レンヴォルグ
遅くなりました、すみません
寝落ちしてました
途中生産パートを盛り込みたいので、更新が遅くなるようでしたら連絡いたします
「「「……」」」
今回も優秀な成績を修めた《ラグナスフィア》だったが、イベント直後のギルドホームには気まずい空気が流れていた。
それは八割程俺のせいなのだが、残る二割は運営のせいである。
「お姉ちゃん達、そろそろお別れだね」
子供の俺は少し寂しそうな笑顔を浮かべて言った。……それはそうだろう。というか何故まだいるのかが不思議だ。
「……りょう」
クーアが寂しそうに子供の俺に抱き着く。
「……にーたん」
テーアも寂しそうだ。
「大丈夫だよ。僕はずっと二人のことを見守っててあげるから」
寂しそうな二人の頭を優しく撫でる。
「お姉ちゃん達も、じゃあね。僕、楽しかったよ」
簡単な言葉だったがメンバー達にとって子供の俺はショタコンの対象なので心に響いたようだ。涙まで流している。すっかりショタコン開発されていた。
「最後になったけど」
子供の俺の身体が透けて光の粒子となり散っていく。
「で、どうだった? 感覚リンクで味わったお姉ちゃん達の身体は♪」
子供の俺は俺の方を向き、無邪気な笑顔で特大の爆弾を投下して消えていく。……やはり、腹黒いな。
(((……えっ? 何今の。どういう意味なの?)))
案の定、メンバー達からの視線がキツいモノに変わる。……マズいな。まさかこの状況を更に悪化させるとは。
「……りょうりょう、りょういなくなった」
クーアが錯乱しているしているのか、そんなことを言って俺の脚に抱き着いてきた。
「……とーたん」
テーアももう片方の脚に抱き着いてくるようだが、きちんと俺と「俺」の区別がついているようだ。
「……ふえ? りょういる」
クーアはソファーに座り二人の頭を撫でる俺を見つけ、きょとんとしていた。
「……ああ」
俺はクーアの頭を撫でながら懐かしい思いに駆られていた。実際に触るのと子供の俺の感覚を味わうのでは少し差異がある。
「……りょう、おっきくなった」
クーアはぱちぱちと目を瞬いて言い、よじよじと俺の身体を登ってくる。テーアも同じようにして登る。
「……う。やっぱりりょうはここがいーの」
クーアは俺の胸元まで上がってくるときゅっと服を掴んでしがみついてくる。……この感覚は本当に久し振りだ。テーアもきゅっと抱き着いてくる。なので俺はたっぷり甘えさせた。俺も久し振りに癒されて一石二鳥だ。
「……どういうことか、説明してもらいましょうか?」
一番子供の俺に甘えられ甘えさせてティアーノが俺の頭を鷲掴みしてギリギリと締め上げてくる。
「……分かった。説明するから待ってくれ」
俺は痛みに耐えながら言って手を放してもらい、一部隠蔽しようとは思ったが洗い浚い吐いてしまった。……「……裸、見たの?」と聞かれて「……見た」と答えれば「……どこまで?」と聞かれ、「……全てだ」と答える最悪の詰問を味わうことになった。
だが一応は納得してもらったのでまだ機嫌直しにアイテムをプレゼントするしかないだろう。……何故かイベント毎にメンバーを不機嫌にさせている気がする。主な原因は運営にあると思いたい。
「じゃあとりあえず、報酬は全て開示して下さいね」
と満面の笑みを浮かべて言う不機嫌レヴィに、俺は「……はい」と頷くしかなかった。
俺が受けた賞や順位はペアイベントのウィネ以外と行った時全ての敵を倒しているのでスコアでは十一個全てランクイン。タイムではユイ、ジャン、レヴィ、カタラ、クノ、ティアーノ、リアナ、アカリの八個がランクインしていた。総合ではユイ、ティアーノ、リアナ、アカリの四個。つまり俺はペアイベントのランキングで二十三個の報酬を貰っているということだ。もちろん重なったところもあるため同じアイテムの場合もあるが。
更にカップル、小悪魔、ギャップ、最強の特別賞四個にも選ばれている。
そしてギルド対抗ビーチバレー大会の優勝報酬。全体での特別賞ではプリティー、ファミリー、ムッツリ、発明、クリエイトの五個。
