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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第二章

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リリスと~夜中の学校で~

 ペアになった俺とリリスが来たのは、夜中の学校と言うステージだった。また廃病院のように屋上から脱出するタイプだ。

 しかし廃病院の時と違い、学校の七不思議を解き明かしながら進めと言うミッションが課せられている。

 ……七不思議は七つ全てを知ってしまうと大きな不幸が訪れると言う説があり、おそらくそこがボス戦に繋がると見て良い。


 クーアがティアーノにくっついたので、リリスと二人きりである。

 リリスは《ラグナスフィア》唯一の社会人だが、寧ろ一番ログインしている時間が長い廃人でもある。

 そのせいで結婚出来ないと嘆いていたのは記憶に新しい。


「学校なんて懐かしいわね。小学校かしら?」


 リリスが歩きながら呟いていた。……確かに小学校のようだ。

 屋上から見た校庭には遊具があった。かなり大きい小学校のようだが、七不思議と言うのは俺の小学校になかったからな。リリスを頼ってみるか。


「……ああ。リリスは小学校の七不思議に心当たりはあるか?」


 俺は頷きつつ尋ねる。


「もう十年くらい前のことだから覚えてないわ。でも有名な学校の怪談だったら、トイレの花子さん、トイレの太郎君、下りる時に数えていると一段増える階段、無人の音楽室で鳴るピアノ、走る人体模型、動く石像または歩く二宮金次郎像、光るベートーヴェンの目、鏡にまつわるモノ、首のない人がバスケをやっている、鳴るハズのないチャイムを聞くと死の世界に引きずり込まれる、パソコンの画面に閉じ込められる、開かずの扉、公衆電話、トイレの引きずり込む幽霊、動く骨格標本、誰もいない音楽室のピアノを弾くと喰われる、四時四十四分、赤マント青マント、保健室、プール、図書館、誰も座らない机、人の埋められた壁、てけてけ、ぐらいかしら」


 ……かなり知っているな。色々ありすぎてすでに七つを超えてしまっている。もう不幸が起こってもおかしくないぞ。


「……場所としてはトイレ、階段――十二段の階段だったか、音楽室、理科室、外の石像、体育館、パソコン室、公衆電話、保健室、プール、図書館、教室、壁、廊下、兎に角学校内、と言ったところだな。一応全ての場所を回ってみるか」


 俺はまとめてみてかなり数が多いことに気づいた。……音楽室とトイレは定番だろうが、トイレは数が多いので一々回らなくてはいけない。


「だから廃病院で桁違いのスコアの叩き出したのね」


 するとリリスが何故か呆れたように言った。……何故ここで廃病院のスコアが出てくる?


「不思議そうな顔してるけど、あんなの全部の部屋を回れるペアって少ないのよ? 私も一回行ったけど、中ボスとやり合う度にゾンビが大量発生して。いきなり出てくるもんだから怖いし、リョウとルインでもなければ無理よ。私はウィネと二人で闇属性が効かないから一回乗り越えてもう部屋には入らずに進んだって言うのに」


 俺が不思議そうな顔をしているのが分かったらしいリリスはさらに呆れて言ってくる。……確かに一々大量のゾンビが出現してくるので止めて欲しいとは思った。だがルインが思いの他楽しそうなので、そのままゾンビを全滅させるまで全ての部屋を回ったと言う訳だ。スコアにはパーフェクトボーナスがあるのでかなり良い線はいったと思っていたのだが、まさか差がついているとは思いもしなかったな。


「……ルインと組んで廃病院なら外を全部一掃してくれる。ルインと組む時は廃病院が良いだろう。あとはレヴィも機関銃を持っている。レヴィの弾には限りがあるが、おそらく上手くやるハズだ」


「ゾンビ映画では銃が必須アイテムだものね」


 俺が《銃士(ガンナー)》だけを挙げたからかリリスはジト目を向けてきた。


「……とりあえずトイレ以外は二人で探索するとするか」


 俺が今後の指示を出しつつリリスと共に五階からどんどん下りながら怪談を攻略している。


「……まさか全ての階段が十二段だったとはな」


 二つ目の校舎一階まで下りてきた(一旦上まで上がっている)今、全ての階段を上り下りしてきた訳だが、どの階段にも十三段目があって死体が転がっていたので容赦なく銃弾を眉間に一発撃ち込み始末してきている。

