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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第二章

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セルフィと~墓場迷路で~

 ペアになった俺とセルフィが転移した先は墓場迷路だった。


「……私、さっきここでした」


 するとセルフィが沈痛な面持ちで言った。……と言うことは完全なランダム制か。


「……道順は変わっているか?」


 俺はおそらく初めてだろうセルフィとの二人きりだが、普段と同じようにしようと心がけて尋ねる。


「はい」


 セルフィは頷いて琴を構える。……墓場迷路は墓が無数に並んでいて、その間を進んでいく。墓の間の通路が迷路になっていると言う訳だ。

 出現するモンスターは幽霊や人魂の類いだ。


「……そう言えばセルフィはこう言う類いが苦手だったな」


 俺は前回のイベントで幽霊を怖がっていたことを思い出して言う。クーア程ではなかったが、苦手な様子だったと思う。


「一応バレないようにしてたつもりなんですけど、バレてましたか」


「……ああ。俺以外が気づいたかどうかは分からないが、少なくとも震えているのは分かっていたからな」


「そうですか」


 セルフィは一生懸命に隠そうとしていたことがバレていたと言うのに、少し嬉しそうに微笑んでいた。


「それで、ほとんど幽霊が出るんですが、たまにゾンビが墓から出てくる罠があるので注意して下さい」


 セルフィは話題が終わってしまって会話が続かなくなってしまうからか、話題を変えた。


「……またゾンビか。俺達が行った廃病院ではゾンビしか出てこなかったのだが」


「廃病院ですか。どんなとこなんですか?」


 俺とセルフィは幽霊と人魂をセルフィの魔法で、たまに出現してくるゾンビを俺の銃で倒しながら雑談して進んでいく。


「……そう言えば、魔銃と言うモノが作成出来るようになったのだが、それなら幽霊にでも効くだろうか」


「そんな銃があるんですか? なら多分効くと思いますけど」


 互いに前回の場所について説明し合って話題がなくなりかけたが、俺から話題を振ってみることにする。……因みにクーアはカタラにくっついてしまった。だから俺とセルフィの二人きりと言う状態になっているのだが。

 墓場迷路でも他のペアとの遭遇戦があった。しかもまた二回。セルフィに聞いたところ、ランダムで相手と遭遇するようになっていると言う。


「……烈火、疾風、流水の三つの属性攻撃を撃てる銃が作成出来るようになったのだが、どの属性が一番幽霊に効くのだ?」


「確か、火系統だったと思います」


 セルフィに言われて俺は六挺を収納しているホルスターに超銃二挺を戻し、赤い銃を左手に持つ。


「……魔力を弾丸にして放つのが魔銃だ」


 俺は説明しつつ出現してきた白くて丸いあまり怖くない幽霊に銃口を向ける。引き鉄を引くと赤い弾が放たれ、幽霊に当たる。すると着弾と同時に発火した。……なるほど。どうやら効くらしい。着弾すると発火するのが烈火の弾丸だ。


「凄いですね。魔法並みの威力を持ってましたよ」


 セルフィが驚いたように言う。だがそれは初期火系統魔法である『火魔法』の初期アビリティ【ファイア】と同程度の威力しかない。魔法と武器攻撃を併せ持つ職業としては、些か以上に遅いと言えるだろう。一発では倒せなかったので倒れるまで四発放って倒せた。一番効果のある火属性ですらこれなのだから、かなり威力が低いと言える。魔方陣なしに魔法を撃てると思えば、着弾速度もこちらの方が速いので、良いと言えるのかもしれない。


「……烈火に『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』を合わせれば――【ファイアランス・ブレット】」


 俺は説明を続けながら火の弾丸を火の槍へと変えて次に現れた幽霊を撃ち抜く。


「す、凄いです」


 セルフィが感嘆の声を上げる。……確かに『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』と合わせれば『火魔法』と同等のモノになる。


「……だがこれではセルフィの出番がなくなってしまうからな。折角二人で来たのだから、共闘と言うことで俺は超銃二挺にしようと思う」


 だが俺は内心でセルフィに苦笑しながら魔銃を使わないと宣言する。……余程危ない目に遭えば使うと思う。俺も死に戻って子供になりたくはないからな。


「分かりました、頑張ります!」


 ゾンビより圧倒的に幽霊や人魂などの方が多いからか、セルフィは拳を握り締めてやる気を見せた。……そこまで張り切らなくても良いと思うのだが。

 話を聞く限りではリリスとセルフィのコンビでも簡単に倒せたと言うので俺とセルフィなら問題ないだろう。セルフィにも俺が考えたオリジナルスキルを授けてある。


「……ああ」


 俺は言ってセルフィと並んで歩いていく。……セルフィがこうしたいと言うので並んでいる。前衛と後衛と言う役割の違いがあるため俺が前、セルフィが後ろで良いとおもったのだが、セルフィが怖がるので横に並んで歩いている。

