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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第二章

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幼虫嫌い

ホントすみません

一話抜かしてました

 アルメシア鉱山の幼虫洞窟と言うその場所に入っていく。……明かりがないため暗い。だが真っ暗にするとダメなのか、薄暗い。

 幅は大体横七メートル、縦五メートルぐらいで半分から上部分ぐらいからドーム状になっている。……幼虫洞窟やモンスターの掘ったと言った情報に嫌な予感しかしないのは俺だけではないのだろう。クーアがビクビク怯えている。


「……おばけでる?」


 クーアはウィネ向きに抱えられながら、怯えた表情で目に涙を溜めていた。……どうやら天空城の幽霊がトラウマになっているようだ。


「出ないわよ」


 ウィネは優しい表情でクーアの頭を撫でて宥める。


「……おやだま、いる」


 だがクーアはふるふると身体を震わせた。メンバーの視線がリリスに集中する。


「私は幽霊の親玉じゃないわよ。クーアちゃんも私が仲間だってことぐらい分かってるでしょ」


 リリスは不満そうに唇を尖らせる。……そう言えばクーアがリリスを怖がっているような節はなかった。


「……りりす、りょうとくっついてきらい」


 クーアはギュッとウィネに抱き着いて胸元に顔を埋める。……別にそんなにくっついている気はしないのだが。どちらかと言えばクーアの方が一緒にいる時間が長いと思う。


「確かに私はリョウにくっつくけど、クーアちゃんだってリョウに抱っこされてるでしょ!」


 リリスは大人気なくクーアをズビシッと指差して言う。


「……くーあはりょうにだいじだいじされてるからいーの」


 クーアは顔をウィネの胸に埋めたまま、少し嬉しそうに言った。


「私だってリョウに大事にされるわよ」


 フフン、とリリスは胸を張る。……いや、クーアとリリスでは比較にならないと言うか……。


「……くーあ」


 ムッとしたらしいクーアがリリスを睨む。


「「……」」


 両者の睨み合いは薄暗い洞窟の中で、先に進みながらも続いていく。


 ……先程から洞窟にいるモンスターを、ティアーノとクノとリアナを中心に倒しているのだが、呑気なモノだ。クーアにも大分余裕が戻ってきている。

 アナバット(ただの蝙蝠)、ロックマジロ(身体が岩で出来たアルマジロ)、ロックゴーレム(身体が岩で出来た人型で二メートルぐらいの身長をしているヤツ)が出てきていた。アナバットは俺とレヴィの狙撃で倒せるが、残り二種のモンスターは身体が岩で出来ているからか銃弾で貫けない。リアナの拳かティアーノの氷、またはクノの『投擲』武器によって岩石系モンスターは倒している。……金属の弾丸で岩が貫けないのは、おそらく普通の岩ではなくモンスターだからだろう。『零距離射程(レンジ・ゼロ)』や『ツインバースト』を使えば身体を破壊して倒せるとは思うのだが。

 銃弾無効、と言った特性がなければ大丈夫だろう。そんな特性があったら『銃殴術』と『銃剣術』と『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』で戦うことになる。それはそれで良いかもしれないが、あまり無駄にスキルを使いたくない。


「……中間地点でボスバトルがあるらしい」


 クノが言った。……洞窟から出る直前ではないのか。


「後半にはアイテム採集ポイントがあるのよ。つまり、向こうからなら採集だけを回れるってことよ。まあ、そのためにはボスを一回は倒さなくちゃいけないみたいだけど」


 ウィネが追加で説明してくれる。一回倒せば向かいから洞窟に入ってアイテムを採り放題と言うことのようだ。それは有り難い。どうせボスはワームだろうからな。


「……もももも、いる?」


 クーアが泣きそうな顔でウィネに訴えるように言う。「もももも」とは何だろうか。


「……いるわね。しかも凄いおっきいのが」


 ゴクッと生唾を飲み込み、ウィネがクーアに青い顔で告げる。


「……ふぇ」


 クーアは今にも泣き出しそうな顔をした。


「大丈夫よ、クーア。今はリョウがいるから」


「……りょう」


 ウィネがクーアを撫でて宥めながら言うと、クーアは泣きそうな顔を俺に向けてきた。……ワームか。俺も好きではない。嫌いだ。


「……分かった」


 だがクーアの泣きそうな顔を見て、怖いややりたくないとは言えない。仕方なく頷いた。……本当はワームのような幼虫が大嫌いなのだが、仕方がない。銃で遠距離攻撃していれば何とかなるだろう。