 ここでも遭遇戦があったのだが、容赦なく一人一発で倒しておいた。


「…………ええ」


 少し元気のないリリスが頷く。トイレでも階段と同じようなことが起こっていて、全てのトイレに花子または太郎と思われる幽霊がいて、鏡では鏡のモンスターと戦闘になり、大便器の中から手が無数に出てきて引きずり込まれそうになっていた。

 リリスはこう言う類いがあまり好きではないようで、怯え切っている。リリス曰く、ミイラなどのモンスターとして出てくるオカルトは大丈夫だが、こう言う学校の怪談として出てくる幽霊などは苦手らしい。流石にゲーム内とは言え俺が女子トイレに入る訳にもいかないので、リリスにはトイレの時だけ我慢してもらうしかない。


「……大丈夫か? あとトイレは二つだ。頑張ってくれ」


「ええ」


 体育館近くと一階にあるトイレ。その二つが終われば更衣室以外は俺が一緒にいられる。俺はリリスを安心させようと頭を撫でてから見送り、自分も男子トイレに入っていく。


 こうして俺とリリスは体育館と校舎の外を残すのみとなった。すでに無数の怪談を発見している。


「……もう嫌」


 リリスはギュッと俺に抱き着いて離れようとしない。元々青い肌がさらに青くなっているようにも見える。……話を聞くとトイレの便器から伸びてくる無数の手は男だと無理矢理引きずり込む感じらしいが、女性だと変なところを触ってくるらしい。

 初対面の相手にキスすると言う痴女であるところのリリスなら平気かと思っていたのだが、どうやら手がヒンヤリしていて気持ちが悪いらしい。


「……大丈夫だ。リリスは俺が守ってやる」


 怖がるセルフィにも同じことを言った。俺より年上なのでしっかりして欲しいと言うのもある(ギルドでも年長者だ)。

 それに俺はギルド内ではかなり改善されてきたが、コミュ力は低いのである。何か気の利いたセリフなどすんなり出てくるハズもない。ここでジッと目を見てこのセリフを言ったならば、コミュ力が高いどころかキザである。だが俺はそっぽを向いてこのセリフである。……端から見れば何と情けないことか。


「ありがと」


 リリスはギュッと俺の右腕に抱き着いて言う。……ティアーノに迫る(らしい)大きさを持っているだけあってかなり柔らかい。青少年の理性を強く刺激してくる感触だ。確かにこれが現実と同じだとしたら、悪魔にピッタリかもしれない。魔性の魅力を持っているかもしれない。


「……」


 俺は体育館を扉を開け、中に入っていく。……先程から聞こえているバスケットボールを着く音が聞こえているので、一つの怪談があるのは確実だ。リリスは俺の右腕をより一層強く抱き締めながら俺と共に足を踏み入れた。


「「……っ」」


 首のない男子達が、自分の頭をボール代わりにしてバスケをやっていた。かなり異様な光景である。奥では顔のあるボールが無数に跳ねていて、体育館の下が元々何かだったと言う設定なのか体育館の床全体から幽霊のバラバラ死体が散らばっていた。バスケットゴール四つには首吊り自殺をしたらしき少年少女の幽霊がいた。さらに天井には何人ものマリオネットのような関節の曲げ方をしている少年少女の死体がピアノ線か何かで吊り下がっていた。

 ……正直に言って、混沌状態なので怖いと言うよりも気持ち悪い。


「……リリス。俺があげたオリジナルスキルがあるだろう? あれで床にいる全ての幽霊を一掃してくれ。お前なら出来るだろう?」


 俺がリリスにあげたオリジナルスキル『連鎖剣爪(チェーン・ネイル)』は爪に黒いオーラの爪を纏い、振るうと鎖のように爪が連なって伸びると言う効果がある。黒いが闇属性ではない。だが幽体にも攻撃出来る。攻撃出来ないモノがない代わりに弱点を(斬属性が弱点の相手以外には)突けないと言う特性がある。

 振った強さに応じて爪が伸びていくので一掃は可能だろう。流石にまだ体育館全体を攻撃することは出来ないが、二度三度と振り回せば可能だ。


「ええ、やってみせるわ」


 俺が出来るだけ優しく声をかけたおかげ、ではないと思うが、幾分か元気を取り戻したリリスが気丈に立ち上がる。……俺も俺で『バースト・ショット』を溜めておく。何があっても良いように。例えばの話だが、天井に吊り下げられている幽霊が一斉に落ちてくるとか。『時間短縮』があるおかげでそこまで溜めずに放てるのだが、溜めれば溜める程威力が上がるのだ。