 確かにセルフィがゾンビに襲われた時フォローしやすいので楽と言えば楽なのだが。


「「……」」


 俺とセルフィは思わず黙ってしまった。セルフィが教えてくれたゴールであるボロボロの寺に続く道が、今までと同じ通り墓に挟まれた道ではあった。

 だが幽霊や人魂などの敵は見えず、ただ真っ直ぐに伸びた一本道だけがあった。……絶対にゾンビが大量に出てくるパターンだな。

 セルフィも俺と同じことを思ったらしくギュッと怯えたように俺の右腕にしがみついてきた。そのせいで(おかげで?)柔らかい膨らみが二の腕に当たる感触があったのだが、それを気にしている暇はなかった。


 明らかに罠だと思われる地点にいるからだ。


「……大丈夫だ。セルフィは俺が守ってやる」


「リョウさん」


 俺は右手を上手く使ってセルフィを抱き寄せると出来るだけ優しく声をかける。セルフィは少し恥ずかしそうにしていたが震えが止まったので落ち着いたようだ。俺はセルフィを放す。


「あっ……」


 セルフィは少し残念そうな顔をしていた。……何故かは分からないが、おそらくこれから幽霊を見てしまうことになるからだろう。


「……では行くぞ。援護は任せた」


 俺は言ってセルフィと共に一本道を歩いていく。


「は、はい」


 セルフィは琴をギュッと握り締めて俺の横に並び頷く。


 墓場には奇妙な静寂が訪れていた。俺とセルフィも緊張を纏って歩く(セルフィは浮いて進むだが)。


「「……」」


 異様な沈黙に支配された墓場迷路最後の一本道。足を踏み入れたらすぐにゾンビが大量発生すると言うことも考慮していたが、そんなことはなかった。半ばまで進んでも変化はない。


「……」


 何かあると思わせて実は何もないと言うパターンだろうか、とセルフィは思ったのだろう、ホッと一息ついて安心していた。

 ……そうやって何もないと思わせて一気にくるのが幽霊屋敷の常套手段なのだが。

 俺はセルフィにそう言う訳にもいかず、一緒に並んで寺まであと数メートルと言う地点まで来た。

 ……本当に何も起こらないのだろうか、そう思った瞬間だった。寺までの距離は二メートルしかない。


「「「オオオオオァァァァァァァァァ!!!」」」


「ひうっ!」


 俺達の周囲を囲むように、ゾンビと幽霊、人魂などが一斉に出現した。……特に寺の前に出現した巨大な幽霊は怨霊と言われるくらいに恐ろしい姿をしていた。

 セルフィは完全に怯えてしまって俺に抱き着いてくる。……これでは俺が動けないのだが。


「……大丈夫だ。言っただろう? セルフィは俺が守る」


 俺は再び出来る限りの優しい声音で言って左手に超銃、右手に烈火を装備する。ゾンビにも火属性攻撃が効くので両手の銃を乱射して一発ずつで全て仕留めていく。


「リョウさん」


 セルフィはギュッと俺に抱き着きながら潤んだ瞳を俺に向けてくる。


「……セルフィ、雑魚を頼めるか? 俺はボスを倒す」


「はい」


 俺が超銃一挺で何とか凌ぎながら右手をセルフィの頬に添えて囁くと、セルフィはどこかボーッとしたような顔で頷いた。……大丈夫そうだから良いとは思うが。


「【オーシャン・トルネード】!」


 セルフィは俺から離れると、後ろを振り向いて右手を突き出し、セルフィが持つ最強の魔法『海神魔法』の一つを使った。巨大な水の渦が魔方陣から放たれ、後ろにいたゾンビと幽霊などを一掃していく。……恐ろしい威力だ。背後にいた敵がいなくなった。


「……よくやった、セルフィ」


「はい!」


 俺はセルフィを褒めながら超銃と烈火の二挺で『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』を使いまず雑魚を仕留めていく。同時にボスらしき巨大な怨霊――キングネス・ゴーストを烈火で怯ませておく。

 セルフィはMPが切れかかっているのでスキルがあるとは言え回復に時間がかかる。ここは俺が時間を稼ぐかこのまま倒すかするしかないだろうな。

 俺は超銃を疾風に変える。


「……【ファイアソード・ブレット】、【ウインドソード・ブレット】」


 俺は火と風の剣を撃つ。わざと射線が途中で重なるようにしていたので巨大怨霊の前で融合し、巨大な火炎の剣となって巨大怨霊を刺し貫いた。

 巨大怨霊が怯んでいるところに火と風の弾丸を放って追撃し、そこにセルフィの水系統魔法が加わりボスのHPはどんどん減っていく。


「【アクア・メロディ】」


 さらにセルフィは俺が考えたオリジナルスキル『実体音符(メロディ・リアリティ)』を使って攻撃を重ねてくれる。『実体音符(メロディ・リアリティ)』は奏でた音の音符が実体化して敵に当たり、攻撃すると言うスキルだ。