ペアイベントの最優秀ペアと最優秀プレイヤー、ビーチバレー大会での最優秀プレイヤー、総合最優秀ギルドと最優秀プレイヤーの「MV~」全てを網羅しつつ最多獲得となってしまった。五個だ。
合計、三十七個の賞に輝いている。
「……りょう、いっぱい」
クーアがプリティー賞の報酬であるモコモコ布団に包まって言った。テーアも同じようにしていて可愛い。
俺はアイテム開示を義務づけられているのでギルド倉庫から報酬アイテムを持ってきてドサリとテーブルの上に置いている。
「……全プレイヤーで一番多い」
クノはムッとしたような口調で言う。……俺に言われてもな。多いと言えば意外とジャンが報酬を多く貰っている。《インフィニティ》のメンバーは多くてあまり知らないがジャンがギルドマスターとして頑張っていると言うことだろう。俺とペアを組んだおかげとも言えるがな。
「……良いではないか。無事全員報酬も貰えたことだからな」
俺は言って誤魔化し報酬アイテムを物色していく。
「……そう言えば、背後霊になっている間は暇だったから運営に頼まれたオリジナルスキル開発とアップデート用のアイデアを考えていたのだが」
「完全に運営側の人ですね」
俺が本題に入る前準備として言うと、セルフィに呆れられてしまった。セルフィの怒りが他のメンバーより小さかったのは、人魚なので下半身が見られていないということにあるのだろう。
「……それでカタラが俺のあげたオリジナルスキルが気に入らないと言っていたのを思い出した」
「……気に入らないとは言ってない」
「……では気に食わないだったか? それは兎も角思いついた四つのオリジナルスキルを渡そうと思う」
「……また四つも。リョウはやっぱりリョウ」
俺はカタラに自然な流れでオリジナルスキルを渡そうと試みる。
「……『柄衝打』と『冥鳴波』と『飛来刃』と『刀盾壁』だ。内容は説明を読んでくれ」
俺は言ってウインドウを開きスキル一覧を表示してその中から四つのスキルを選択し、譲渡をタッチする。スキル譲渡と言うモノで、他プレイヤーにいらないスキルを渡すことが出来る。……だが俺はスキル譲渡の設定を「自分にも残す」にしてあるので残る。俺は一見必要なさそうなスキルでも大切にするからな。
「……思いついたのでこれもやろう、リアナ。『~~格闘』スキルシリーズの最強と思われるスキルだ。『幻獣格闘』と言う」
『生物格闘』の上位スキルと言っても良いスキルで、伝説上の怪物を模した攻撃が出来る。
「あ、ありがとうございますっ!」
カタラもスキル内容を見て少し顔を綻ばせていたが、リアナは笑顔を弾けさせて喜んでくれた。
「……礼を言われることではない」
俺はそう言いつつアイテムの山を漁る。
「……そう言えば、『レンヴォルグ』があったぞ。これだな」
「「「……っ!」」」
俺が四つの拳銃を取り出すと、メンバー全員が驚いていた。……そこまで驚く程のことでもないだろう。今回から実装された上位武器『レンヴォルグ』。それは今の熟練した《鍛冶師》系職業でも作成出来ないモノで、俺が手に入れられたのはMVP三つのおかげだ。総合MVPが二つとなっており、おそらく貰うプレイヤーに合わせて武器を変更するのだろう。
四つ共同じような形をしており、側面と上にヒレのようなモノがついている。色は白、黒、紫、緑だ。四つに共通してシャーク・レンヴォルグと言う名前がついているのでおそらく鮫の武器なのだろう。シャーク・レンヴォルグ〈~~〉という名前なので間違いない。
白く少し他の銃よりも大きいシャーク・レンヴォルグ〈メガロドン〉。黒く銃口の下に巻かれた刃のようなモノがあるシャーク・レンヴォルグ〈ヘリコプオン〉。紫のシャーク・レンヴォルグ〈ホオジロザメ〉。緑のシャーク・レンヴォルグ〈イタチザメ〉。
……白と黒の鮫は確か古代に存在したと言われる絶滅種だ。残る鮫は普通の鮫だが凶暴とされる二種だ。
「「「……っ」」」
すると四つの銃がいきなり輝き出した。それに俺達は驚き、目を瞑る。
「「「……」」」
光が収まって目を開けると、そこには四つの銃の上に浮かぶ半透明な美少女が四人いた。……何だ?




