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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第二章

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新フィールドへ

「えっ? お兄ちゃんってまだ新フィールドに行ってないの?」


 俺に聞かれたユイは驚いたように目をパチクリさせて聞き返してきた。……プレイヤーなら真っ先に新フィールドを見たいだろうからな。ユイもトップギルドの一つである《魔導学院》としてすでに新フィールドに出て新しい街を見てきたのだろう。


「そうなのよ。ギルドマスターが一人工房に籠って生産してるから皆と相談して皆で一緒に行こうってことにしてたの」


 ウィネがやれやれと肩を竦めて呆れていた。……確かにギルドマスターとしてはあるまじき行為だな。戦力と生産力共にトップギルドではないとしても有名なギルドとして新フィールドに出るべきだった。


「……それはすまなかった。装備を整えたらすぐに向かおう。アイテムを作ったのは良いが、俺が貰った報酬を装備していなかった」


 一言謝罪を入れて準備をするように言う。肌着装備を変える場合には自室に戻る形となる。俺も変えるので自室に戻る。……戻るとは言え何もないただの広い部屋なのだが。

 クーアはカタラに預けている。


 俺が手に入れた特別報酬の内、俺が使えるモノは十個。その中でスキルが三つ。と言うことはその他アイテムが七つと言うことになる。

 MVP報酬にある手袋は二つで一つだった。器用さや命中率が上がる効果があるため、装着しようと思う。黒い革手袋だ。

 襟のあるコート――と言ってもコートっぽいのは上だけで腰か尻辺りから下は尻尾のある種族を選んだプレイヤーのためか二つに分かれている。ボタンがついていないので前は開けっ放しと言うことになりそうだ。黒地に黄色いラインが縁などに入っている。長袖で薄いからか肩を回しにくいと言うこともない。横があるのは上だけで下は後ろの二つに分かれた部分のみとなっていて、特に動きが阻害されると言うこともなさそうだ。これもMVP報酬なので、かなり効果の高い。こんなにも薄いのに防御力が高いのだから、驚きだ。

 白い無地のシャツ。UCOにはファッショナブルな装備がないので無地もかなり多い。これはMVP報酬なので見た目に反して防御力が高い。しかもスキルつきの高性能装備だ。

 もう一つのMVP報酬はスキルだったので割愛。かなり良いスキルではある。

 紺のズボン。特別報酬なので見た目に反して防御力が高い。

 その他黒と青の靴、灰色の靴下、そして黒いホルスター。ゴム弾専用銃用のホルスターは別に俺が作成していたが、これがあれば楽だ。マガジン収納が大幅にアップする。

 ゴム弾銃のホルスターは他と違うように作らなければならないので面倒だ。


 装備を一新した俺は自室を出てリビングに下りる。両腰に四挺の拳銃を提げている。


「……おー。りょう、かっこいー」


 カタラに抱えられたクーアが目をキラキラさせて言う。どうやら起きたのか起こされたのかしたらしい。


「……そうか? 装備を一新したから若干戦闘に不安も残るが、性能が良いので問題ないだろう。全員揃ったな?」


 俺は言いつつ身体の具合を確かめ、メンバーを見渡して全員いることを確認する。


「……では、新フィールドに向かおう」


 俺は言って、メンバーを連れてギルドホームを出る。


「じゃあ私はこれで。またね、お兄ちゃん。じゃあね、クーアちゃん」


 プレゼントを受け取りに来たユイはもう用がないので退散するようだ。最後にクーアの頭を撫でて、ギルドホームから駆け足で去っていった。


「……じゃあねー」


 クーアはユイに向かって手を振って見送る。


 俺達はユイを見送った後、新フィールドへ向かうためにミラージの草原に来ていた。

 ミラージの草原を突っ切って進むと鉱山がありそこにはモンスターが掘った入り組んでいる洞窟がある。その先に森が広がっていて、森を抜けると次の街があるそうだ。

 ミラージ系モンスターが出現したところで俺かレヴィの射撃によって見つけられてからすぐに撃たれて倒されていく。正直言って面白くもないフィールドだ。薬草や虫や樹皮の採集をするくらいで。石のBB弾も作らなくなってしまったからな。他に新入りのプレイヤーがいれば別なのだが。俺が知っている銃使いは俺とレヴィとベストソロ賞を手に入れていたプレイヤーの三人だけだ。正直言って一万人いて《銃士(ガンナー)》らしきプレイヤーが三人だけと言うのは少なすぎる気がする。……俺の職業紹介はそんなにも《銃士(ガンナー)》への興味を失くすモノだったのだろうか。怖くてネットの評判は見ていないがユイの話では話題になっているそうだ。

