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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第一章

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緊急イベント発生

 ネプチューンを倒したせいで俺の名はランキングに載ってしまい、少し注目を浴びてしまった。


『緊急イベント発生。ヴァランサ荒野より巨人の群れが進行中。至急プレイヤーは巨人の群れを討伐せよ』


 最初の街に戻ってきて早めの昼食を摂った俺は、そんな警報を聞いた。……このイベントの最終イベントかもしれない。俺も急行するとしよう。

 俺は駆け足で進むプレイヤー達の流れに逆らわず移動する。流れはヴァランサ荒野に向かっていて、フィールドに出ると巨人の影が見えた。……かなり大きいな。


「……あれが、巨人」


 近付いて巨人の姿をはっきりと視認し、誰かが呆然と呟いた。

 五メートル級が雑兵のように並び、十メートル級がその後ろに並び、三十メートル級が五体、五十メートル級が一体いた。……進○の巨人かよ。

 だがそれとは違い、服を着て武器を持っている。


 すでに戦闘が始まっていた。五メートル級の巨人に突っ込んでいき、攻撃している。どうやらHPと攻撃は高いが魔法と防御に関しては低いようだ。俊敏性もないように思える。なので前衛が凌ぎつつ後衛が遠距離攻撃で倒す、と言う戦闘方法が一般的だ。中には前衛にいながら攻撃をしているプレイヤーもいるのだが。……と言うかそれはウチのメンバーだった。

 なので俺はメンバーが横に並び、他と違って一対一で戦っているところに向かう。


「……レベル30もあれば一対一は可能か」


 俺はその後ろで呟く。すると戦いの最中だと言うのにメンバーがこちらを振り向いて驚いたような顔をしていた。


「リョウさん! あの、頭を撃ち抜けば倒せるので《銃士(ガンナー)》だと楽ですよ」


 レヴィは早速俺に言ってくれる。……人型だから頭を撃ち抜けば良いのか。それは良いことを聞いた。

 レヴィの装備は深海の機関銃だけだ。機関銃と言っても現実には有り得ないサイズと構造だろうが、銃口が五つある銃だ。拳銃よりも重いので両手で持って狙わないと反動で狙い通りの場所に当たらない。俺が持っている拳銃も重いのだが、ズッシリくる感じが良い。武器と言う感じがする。


「……そうか」


 俺はそれだけを言うと、両手に拳銃を構える。新しいマガジンに変えているので両方共二十発ずつ入っているハズだ。

 俺は駆け出す。誰も相手にしていないため進行を続けている巨人にだ。俺は真正面から駆けて突っ込んでいくと、持っていた斧で薙ぎ払いをされたのでタイミングを見計らって斧の柄に跳び乗って振り切ったところで腕を伝って肩まで駆け上がっていく。

 肩まで駆け上がると脚に力を込め、跳躍の動作に入る。それと同時並行で右側にある巨人の頭を右手の拳銃で撃ち抜いて倒し、すぐに跳躍。次の巨人に跳び移り頭を撃ち抜いてから次の巨人へ移動して――を繰り返してどんどん先に進んでいく。……一撃死と言うシステムがあって助かった。一回一回の攻撃力が他の職業に劣る《銃士(ガンナー)》であっても格上の相手を倒すことが出来る。


「……リョウ」


 するとクノが俺と同じようにしてついてきていた。頭を切り裂くか『投擲』で攻撃するかして巨人を倒している。


「……クノも来たのか。ではこのまま一番奥にいる最大の巨人を倒そうか」


 俺は言ってクノの方が速いため先行されるが、遅れずについていった。……俺はついでとばかりに『精密射撃』で途中の何体か巨人を倒しておく。


「……了解。でもどんどん大きく強くなっていく」


 クノは頷きつつ言った。……確かにな。五メートル級が最も多いとは言えこのペースならあともう少しで突破出来る。次は二倍もの大きさである十メートル級が相手になる。簡単に跳び移ることも出来ない。


「……仕方がない。五メートルは無視して十メートルを狙うぞ」


 俺は言って両手の銃を十メートル巨人数十体に向けると頭を狙って乱射する。……五も十もそこまで違わない。身に着けている装備が服から革鎧に変わった程度だ。武器も身体に合わせて大きくはなっているが、そこまで強くなった訳ではないように見える。


「……っ」


 俺達が五メートルを踏み台にするだけして無視し十メートル級巨人に突っ込もうとすると、俺の視界には視えていたのだが、銃弾が十メートル級巨人の頭を撃ち抜いて倒した。……誰だ? レヴィ、ではない。五メートル巨人との戦闘を行っているハズだ。と言うことは、別の《銃士(ガンナー)》なのか?

