないで」


「……それはどうだろうな、カタラ」


「……名前で呼ばないで」


「……なっ!」


 カタラが俺がいつか渡した風と雷の小太刀を構えて言うと、ニヤリとジャンが笑ったのだがカタラは強めに拒絶して、ジャンに精神的ダメージを与えた。


「……倒すから、覚悟して」


 カタラはその隙を狙って駆け出す。もちろん完全に隙だらけと言う訳ではないのは流石だが、それでもカタラが好機と見る程度には隙があった。

 カタラは駆けながら俺提案のオリジナルスキル『刺突砲(トラスト・ブレード)』で砲撃となる突きを二刀で放ち、ジャンに牽制する。ジャンは基本回避を行わないため、盾で計四つの『刺突砲(トラスト・ブレード)』を受ける。盾で受けたものの衝撃はダメージとして通るので僅かながらにHPを削った。一発目は上手く受け流し切れなかったがその後の三発は盾で鮮やかに受け流してみせたのは、流石は《騎士(ナイト)》代表と言ったところか。

 カタラが肉薄すると、今度はジャンが動いた。【スタンディング・ディフェンスレート】と唱えていたので防御力を上昇させるアーツだろう。確か効果は立っている状態での体勢の補正と防御力の上昇。その代わり転んだりすると隙を生むジャンが得意とする「ハイリスクハイリターンアーツ」の一つだ。いつかの【ディフェンシブ・エイト】と同じく失敗すると危険だが成功すれば恩恵の大きいアーツである。


「……倒してあげるから」


「……悪いが、それは無理だな。【ラントス・ウォーク】!」


 そのアーツは俺が知っているくらいだから当然カタラも知っていて告げるが、ジャンはしかしニヤリと笑って更にアーツを発動させる。

 俺と同じく控え室のモニターで試合を観戦しているライアの解説によると、【ラントス・ウォーク】は動きを安定させるアーツのようで、謂わば体勢を崩しにくくするアーツだった。つまりこの二つのアーツは、かなり良いコンボである。


「……関係ない」


 だがカタラは言い放つと灼熱の火炎を周囲に滾らせた。『灼熱火炎(フレア・ボルケーノ)』の発動だ。


「……『灼熱火炎(フレア・ボルケーノ)』か。そんなもんで俺の防御が破れるとか思ってねえだろうな?」


 属性を自在に操るかなり上位のスキルなのだが、ジャンは「そんなもん」呼ばわりをした。……自信満々だな。俺と戦うとなれば決勝戦にしかならず、それはおそらくないだろう、残念だ。俺自身がその鼻っ柱を叩き折ってやりたかったのだが。


「……流石に“守護神”様は言うことが違う。でも、聞き返そうか? 『その程度の防御で私の攻撃が防げると思ってるの?』」


 カタラは少し主要スキルをそんなモノ呼ばわりされて憤慨したらしく、トゲのある口調で言うと全身から焼けつくような劫火を放って鎧武者を着込んだ武将を顕現させる。


「……【炎武将・武田信玄】」


 静かに呟く。『劫火無双』のアーツの一つで、戦国武将である武田信玄を模した筋肉隆々で厳つい中年男性を劫火で作り出し背後に三メートル程の上半身だけを顕現させる。


「……新たに追加された属性攻撃オリジナルスキル、無双シリーズか。そういや、これもリョウが作ったらしいな」


 ジャンが少し呆れ気味に苦笑した。……と言っても日本文化が好きなカタラに合わせて、俺が使えないように作ったモノだから俺自身が作ったとは言えないかもしれないが。日本=侍=戦国武将と言う安易な式によって導き出されたスキルだからな。

 今度無双シリーズならぬ勇者シリーズでも作ってみようか。かなり上位のスキルにはなると思うが、西洋の勇者や英雄を模した属性を顕現させるスキルだ。運営ならきっと申請を通してくれるハズだ。


「……そう。私がリョウに貰ったオリジナルスキル、全部使ってあげるから楽しみにしてて」


 カタラは頷きつつ、右手の刀を上段からジャンに向かって振り下ろす。少し距離があるものの、カタラ自身が攻撃する訳ではない。【炎武将・武田信玄】がカタラに連動して動くので、そちらが本命だ。因みに武将の武器は使用者に依存し連動するため、二位一体と言ったところか。

 武田信玄が放った一撃をジャンは盾で受ける。流石に大きな攻撃は受け流しの難易度が上がるのか、完全には受け流し切れずに、しかし防御力の高さで少ないダメージで済んだ。……ジャンは魔法も物理も防御力が高いのか。攻撃を受ける盾役ではこれ程頼もしいことはないだろう。だが敵になるとこれ程厄介な相手もいないだろう。


「……【五連裂刀】」


 『二刀流』は言ってしまえば刀剣類装備限定の二本の刀剣を持つための補助スキルであり、戦闘スキルではない。厳密に言えば『二刀流』における戦闘スキルは『剣術』や『刀術』などから派生する『双~術』と、俺の『双銃術』と変わらない。ただ便利なことに、補助スキルが存在するだけ。カタラが持つのは『双刀術』だ。その『双刀術』のアーツの内一つである【五連裂刀】は、二刀による五回連続攻撃である。俺の戦闘の主流は『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』や『ツインバースト』含む高破壊力を持つスキルだが、普通のプレイヤーはオリジナルスキルを織り交ぜつつもやはり既存のスキルで戦う。

 右手の上段から振り下ろし、左手の斜め上から袈裟斬り、返す刀で左手の横薙ぎ、右手の逆袈裟斬り、両手の上段から横並びで振り下ろしと言う決まった動作を行うカタラ。ジャンもそれを知っていて盾を持つ手に力を込めて防ごうとするが、甘いとしか言い様がなかった。