 ……良いか悪いかは兎も角として。

 最近では俺の悪評が高まっているそうなので全く見たくないのだが。その酷さはギルドメンバーに心配されるくらいだ。


「……あの山か?」


 俺は最初のチュートリアルフィールドは兎も角として、最初にミラージの草原に来た時からある山を仰いで聞く。


「そうよ。鉱石が採れるから採掘しながら進みましょう」


 ウィネがクーアを抱えてよしよしぷにぷにと構いながら言う。……すっかりクーアの相手が板についたな。

 ……『調合』の時はクーアが飽きてしまったので違うメンバーの所にいるのだが。


「……そう言えばウィネ。『集中』の上位スキルはどれにした?」


 俺はウィネに気になったので聞いてみる。『集中』の上位は俺の『見切り』、カタラの『極限集中』が習得されている。他にもそのプレイヤーのスタイルが少し関係して様々な派生、上位スキルがあるそうだ。俺は『見切り』だけだったが、カタラは二つだったそうだ。


「『点視』って言うポイントが見極められるスキルよ。生産をやってる間のポイントが分かったり、採集ポイントが分かったりするスキルなの」


 それはかなり良い効果なのではないだろうか。要点や当たり、と言ったポイントを見極めるスキルのようだ。


「……かなり良いスキルだな。レアな鉱石が欲しい時はウィネが採掘ポイントを見つけて掘れば良いのではないか? 俺はただの魔石も欲しいから適当に発掘するが」


「……場所が悪いと石ころしか出てこないから気をつけて」


 クノが忠告してくる。……もう少し前なら大歓迎だったのだが、今ではもういらない。


「……俺の運なら問題ない。MVPも獲得したからな」


 俺は少し誇らしげに胸を張る。


「運だと思ってるんだ」


「……ただのバカ」


「運営に報告しないといけないかしら」


 リアナ、カタラ、リリスに呆れたようなことを言われる。……心外だな。まるで俺に自覚がないような言い草ではないか。何を自覚していないと思っているかは分からないが、俺がMVPになったのは運が良かったと言うことくらい俺も自覚している。

 リアナは呆れすぎたのか、敬語でなくなっていた。……そうまで言われることだろうか。


「……全く、心外だな。とりあえずこのまま進めば鉱山に着くのだな?」


 俺は少し眉を寄せて言い、気を取り直して目の前に迫った鉱山に向かう。


「……あっ」


 クノが思わずと言ったような声を上げる。


「シャウッ!」


 すると体長三メートルくらいのアルミラージが出現した。……ミラージの草原ボス、ボスミラージだな。俺は一度も対戦したことがないのだが。アルミラージがそのまま巨大化しただけではないか。それと何故今ボスが出現するのか。


『対戦人数九名。ボスバトルを開始します』


「……おかしい。全員が一回でも倒していれば出現しないで行けるハズ」


 クノが顎に手を当てて悩んでいた。


「私達はイベントが終わってから四つのフィールドのボスは倒しましたよ?」


 レヴィが言って首を傾げる。


「……俺だな」


 まさか俺だけだったとは。ミラージ系の雑魚は倒しているのだがボスはあまり素材が美味くないと言う情報をユイから貰ったため、戦っていないのだ。それが仇となった訳か。


「倒してないんですか?」


 セルフィが驚いたように言う。……倒していなくて悪かったな。


「……ああ。だからここは俺一人でやろう」


 俺は頷いて言い、二挺の拳銃を抜いて光を溜める。


「……『零距離射程(レンジ・ゼロ)』に次ぐ俺の必殺スキル『ツインバースト』を見せてやろう」


 俺は言って『クイック・チャージ』と『ツインバースト』の併用で素早く光を溜める。『クイック・チャージ』はレベル10毎に減る数は増えるのだが、1~10の間レベルの数だけチャージする時間を減らすスキルだ。そのためいくらか時間を短縮出来る。


「シャーッ!」


 ボスミラージは一歩前に出た俺に対して跳躍し跳びかかってくる。


「……『ツインバースト』」


 俺は『見切り』で読んだ軌道上に二挺の拳銃を伸ばす。言わなくても良いスキル名を呟きボスミラージの身体が銃口についた瞬間、引き鉄を同時に引いた。銃口から直径二メートルの波動のようなモノが放たれ、ボスミラージの下半身から上を消し飛ばした。


「……では行こうか」


 俺は銃をホルスターに戻してメンバーを振り返らずに言い、そのまま鉱山へ進んでいった。

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