 俺は後ろをチラリと振り返って確認する。……赤い射線が真っ直ぐに伸びてきている。長いな。普通の拳銃ではない。と言うことは、狙撃銃か?


「……リョウ?」


 クノが銃弾で撃たれた巨人を見て俺に聞いてくる。


「……いや。おそらく俺とレヴィ以外の《銃士(ガンナー)》で、狙撃銃使いだ。援護があるなら心強い。構わず進むぞ」


 俺は言って十メートル巨人を銃で倒していく。……難易度はそう高くない。だが問題は足場だな。


「……」


 遂に、五メートル巨人の軍勢が途切れる。手前にいた十メートル級は倒しているのでそのまま落下することになるのだが。


「……脚を狙う」


 俺はクノにそれだけを告げて巨人達の足元を駆けていく。その際に膝を撃ち抜いて巨人を足止めする。そうすればほぼ密集して進行している巨人達は互いが邪魔になって俺達を攻撃するどころではなくなり、倒れる巨人達に注意をしていれば特にダメージを受けずに突破出来るのだ。もちろん、隙があれば巨人の頭を撃ち抜き倒してはいる。だが基本一番大きな巨人を倒すのが目的なので、雑魚は他のプレイヤーに任せても良い。

 だが大きくなると言うことはそれだけ撃ち抜いても耐えられるだけの太さを持った脚になっていくと言うことであり、銃弾一発では蚊に刺された程度にしか感じない巨人もいるかもしれない。


「……リョウ。多分もう少しで三十メートル級巨人の下まで行ける」


 クノは確実に倒すためか右手に逆手持ちした短剣でアキレス腱か膝を斬りつけ巨人を次々と倒しながら言う。……そうか。そろそろマガジンが切れる頃だな。

 と思っていると弾丸が切れた。なので俺は素早くマガジンを射出しホルスターにあるマガジンを斜め前方に軽く放る。そうすることで走りながらクルクルと回転するマガジンにタイミングを合わせてマガジンをセットする。だが入れるだけなのでその後自分の腰に打ちつけて完全にセット。これが一番早いことに気付いたのだ。


「……【ランス・ブレット】」


 仕方がないので放った銃弾を槍に変えて三十メートル巨人の太い脚を貫く。続け様にもう一発。両脚を貫かれた巨人は体勢を崩す。俺はその下がった眉間に【ソード・ブレット】を放って一体を倒す――ことは出来なかった。ボスの一個下と言うだけはあって、剣は眉間に突き刺さってはいるが一撃死には至らなかったようだ。不意打ちで殺しにきた俺に対して怒っているようで、右手に持った薙刀で攻撃してきた。突きだったので【ソード・ブレット】で相殺する。寸分違わず薙刀の刃に切っ先を当てれば相殺出来るからな。

 俺はもう一度【ソード・ブレット】を放ち同じ箇所に剣を放つ。刺さっている剣の柄に放った剣の先が当たって完全に貫ける。……完全に突き刺さっていたのに鍔のせいで貫けなかったらな。それに、三十メートルの巨人にとって剣は爪楊枝みたいなモノだ。そこまで効果はなかったようだ。


「重いっ!」


 自棄になったような声が聞こえ、俺のすぐ近くに三人のプレイヤーが落ちてくる。ティアーノ、カタラ、リアナの三人だ。運んだのは翼の生えているリリス。尻尾と両手で三人を運んできたらしい。疲れたのかフラフラと俺の方に降りてくると、背後から抱き着いてきた。


「……あ~。安らぎの位置だわ」


 リリスはギュッと抱き着いてきて言う。……そんなことは良いから早く離れて戦って欲しいのだが。


「……ではついでに飛んでくれ」


 俺は言って自分から跳躍する。


「えー。さっきの今で疲れてるんだけど」


 と言いつつもリリスは俺を抱えて飛翔する。……何故背後から抱き着く姿勢のままなのかは分からない。だがおかげで両腕が自由になって近づく敵を牽制出来る。ただ面倒だから、と言うことではないことを祈ろう。


