羽毛アイテム
「……りょう、あそんで。くーあひまなの」
俺専用工房から出ると、拗ねたような顔をして立っていたクーアが両手を伸ばしてきた。
「……放っておいて悪かったな」
俺はそう言ってクーアを抱える。
「……う。くーあ、ほっとかれてさみしかったの」
クーアはギュッと俺に抱き着いてきて言う。……それは悪かったな。せめてクーアだけでも入れるように設定してやるべきか。
「……悪かった。お詫びと言っては何だがクーアに頼まれていたクッションをあげよう」
俺はそう言ってアイテムバッグからミニボアクッションを取り出す。
「……おー!」
するとクーアのテンションは見て分かる程に上がり、目を輝かせて喜んでくれた。
「……抱っこするか?」
俺はクーアの腹を抱えるようにしてクーアを後ろから抱えると、ミニボアクッションを手渡す。
クーアはこくこくこく、と頷いてミニボアクッションを受け取り、ギュッと抱き締める。……可愛い。可愛いと可愛いがかけ合わさってかなり可愛い。
「……もふもふー」
クーアも嬉しそうだ。折角なのでメンバーにも見せてやることにする。
俺は手足のない等身大ミニボアクッションを抱えたクーアを抱えたまま、リビングに向かう。
「……もふもふのぼあぼあは~?」
クーアはメンバー数人が集まっているリビングに着くとミニボアクッションで自分の顔を隠し、ミニボアクッションをモゾモゾと動かす。
「……くーあでしたー!」
俺がソファーにクーアを下ろすと、クーアはミニボアクッションの後ろからひょこっと顔を出した。
「そう、良かったわね」
テンションが上がって可愛いクーアを微笑ましく見守っていたウィネは身を乗り出すと、クーアの頭を撫でた。クーアはウィネに頭を撫でられて嬉しそうだ。
「……クーア可愛い。よしよし」
更にクノがクーアの頭を撫でる。俺はクーアの隣に腰かけた。
「……頼まれていた羽毛アイテムだ」
俺は一人ずつ作成した羽毛アイテムを手渡していく。
「……もふもふ、いっしょ」
クーアはそれらを見て前に作った羽毛クッションを手に取ると言った。
「……ああ。お揃いだな」
俺はクーアの頭を撫でてやる。
するとクーアは羽毛クッションをソファーに設置し、ミニボアクッションの頭を羽毛クッションに乗せて自分も羽毛クッションに頭を乗せる。ミニボアクッションをギュッと抱き締めた。
「……くーあおひるねするから、どっかいっちゃだめ、りょう」
クーアは俺を見て言った。……それくらいなら良いが。
「……分かった」
俺は頷いてクーアを撫でてやる。するとクーアはすぐに気持ち良さそうな寝息を立て始めていた。
「……それで、これを少し見て欲しい」
俺はアイテムバッグから一つのフィギュアを取り出してソファーの前にあるテーブルに置いて見せる。
「……これ、ネプチューン?」
カタラが驚いたようにフィギュアネプチューンを手に取る。岩塊に張りついた版のネプチューンだ。曖昧な部分がないように細かく作成したため完成度は高い。だが商品として見るならば、イマイチと言える。
「……ああ。『フィギュア作成』のスキルレベルが低いからか、俺の器用さが低いからか出来がイマイチだけどな。商品化するには精度が低い」
俺は頷いてカタラの手からネプチューンフィギュアを奪い取る。
「これを作成したってだけで凄いのに、何を求めてるの?」
ウィネは呆れたように言った。……何をと言われてもな。俺はただ妥協したくないだけだ。現実ならもう少しディティールに凝ったフィギュアが出来るのだが。
だが現実でフィギュアを作成するとなると著作権の問題が発生する可能性があるので、運営に一度確認を取った方が良いだろう。許可されなかったら仕方がない。無断でやる訳にもいかないのでパクリ程度で留めておくしかないだろう。
「……『塗装』のスキルレベルが低いから色彩の数が少ない。それに『細工』のスキルレベルは高いのに細かい部分で欠如している」