 『バースト・ショット』は『ツインバースト』とは違って距離が離れていても撃てる。もちろん『ツインバースト』の方が威力は上だが。

 俺は烈火と疾風を構えて溜めていく。……その間にリリスが攻撃を開始した。右手、回って左手、さらに右手、左手と言う風に交互に回転しながら振るって伸ばして爪でバスケをやっていた首なし幽霊と奥にいた顔のあるボール達を八つ裂きにした。だが床にあるバラバラ幽霊は倒せていない。俺はリリスの進行方向と周囲の幽霊を『バースト・ショット』で消し飛ばし、援護する。


「……次、上だ」


 俺はリリスに指示しつつ床にいるバラバラ幽霊とバスケットゴールにいる首吊り幽霊を倒していく。リリスも俺の指示に従って動いてくれたので、無傷で始末を完了出来た。


「……よくやった」


 肩で息をするリリスに歩み寄り、頭を撫でて褒めてやる。あとは石像と脱出だけか。このまま何事もなく終わって欲しい。

 俺はそう思いながら、リリスに抱き着かれて一緒に体育館を出て石像を倒した。

 ……二宮金次郎像は現代の小学校にはないからだろう、校長の石像が動くと言う、何とも生霊のような怪談になっていたが。

 公衆電話はなかったので、このまま表示された指示通り校庭に向かい、最後の怪談を倒しに行こうではないか。


「……校庭に来てみたが、何もないな」


 俺は校庭の真ん中に来て呟く。


「もう怪談はないわよね?」


 リリスが青白い顔を向けてくる。……ないとは思うが。


「……もう一つ、ボス戦のための怪談があると思うのだが」


 俺が言うとリリスがウンザリした顔をした。するとその時、不意に学校のチャイムがなった。……夜中の学校でチャイムが鳴る訳がない。ボス戦の予兆と言う訳か。


「まさか死の世界に連れていかれたりしないわよね」


 リリスは余程怖いのか震えながら言った。


「……大丈夫だ。と言うか悪魔が死の世界を怖がってどうする」


 俺は若干呆れながらもリリスの頭を撫でて宥めてやる。……怖がる女性を放っておくのはあまり良くない。ただでさえ《銃士(ガンナー)》の人気は低い。だと言うのに《銃士(ガンナー)》本人の人間性が酷ければ一向に人気は増えないのだ。もう職業紹介PVを作らなくても良いが、あまり面倒なことはしたくない。目立たないで過ごしていたいのだ。


「それはそうなんだけど……」


 リリスはまだ怯えている。


 ゴゴゴゴ……!


 その時地面が大きく揺れる程の地響きが起こった。俺はリリスを抱き締めて揺れが収まるのを待つ。……結果から言えば、揺れは収まった。


「……嘘」


 リリスが呆然とした声を上げるのも無理はない。

 何故なら、学校そのモノが起き上がったからだ。……なんて無茶をしてくれやがる。ここの運営は、ボスの難易度をバラバラにしすぎではないだろうか。


「……スクール・ガイスト。まさか学校自体が怪談だったとはな。確かに七不思議と言う割りには怪談がありすぎておかしいと思ったが」


 俺はボスの名前を、『鑑定』の上位スキル『解析』して呟く。


「それにしても、このボスはやりすぎじゃないかしら」


 リリスは怖くないボスだったからか少し顔色を良くして呆れたように呟く。……体育館が上半身、脚が校舎二つ、腕が中庭、プールの盾と校庭にあったトラックの形をしているのこぎりを装備している。頭は校長の石像だ。

 ……頭だけ規模が小さすぎるだろう。


「……どうやって戦うか。こいつが幽霊だとすればリリスの闇系統攻撃は効かない。『連鎖剣爪(チェーン・ネイル)』を主な攻撃方法として、俺が前衛になった方が良いかもしれないな」


「そうね。出来るだけの援護はするわ。状態異常が効くかも調べながらやるから。頑張って」


 いつもの調子に戻ってきたリリスが俺に応える。……この分なら大丈夫そうだな。


「……ああ」


 俺は頷くのみでリリスに応え、勢いよく駆け出す。……『跳躍』と『空中跳躍』があるとは言え、空中戦は危険度が高い。第一スキルレベルが低くて一回空中でジャンプ出来るぐらいの効果しかない。