 セルフィのために属性攻撃が出来るようになっている。


「……終わりだ」


 俺は充分にHPが減ったところで近づき、『跳躍』の効果もあって高くジャンプして二つの銃口をボスに突きつけると、『ツインバースト』を放った。すると何故か、二挺の銃から放たれた波動は赤と灰と言う、火と風の色になっていた。

 よく使うのでスキルレベルも高い『ツインバースト』は高威力なのでボスのHPは真っ白になるまで消し飛んだ。


「……勝ったな。大丈夫だったか?」


「はい。リョウさんのおかげです」


 俺はボスが消えていくのを見ながらセルフィに尋ねる。セルフィは少し疲れたような顔をしていたが、大丈夫なようだった。

 俺とセルフィが寺に入るとそこには宝箱が二つあった。やはりアイテムとスキルが一つずつだ。


「スキルの書の方は『空中跳躍』ですね。私はこんな脚ですし、リョウさんこっちで良いですか?」


 セルフィが二つを見比べて俺に聞いてくる。


「……ああ」


 俺はそう言って『空中跳躍』と言う空中でも跳躍出来るスキルの方を開ける。セルフィが貰ったアイテムは乱のブレスレットと言う。どうやら魔法関係の効果を上げるアイテムのようだ。

 二つの宝箱を開けて貰ったモノを装着、または使用したところで俺達は転移ゲート前に転移させられた。


「……では、一度ギルドホームに戻るとするか」


「はいっ!」


 どこか嬉しそうなセルフィを連れて、《ラグナスフィア》のギルドホームに戻っていった。


「……ねーたん」


「……だめ。これはくーあのなの」


 俺達がリビングに戻ると、クーアとテーアが喧嘩していると言う珍しい光景があった。

 テーアがクーアの服を引っ張っているが、クーアが抵抗していると言う光景だ。……テーアもクーアのような兎服が羨ましいのだろうか。


「……テーア」


 俺はテーアに声をかけて後ろから抱えて頭を撫でる。


「……とーたん」


 テーアはジタバタと暴れていたが俺の顔をジッと見上げてきた。……何かを訴えているようでもある。


「……テーアがクーアの兎を羨ましがって欲しがった」


 クノは簡潔に事情を説明してくれる。……大体俺の推測通りか。


「……大丈夫だ。テーアにも兎を作ってある」


「……とーたん」


 俺はテーアを宥めながら言って、アイテムバッグからルインがクーアの兎を作っていた間に作っていた、テーア用兎服を取り出す。


「……」


 テーアは俺が取り出した黒い兎の服を手を精一杯に伸ばして取ろうとするので、俺はすぐにテーアに渡してやる。

 テーアは黒い兎の服を早く着たいのか、俺から下りるとすぐに着替え始めた。だがそこにクーアが割って入り、俺を睨み上げる。


「……りょうは、みちゃだめ」


 クーアがそう言うので俺は仕方なく、スキルのチェックをするためにウインドウを開いてテーアから目を放す。テーアはクーアの背に隠れてゆっくり着替えていた。

 ……ん? 新しいスキルが増えているな。『バースト・ショット』と言うスキルだ。『ツインバースト』で放つ波動を単体で放てるようになるスキルのようだが、これも溜める時間が必要だ。俺は『チャージ・ショット』と『ツインバースト』で『時間短縮』のスキルレベルがどんどん上がっていくから大して問題ないのだが。

 習得条件を見る限り、先程やった魔銃での『ツインバースト』が関係してくるようだ。『ツインバースト』のスキルレベルの条件もクリアしているので、これから『バースト・ショット』のスキルレベルも上げていくことにしよう。


「……とーたん」


 俺がウインドウを確認している内に着替え終わったテーアは黒い兎姿で俺にキュッと抱き着いてくる。……可愛いとか似合っているとかを聞きたいのだろうか。


「……可愛いぞ、テーア」


 そんなことはないかもしれないがテーアの瞳が何かを期待しているようだったので、俺はそう言って頭を撫でてやる。


「……むー。くーあも、くーあも」


 テーアが羨ましく思えたのだろうか。クーアも頬を膨らませながら俺に抱き着いてきて、頭を撫でることを要求してきた。俺はそれに従ってクーアを撫でてやる。


 そんなことがあってから、じゃんけんで次の俺のペアを決め、今度はリリスに決まった。

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