 トラウマがあるとは言えクーアに頼られては逃げる訳にもいかない。


「……そろそろボスフィールドに入る。ここのボスは入り組んだ洞窟を利用して這い寄るから」


 クノが注意喚起をしてくる。


『対戦人数九名。ボスバトルを開始します』


 するとすぐにボスバトル開始のアナウンスが聞こえた。……つまりどこから来るか分からない恐怖と戦うと言うことか。もしソロだったなら背後から這い寄ってきてガブリ、もあるのかもしれない。


「……も、ももももくる」


 クーアが泣きそうな顔をしてウィネに訴えていた。……クーアが言うならそうなのだろうが、俺には全く這い寄る音が聞こえない。クーアの感覚がプレイヤーより優れているからな。


「どっちから?」


「……まえ」


 ウィネがクーアの頭を撫でて宥めつつ言うと、クーアはぽつりと言った。


「……正面突破とは良い度胸だな」


 俺は呟く。


「……気をつけて」


 クノがそう言って後ろから忠告を促してくる。……気付けばメンバーは皆後ろにいた。俺を先頭にしている。


「……何故後ろに?」


 俺はジト目に尋ねる。……俺を盾にしようと言うなら俺にも考えがあるぞ。衝突してくる直前、大きく後ろに跳んで避けたりな。

 ……それをするとクーアが泣いてしまうのでしないが。


「……ももももきた」


 クーアがギュウ、とウィネに抱き着く。


「キシャアアアアァァァァァァァ!!」


 奇声を上げながら、前から何かがズルズルと這ってくる音が聞こえた。


「……もー!」


 巨大ワームを見たクーアが泣き出してしまった。


 そいつは身体をグルグルと回転させながら突き進んでくる。きっと全身をドリルのようにして掘ってきたのだろう。紫色の身体に青い唇、大きく開けた丸い口の中は赤い。丸い口には満遍なく牙が生えており、目や鼻と言った器官は見られない。だがそれが、俺に幼虫を連想させる。

 ……ああ、やはりワールは気持ち悪くて嫌いだ。涎を撒き散らして突っ込んでくるのも気持ちが悪い。何より形が嫌だ。それに身体がブヨブヨしていそうで気持ち悪い。

 一秒でも長く見ていたくない。


 ならどうするか?


「……殺す!」


 俺は言ってブツブツと呪いの言葉を繰り返す。まず二挺の拳銃を乱射。だがあまり効果がないようなので『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』を恨みの言葉の間に挟んであらゆる武器でワームをズタズタにしてやる。弾が切れると二挺の拳銃を放り投げ、もう二挺の拳銃を抜き去って撃つ。片方は『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』、片方は洞窟だと言うことを利用した『跳弾』だ。それらを素早く撃ち終わると、その二挺を放り投げ落ちてきた二挺を手に取りマガジンを素早く射出、装填する。それを五回程繰り返すと、遂にのた打ち回っていたワームが事切れる。


「……ふーっ」


 俺は怨念の繰り返しを止め、清々しい思いで大きく息を吐く。


「……では行こうか?」


 俺が後ろを振り返ると、全員が青い顔をして俺から数歩離れていた。……どうやら引かれてしまったらしい。だが仕方がないだろう。俺は幼虫が大嫌いで、本気で撲滅を考えていたくらいだ。この世から幼虫が消え去れば良いと、何度思ったことか。


「……幼虫、嫌いなんですね」


 ドン引きだったメンバーだが、レヴィが離れたまま聞いてきた。


「……ああ。あれは小学生の時だったか。ユイに蜂の子と言われて食べた幼虫が、まさかあいつだったとはな……」


 ああ、あれは最悪の記憶だ。不味い上に気持ち悪い。トイレに直行して吐き、その後も幼虫の正体を知って三日間学校を休んだ程だった。あれ以来、俺は幼虫を見るとあの時の感じが思い出された気持ちが悪くなる。……幸いと言うべきか、生きたまま食べたので死んだ幼虫なら大丈夫だ。寧ろ俺が殺すと気分が晴れる。今も心晴れやかな気分だ。


「……全然晴れやかではない。思い出したら気持ち悪くなってきた。俺は一旦ログアウトする。先に行っても良いからな」


 俺は言って吐き気を催してきたので、すぐさまログアウトする。


 ログアウトしてからトイレに直行し、俺はその日の朝食を全てリバースした。

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