俺は言ってフィギュアをアイテムバッグに戻す。……どうせ捨てるフィギュアだ。そこまで丁寧に扱う必要はない。更に完成度の高いフィギュアを作らなければ。一通り今まで遭遇したモンスターは作成してあるが、更に完成度を高めなければならない。
「……そこまで凝るなら私のも作って」
クノがジッと俺を見つめて言ってきた。
「……ダメだ」
俺はそれだけを言ってこの話題は終わりとばかりに寝ているクーアを撫でながらウインドウを出して何か新しいスキルはないかと探した。……ん? 新しいスキルが増えているな。生産上位派生スキルだ。『銃創錬金』と言う『銃部品作成』と『錬金』を融合させると生まれるスキルだ。『錬金』のように素材を掌に載せてパン、と合掌すると銃が作成出来るスキルだ。作成が簡単になる上に『錬金』と『銃部品作成』のスキルはなくならないので融合させるしかない。
……ところで銃作成スキルが『鍛冶』の派生だと聞いたのは、何だったのだろうか。嘘と言うことはないだろう。おそらく『錬金』が広範囲のモノを作成出来るので、その一つと言うことだろうか。
ウインドウをタッチして二つのスキルを融合させ、『銃創錬金』を習得する。……最初のアビリティは一つで現在所持している素材で作成出来るので、素材を掌に載せ【ハンドガン】と呟いて合掌する。すると市販よりも弱く一発一発コッキングするタイプのハンドガンが作成された。次に現れた三つのアビリティの内三つ共が素材は揃っていないが素材を採集すれば作成出来るので、今作成出来る二つの銃を作成しておく。【強拳銃】と【速拳銃】だ。残る一つは【連拳銃】。要するに威力が高い拳銃、弾速が速い拳銃、自動で装填される拳銃の三つと言うことになる。
「さっきから拳銃作成して何やってるの?」
ブツブツとアビリティ名だけを呟く俺に嫌気が差したのか、遂にウィネが尋ねてきた。
「……『銃部品作成』と『錬金』の融合スキル『銃創錬金』が習得出来たからアビリティを増やしているだけだ。誰か、鉄鉱石を三つ持っていないか?」
俺はウィネに答えつつ足りない素材を持っていないかメンバーに尋ねる。
「私、持ってますよ」
ルインが小さく挙手して言い、アイテムバッグから三つの鉄鉱石を取り出すと俺に手渡してきた。
「……助かる」
決してルインを見ようとはせずにそれらを受け取り『銃創錬金』を行って【連拳銃】を作成する。俺が今使っているのはこの【連拳銃】に分類されるのだろう。威力も同等だ。これからは【強拳銃】と【速拳銃】と言う二つの拳銃も増えたので、俺の戦術に幅が出るだろう。『零距離射程』と『ツインバースト』の需要も高まると言うモノだ。
次に出ていたのも三つで、今作成した銃の上位銃らしく銃自体を素材として使う。【強速拳銃】、【強連拳銃】、【速連拳銃】の三つなのでそうなのだろう。その辺りに『錬金』が混ざっているようで、銃を一挺ずつ必要とする。……鉄鉱石が圧倒的に足りないな。採掘しに行かなければならない。
「……クーア、起きろ。出かけるぞ」
俺は気持ち良さそうに寝ているクーアを揺すって起こす。
「……う」
クーアは寝惚け眼で俺を見ると、手にギュッと抱き着いてきた。
「……起きろ。出かけるぞ。それとも留守番しているか?」
「……うー。くーあ、おるすばんなの」
まだ眠いようで、クーアは留守番を選んだ。仕方がないので再びクーアがミニボアクッションに抱き着いて寝始めるのを待って、ウィネとカタラにクーアを頼み、俺はギルドコアのある場所から転移でフェザンの街まで行き、鉱山の採掘ポイントに向かう。
俺についてきたメンバーはクノだ。
「……いっぱい採掘するから」
クノは鉱山に来て俺にギュッと抱き着き言ってから、別行動を取った。
……では俺も、たくさん採掘するとしよう。鉄鉱石をな。