 それでは空中戦は無理だ。と言うことは必然的に地上戦となるのだが、正直に言って敵う気がしない。HPが六本もある時点で二人で倒すボスではない。


「……だが、やるしかないか」


 成り行きとは言え、リリスを守ると言ってしまった。口に出したことぐらいは守らなければならない。

 俺は学校巨人の振り下ろしてきたトラック鋸を『見切り』で事前に軌道を読み、砂埃を撒き散らすことも考えて大きく回避しながらそのまま突っ込んでいく。『跳躍』を連続して使えば走るより速くなると言うが、俺はまだそこまで到達していない。

 地面に叩きつけられ大きく抉るトラック鋸を横目で見ながら俺はどんどん学校巨人に近づいていく。……行動が遅い。これなら『ツインバースト』と『バースト・ショット』で削っていけば倒せるかもしれない。

 俺はまず烈火と疾風で『バースト・ショット』を放ち、右脚を狙う。校舎一つを破壊するのは難しいと思われるが、ここは夜中の幽霊学校である。少し古い設定のようで脆い。

 四発目の『バースト・ショット』が学校巨人の右脚を撃ち抜いた瞬間、学校巨人の右脚が全て崩れ去った。……何だ? HPが一本全てなくなっている? もしかしてあのHPは学校巨人一体のHPではなく、六つの部分に関係してくるHPなのか?

 俺は右向きに倒れてもがいている学校巨人の左脚を『バースト・ショット』で狙う。因みに俺が突っ込んでいる先には右手がある。一発一発減っていくHPを確認しながら攻撃していると、半ば程で崩壊すると他の部分もボロボロと崩れていった。……どうやら俺の推測は正しいようだな。崩れると同時にHPが一本減った。

 そのまま駆けていって、俺は右腕に到着する。二つの銃口を突きつけて、『ツインバースト』を放った。『バースト・ショット』を放ってから溜めていたのでかなり威力は大きい。五分の一程が消し飛んでいた。残り少しの部分を黒く連なった爪が切り裂き、右腕も崩壊していく。リリスもどうやら気づいたようだ。

 その後もリリスと声をかけない協力で左腕、胴体と順に崩壊させていく。最後に頭である校長の銅像を残しておいた。


『……わしの学校に、何してくれとんじゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 だがそれが仇となったようだ。校長の銅像がいきなり怒り出し、筋肉ムキムキの巨人となったのだ。


「……なかなか良い身体をしているようだ」


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょうに」


 俺が後退して呟くとリリスに呆れられてしまった。


「……」


 俺は試しに烈火と疾風を乱射してみる。だが銅像だからかHPはほとんど減らず、少し白くなったかな? 程度だ。……防御力がバカ高いタイプのボスと言うところか。


「……俺が一撃で決める。溜める時間が欲しいから、リリスはその間時間を稼いでくれ」


 俺は全開『ツインバースト』で決めようと、リリスに時間稼ぎを頼む。


「良いわよ。相手が仮にでも男なら、私の得意分野だから」


 枯れたじいさんにナニを思い起こさせるかは分からないが、リリスがやれると言うのだから大丈夫だろう。


「……頼んだ」


 俺はそう言って二挺を超銃に変え、『ツインバースト』の光を溜める。

 リリスは『連鎖剣爪(チェーン・ネイル)』を軸に戦闘を展開していく。状態異常魔法も使っていたが、ボスなので確率が低く、なかなか成功しない。魅了は三回成功していたが、アビリティを使ってのことなので、かなり低いと言える。……確かリリスの異性に対する魅了成功率は八割(ボスだった時から修正が入った)だからな。アビリティを使っての成功率は校長の銅像に対して五割と言うところだな。

 だが、充分な時間稼ぎにはなった。

 俺は『ツインバースト』がかなり溜まったことを確認して、一気に駆け出す。校長に突っ込んでいき、拳を『跳躍』して避け、続け様に振られたもう片方の拳を『空中跳躍』で避けて、懐に入る。

 そのまま生やした二本の〈蠍〉の腕を銅像に何とか突き立てると、『跳躍』で飛び上がり身体を反転させて『空中跳躍』をし、真っ直ぐ校長の頭に突っ込んでいき、二つの銃口を突きつけて『ツインバースト』。

 校長の銅像は頭と上半身の半分が消し飛び、倒れた。


 俺が『一旦停止』のスキルの書、リリスが鏡のイヤリングを手に入れて、ギルドホームに戻る。


 じゃんけんの結果、次の俺のペアはリアナとなった。

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