第一回イベント結果発表
『それでは第一回イベントの、結果発表を行いたいと思います』
最初の街の中心にある噴水の真上に出現した巨大な美女のホログラムが言った。
戦いが終わったばかりだと言うのに、集まった約一万人のプレイヤー達は大歓声を上げた。……元気だな。俺はもう疲れたから休みたい気分なのだが。金も貯まったのでギルドホームを買ってのんびりゴロゴロしたい。クーアも俺の頭の上で足をパタパタさせている。
……あれ? テンションが上がっていないか?
『まずは海底都市アトランティスでのイベントボス討伐記録の表彰を行いたいと思います。最短時間討伐記録第一位、ギルド《魔導学院》様』
《魔導学院》はユイがギルドマスターを務めるギルドだ。ユイが集め、ユイが選別した魔法を使うプレイヤーだけを集めたギルドだ。中にはティアーノのような他の職業だが魔法を使うプレイヤーもいて、魔法による攻守補治全てが揃ったギルドとなっている。今現在で構成人数三十名を誇り、この結果によって更なる戦力となる見込みだ。
因みに最短記録を保持している理由だが、戦力はもちろんその作戦にも理由がある。
ユイがその作戦の要となったのだが、それは至って簡単な作戦だ。
『エロジジイネプチューンに、ロリコンと言う新たなジャンルを開拓させる』と言うモノだった。
言うのは簡単だが実行するのは難しい。それを実行して見せたのがユイであった。そのため今はロリコンエロジジイとなっている。……AIを魅了するとか我が妹ながら恐ろしいことだが、自分が囮になっている間にギルドチャットでエロジジイを囲むように指示し、一斉攻撃してそのまま押し切ったらしい。十分程度で倒している。
ランキングに入ったプレイヤー達は赤いスポットライトを当てられるようだ。
『第二位、ギルド《インフィニティ》様』
《インフィニティ》はジャンがギルドマスターを務めるギルドだ。最初のレイドボスバトルの時に見せた勇敢な姿と統率力を見込んでギルドに加入したいと言うプレイヤーが集まった。特に入団条件は設けていないが、生産職は少ない戦闘系ギルドとなっている。イベントのため人数は三十名としているが、イベントが終わった後は人数が増え、大人数のギルドとなる可能性が高い。
名前の由来は無限の可能性を秘めたゲームにおいて、無限の可能性を発揮するギルドにしようと言うことだ。
『第三位、ギルド《マッスル帝国》様』
《マッスル帝国》はゴリマッチョな男女が集まった脳筋ギルドで己の肉体で攻撃するのを信条としているギルドだ。見ているだけで暑苦しいギルドだが、その実力は折り紙つきだ。現に近接のみで三位の十五分と言う短時間でネプチューンを討伐している。……ボディビルダーのようではあるが巨乳の美女がいるからだと思われる。
『以降参加者には10000円と10000経験値が与えられます。上位三ギルドに関しては掲示板に表示されている通りの報酬が配られることになります』
美女はそう言って締める。……最短には入らなかったか。しかもUCOはランイングの三位までしか特別なアイテムを配らないらしい。少しケチだと思わないでもない。
『続いて少人数討伐ランキングです。第一位、《ラグナスフィア》リョウ様』
ソロで突破したのは俺だけだったようで、俺の名前が呼ばれる。
『続いて第二位の発表をしたいのですが、二人で攻略したプレイヤーが多いので同率とさせていただきます。なお、同率二位以下の報酬は通常通りとなります』
美女はそう前置きした。……そう言えば《ラグナスフィア》からも何ペアか二人でクリアしていたな。
『では一挙に発表したいと思います。同率二位、《ラグナスフィア》ウィネ様とティアーノ様。《ラグナスフィア》カタラ様とクノ様。《ラグナスフィア》リリス様と《魔導学院》ユイ様』
二位は六人いたのだが、その内五人が《ラグナスフィア》と言う、まさかの独占だった。しかも残る一人はユイだ。……リリスとユイのコンビか。エロジジイにとって最悪の組み合わせだな。魅了されすぎて頭がおかしくなっていたのではないだろうか。
『以降ギルドではない十名以下で討伐を達成されたプレイヤーの方々には10000円と10000経験値が配られることになります』
十名以下で挑んだプレイヤーにだけ報酬が与えられるらしい。よく見ていなかったので知らなかった。
『続いて天空城マチュピチュの結果を発表いたします』
天空城についてだが、俺達からは少人数討伐の同率三位の一つとしてレヴィ、リアナ、セルフィの三人がギリギリ入っていた。二人が二つだったので三位に入ることが出来た。三位は何十組かいたが三人も無事に表彰された。これで《ラグナスフィア》は全員表彰されたことになる。