「……うおっ」


 アーツを発動させたジャンが僅かに押される。それはアーツではなく、武器の効果でもなく、スキルのおかげだった。

 俺がカタラに提案したオリジナルスキル『同調刃(シンクロ・ブレード)』は振るった刃と横並びに視えない刃が出現するスキル。そのため五回六つの攻撃がスキルレベルによって刃の数が上下するため、今カタラは六十代なので七つの刃が横並びになっており、計四十二回となる。

 俺がカタラに提案したオリジナルスキル『連続刃サクセッション・ブレード』は振るった刃の後に続いて視えない刃で斬りつけるスキル。そのため四十二回の攻撃が――更に同じくスキルレベルが六十代なので――七回連続となる。つまり四十二と七をかけて、二百九十四回の攻撃が行われる訳だ。そして、忘れてはならないのが刃そのモノの攻撃。それが六つあるので、丁度三百回の攻撃が行われた計算となる。正直に言ってこの『同調刃(シンクロ・ブレード)』と『連続刃サクセッション・ブレード』のコンボは凶悪だ。反撃や相殺で凌ぐことも多い俺だが、そんなことが出来る訳がない。精々ジャンのように防ぐか回避するか受けるか。この二つのスキルは回避されると意味のなさない代わりに、ジャンのように攻撃を受けるタイプのプレイヤーにはかなり有利なスキルである。


「……攻撃回数、有り得ねえだろ!」


 ジャンがそう吐き捨てるのも無理はない。三百回にも亘る攻撃を、五回連続攻撃からスキルによって繰り出されれば、完全に受け流すことなど不可能に近い。……とは言ってもやはり、盾をやや身体から離して受け切るジャンはそれなりに上手い。追加攻撃のスキルは基本的にダメージ量が劣るので、攻撃回数が多くなれば関係ないが、スキルレベルが低いままでは使いづらいスキルと言う認識は拭えない。晩成型スキルである。


「……ウチのギルドマスターが考えたから、強いのは当たり前」


 カタラは口元に仄かな笑みを浮かべて言ってくれた。……そう言ってくれるのは嬉しいが、カタラ以外には好評ではないのだが。今度放った弾丸に横並びで視えない弾丸が飛ぶ『同調弾丸(シンクロ・ブレット)』でも作ってみるか。ルインやレヴィのような多連銃で使えば無敵だと思う。ガトリングやマシンガンで使ったら凶悪すぎるだろう。申請が通ると良いのだが。


「……しかもそれに加えて信玄の攻撃も加わるとか、マジでキツっ!」


 ジャンは呻きながら、盾だけで受け切っていた。体勢を保つために半歩程後退したが、それだけで三百回以上の攻撃を受け切ったのだから流石である。……そう言えば武田信玄もいたな。つまり五回攻撃スキルで三百六個の攻撃が行われた訳か。強烈だな。

 だがジャンのHPは大きく減っていた。……まだ油断は禁物か。ジャンは未だに、攻撃へ移っていない。


「……他のスキルも見せてあげる」


 カタラは告げて、『飛来刃(フライ・ブレード)』を出現させる。UCOにもいるらしいが、武器を模した意思を持つモンスターに近く、空中には刃が浮遊していた。

 刃をクルクルと回転させながらジャンに向かわせながら、二刀の刃を擦り合わせて『冥鳴波』を放つ。キィーンと言う甲高い音が鳴り響き、ジャンの身体がグラリと揺れる。音によって三半規管を揺らされたのだ。

 ギャリン! と刃がジャンの背中を捉え少しのダメージを与える。そして再び『冥鳴波』を放ちながら突っ込むカタラ。今度の『冥鳴波』は音の衝撃による僅かなダメージを与える効果だった。アーツではないので口に出さなくて良いため、受けてからでないと効果が分からないと言う厄介なスキルだ。


「……クソッ!」


 ジャンは音の衝撃に顔を歪めながら呻き、『飛来刃(フライ・ブレード)』を無視してカタラを迎え討つ。それは確かに良い選択だったと言える。もし『飛来刃(フライ・ブレード)』の迎撃を選択していたならば、カタラの放った『刺突砲(トラスト・ブレード)』に穿たれることになっただろうからだ。

 しかもただの『刺突砲(トラスト・ブレード)』ではなく、『同調刃(シンクロ・ブレード)』と『連続刃サクセッション・ブレード』を使用した計五十発の砲撃が、である。


「……うっ、くっ!」


 ジャンは押されて半歩後退する。


「……まだいっぱいあるから、頑張ってね」


 カタラはジャンにそう告げると、構えた盾に『柄衝打』と言う柄で打撃して振動を起こし相手を怯ませるスキルを使い、ジャンを怯ませる。


「……おいおいおい……っ!」


 怯んだジャンの前で、カタラが二刀を振り上げる。もちろん炎の武田信玄もだが、カタラはそれだけでは飽き足らず、『灼熱火炎(フレア・ボルケーノ)』で武田信玄と自分を強化し、思い切り二刀を振り下ろした。

 ジャンはそれをまともに受け、HPが大幅に削られる。


 そのままジャンはカタラのMPが切れるのを待つ作戦だったのか、猛攻を繰り出すカタラに押されるばかりで大した反撃も出来ずに倒された。もちろん一度だけ「おぉ」と感心するような場面があってカタラのHPが半分以下まで削られたが、結局はそのまま押し切られていた。


「……俺にもスキルを考えてくれよ~」


 とは試合後に泣きついてきたジャンの言葉である。もちろん拒否してやったが。


 大会二日目決勝トーメント第一試合、勝者カタラ。

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