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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第二章

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ミニボアクッション

「……りょう」


 俺が粘土の洞窟でひたすら粘土を掘って採集していると、抱えているクーアが俺の服を引っ張ってきて呼んだ。


「……何だ?」


 俺はクーアを見下ろす形で見る。怒ってから片時も離れようとしないのだ。


「……くーあね、どどどど、びたーんのやつほしーの。かわいーから、なでなでもふもふしたいの」


 いつものたどたどしい口調で言ってくる。……ドドドド、ビターン? 可愛くて撫でたくてモフモフと言えば、あいつしか思い浮かばないな。


「……ミニボアか?」


 無限迷宮で遭遇したミニボアだろうと当たりをつけ聞くと、クーアはこくこくと頷いた。


「……何とかしてやりたいところだが、無理だな」


「……がーん」


 俺が言うとクーアはそう言って表情に陰を落とす。……仕方ない。何か手を考えるか。フィギュアは硬い。ミニボアの素材は一応余っている。なら何か作ってやれないだろうか。


「……ミニボアのクッションなら作れないこともないか」


「……ほんと?」


 俺が呟くとクーアは表情を一転させ輝かせると期待に満ちた瞳を向けてくる。


「……ああ。可愛いのを作ってやるから、楽しみにしていると良い」


「……ん!」


 俺が頷いて言うとクーアは嬉しそうに微笑んだ。


 そうして俺は自由行動中色々な粘土を採集して過ごし、三時間後にメンバーと決めた集合時間となり新しい街に行き転移ゲートを繋いでから、ギルドホームに戻っていった。


「……では俺は俺専用工房に籠るから」


 俺はクーアをカタラに預けそう言って移動しようとする。


「……りょう、くーあおいてく?」


 だがクーアが俺の服を掴んで引き止めてきた。


「……ああ。専用工房は俺以外侵入不可の設定してある」


「……ふえ」


 俺が頷くとクーアは涙目になってしまった。……こう言う時は何と言えば良いのか。


「……大丈夫だ、問題ない」


 何がだろうか。


 俺はとりあえずクーアの頭を撫でてそう言った。……言葉に詰まると適当なことを言ってしまうのは、コミュ力の低いヤツの悲しい性だろう。結局会って間もないルインとはあまり話していない。いや、全くと言って良い程会話がない。俺の本能がルインを避けているのか、ルインが話しかけてきそうになると誰かに話しかけて逃げることも多い気がする。

 ……ただのコミュ障か。他のメンバーは慣れたのだが。


「……う」


 クーアはションボリして頷くとカタラにギュッと抱き着いた。……そうされると心苦しいのだが。仕方がないだろう、折角クーアに頼まれたミニボアクッションを作成しようとしているのに。サプライズでプレゼントしようとしているのに、それが全て無駄になってしまう。それだけは避けなければならない。


「……では頼む」


 俺はカタラにそう言って俺専用の工房に向かい、籠る。


 籠ってまずクーアのクッションを作り始める。……クーアだけがギルド倉庫に入らない限り自由に出し入れ出来ないのだったな。メールでギルドメンバーに羽根を出来るだけ多く集めてくるように頼んでおく。折角だから羽毛クッションにしてやろう。ミニボアの体型は頭の中に残っている。それに一応『フィギュア作成』で試したミニボア土人形があるので問題ない。

 ミニボアの革をミニボアの形に加工していく。切ったり縫ったりを『裁縫』で行えば出来ないことはない。足りなければ第二のミニボアの革を使えば良いだけのこと。そうして羽毛を入れる穴を開けたミニボアのクッション(革だけ)が出来た。目には『鉄工』で作った黒く薄い円を使ってクリクリした瞳を再現する。目の裏には真ん中に出っ張りがありそこには糸を通すための穴がある。それで目元に縫いつけるのだ。鼻も工夫してやる。『ゴム作成』で作った∞のような形の鼻を、目と同じようにして先に縫いつける。

 これで後は羽毛を入れてやるだけだ。ギルド倉庫を見てみると多くの羽根が集まっていて、何人からかメールが来ていた。


「……足りないな」


 他のメンバーも思い思いの羽毛アイテムが欲しいようだ。……枕は作成出来ないな。あれは確か『寝具作成』のスキルに組み込まれていたハズだ。布団も然り。仕方がない、俺が作成出来るモノ以外は要望に応えてスキルを習得してから作成しよう。となると更に羽毛が必要になるかもしれないな。

 俺はそう思い至りギルドメンバー全員に「……羽毛アイテムが欲しいなら更に大量に羽根を集めてくれ。鳥系モンスターを捕獲しても良いから」と言う文面のメールを送っておく。俺は『解体』のスキルも習得しているので問題ない。寧ろそちらの方がたくさん羽根を入手出来るので良いのだが。


「……とりあえずフィギュア作りに精を出すか」


 俺は一人呟いて、粘土の洞窟で採集してきた各種粘土をアイテムバッグから取り出して比べていく。どれが現実で言う『フィギュア作成』に使える粘土に近い性質を持っているのか一つ一つ検証していくのだ。

 良い粘土を見つけると『見切り』を使って『集中』し一つ一つ丁寧に仕上げていく。『塗装』も出来るので細かく『細工』していく。


 食事の時間になったらログアウトして、それ以外の時間はずっと『フィギュア作成』に費やしていた。『フィギュア作成』の気分転換に『寝具作成』の習得クエストを受けてから『寝具作成』を行ってギルド倉庫に貯蓄してある羽根から羽毛を作り、人数分の羽毛アイテムを作った。その後も『フィギュア作成』を続け、俺は三日振りにメンバーとまともに話すことになった。

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