『それでは先程の緊急イベントの結果発表をいたします。最も多くの巨人を倒したプレイヤー、最も活躍したプレイヤー、最も多くのプレイヤーを救ったプレイヤー、最も多くのプレイヤーを守ったプレイヤーのみに特別報酬を配布し、参加していただいたプレイヤーには20000円と巨人の素材三種と各スキルに1000経験値が与えられます』
最高四人のプレイヤーのみに特別報酬を与えるようだ。巨人討伐数が少ないプレイヤーでも素材を三種配布されるらしい。俺はかなり討伐した方だと思うので、素材がたくさん手に入って嬉しい。
『最多討伐プレイヤー、《ラグナスフィア》リョウ様。最多救済プレイヤー、《魔導学院》セドラス様。最多守護プレイヤー、《インフィニティ》ジャン様』
赤いスポットライトが一人ずつ照らしていく。……俺もだったのか。確かに《銃士》だから、頭を撃ち抜いて倒すのは簡単だ。
『そして最も活躍したプレイヤーの発表です。彼は最も多くの巨人を討伐し、最も多くの巨人を足止めし、巨人の群れのボスにトドメを刺しました。《ラグナスフィア》リョウ様です!』
美女は三方向からスポットライトで俺を照らす。……俺個人で三冠を達成してしまったのだが。
『それでは続いて、各ベスト賞とMVPを発表いたします』
美女は更に続ける。どうやら三位までと言う少ない数への特別報酬では不満もあるだろうと言うことで、ベスト賞とMVPなるモノもやるようだ。
『ベストプリティー賞、《ラグナスフィア》生産の妖精・クーアちゃん!』
ベストプリティー賞と言うモノに、何とクーアが選ばれていた。……クーアはプレイヤーではないのだが。
「……う?」
スポットライトに照らされ名前を呼ばれたクーアは俺の頭でキョトンとした顔をしていた。そんな姿も可愛かったりする。
『ベスト親分賞、《インフィニティ》ジャン様!』
次はジャンだ。ベスト親分賞なるモノを獲得していた。一番親分っぽいヤツが獲得出来る賞なのだろう。
『ベストソロ賞、ルイン様!』
ベストソロ賞と言う賞はルインと言うプレイヤーが獲得していた。スポットライトが当てられたので分かったが、メイド服を着て背中に狙撃銃を背負った美少女だった。獣人族〈犬〉のようだ。……おそらく意図していたかは知らないが、俺の援護をしてくれたプレイヤーだろう。
『ベストアイテム賞、《ラグナスフィア》ウィネ様!』
アイテムではウィネが選ばれていた。一番売れたアイテムを発明したプレイヤー、と言うことなのかもしれない。
『ベスト販売賞、《ラグナスフィア》様!』
最も多くのアイテムを販売したか、最も利益が多かったギルドなのだろう。……俺が《魔導学院》や《インフィニティ》に売りつけた大量のアイテムがこの結果を呼んだのかもしれない。
『ベスト小悪魔賞、《魔導学院》ユイ様!』
一番小悪魔なプレイヤーに与えられる賞は、ユイが獲得していた。……それはそうだろうな。
『ベストギャップ賞、《ラグナスフィア》ティアーノ様!』
何のギャップかは分からないが、兎に角ティアーノのギャップさがベストに選ばれていた。
『ベストギルド賞、《ラグナスフィア》様!』
ベストギルド賞と言うモノに《ラグナスフィア》が選ばれた。おそらく戦闘、生産などで満遍なく活躍しているからだろう。
他にも様々な特別賞が授与されていくが、多すぎて到底覚えられなかった。
『それでは賞二つとMVPの発表です。ベスト殺戮賞及びベスト工夫賞及びMVPは――』
美女が言って溜めると、ドラムロールが始まりスポットライト五つが一万人を行き来する。クーアが「……おー」と目を輝かせてそれを見ていた。……殺戮賞はいらないだろうな。嫌な称号だ。
『《ラグナスフィア》リョウ様です!』
そして俺に、五つのスポットライトが一斉に向けられる。……眩しいから止めて欲しいのだが。
「……りょう、すごい」
クーアが目を輝かせて俺の頬をペチペチと叩いてきた。喜んでくれたようで何よりだ。
『特別報酬は各プレイヤー、またはギルド所属している場合、ギルドに配布されます』
基本はギルドらしい。だから正式にメンバーとして登録されていないクーアも《ラグナスフィア》の一員、と言う風に発表したのだろう。クーアは手持ちのバッグも何もないからな。
『これから新フィールドが開放されます。皆様、まだまだ拡がるUCOの世界を、充分にお楽しみ下さい』
美女はそう言って、姿を消す。……ふむ。報酬は自動で配給されるそうだが、色々と注目を集めてしまっている。コミュ障の俺にこの状況はキツい。
「……逃げるぞ」
俺は言って、素早く屋根に上がると屋根の上を駆けてクエスト集会所に向かった。もちろん、ギルドホームを購入するためだ。