「……一番大きいヤツに近付いてくれ」


 俺が言うとリリスは不承不承と言った風に高く飛翔して五十メートル級巨人へと向かっていく。……HPが七本もあることにツッコんだ方が良いのだろうか。


「……HPが多いな」


「その分防御に難があるから妥当だと思うけど」


 俺が呟くと運営側であるリリスが言った。……確かに他の巨人達と違って腰巻きに超巨大な大剣を両手に持っているのみだ。攻撃範囲は広く、高威力だと思われる。青い肌をしていると言うのも少し気になる。もしかしたら何か特別な能力を持っているのかもしれない。

 自分の身長もある大剣を構えた巨人の名はヘカトンケイル。顔のゴツい黒髭を生やしたおっさんの巨人だ。


「……『零距離射程(レンジ・ゼロ)』と『チャージ・ショット』で頭を吹き飛ばすか」


「出来るの? ほら、今も私達を狙って」


 俺が作戦を考えていると、リリスが言って大上段から振り下ろされた大剣を右に避ける。轟音が響き砂埃が舞い上がる。……仲間の三十メートル巨人を一体両断していた。どうやら仲間に攻撃出来るらしい。

 ……足止めが先決か。こいつがこのまま歩いていたら一歩の歩幅が広すぎて簡単に侵攻してしまうだろう。巨人達が邪魔になっている今がチャンスだ。


「……リリス。注意を引いてもらって良いか? 俺はこいつを倒す」


 俺は言って、リリスに放すように言う。


「じゃあ、お手並み拝見といくわ」


 リリスは落下する俺に言ってヘカトンケイルに真っ向から突っ込んでいく。……空中戦が出来るプレイヤーは鳥人族か蟲人族(ちゅうじんぞく)で翅のあるヤツかリリスしかいないのだ。頼んだぞ。

 運営はプレイヤーの行動を監視出来るとは言え、一万人もいれば漏れが出る。そのための監視として、元々《ラグナスフィア》に入った訳だからな。俺の手並みを見るのも、その任務の一つだ。


「……」


 俺は早速右手の拳銃をチャージし始める。落下する間も左の拳銃でヘカトンケイルを地味に攻撃するが、HPはあまり変化がないように見える。……と言うかHPの位置が高い。首が痛くなりそうだ。

 六十メートルもの高さから飛び下りたせいで上手く膝を使って衝撃を吸収したとは言えHPが大幅に減ってしまった。俺はすぐにHP回復薬・中を取り出しHPを回復させる。ヘカトンケイルの注意は完全にリリスに移っている。魅了効果もあってリリスはオスモンスターの注意を引きやすいのだ。巨体なので大剣を振る速度は遅く、リリスはヘカトンケイルを翻弄しながら色気を振り撒き注意を完全に自分に向けさせている。……流石に元ボスモンスターと言うだけはある。


 なので俺はその間、地味に『零距離射程(レンジ・ゼロ)』を放ってダメージを加えていく。……新しくなった武器で『零距離射程(レンジ・ゼロ)』を放っていると言うのにほとんどHPが減らない。大人数で狩れと言うだけはあるようだ。

 だが俺の攻撃でヘカトンケイルの足首は削られ、遂に足首を吹き飛ばす。……頑丈だったので想定より多く使ったが、無事体勢を崩すことに成功した。

 片足を失ったヘカトンケイルはバランスを崩し、横倒れになる。だがこれはただの時間稼ぎにしかならない。なので俺は素早くヘカトンケイルの身体を駆けていく。起き上がる前に右手の銃で首を吹き飛ばしてやる。……だが念のため、左手の銃をチャージを始める。


「美味しいとこばっかり持ってかないで下さい!」


 ヘカトンケイルはすぐに起き上がろうとするのだが、急行してくれたリアナの拳によって顔面を殴られ怯む。


「……焼き斬る。【灼熱斬り】」


 カタラが灼熱を纏わせた小太刀でヘカトンケイルの左手首を斬り落とす。


「私にも出番があって良いんじゃない? 【デモンズ・クロー】」


 リリスが少し不満そうに言いながら両手の爪を長く伸ばしてヘカトンケイルの右足を地面に縫いつける。


「……決めなさい」


 それでも起き上がろうと地面に右手を着いたヘカトンケイルだったが、そこはすでにティアーノによって凍らされていた。見事に滑って再び倒れる。

 そこに一つの銃弾が飛んできて、ヘカトンケイルの右目を正確に撃ち抜いた。……またあの狙撃だ。


「……ここまでお膳立てされて倒せなかったら、恥ずかしいな」


 俺は内心で苦笑しつつヘカトンケイルの身体を駆け上がり、遂に首元まで辿り着くと溜まり切った両手の拳銃をヘカトンケイルの頭に突きつけ、同時に放つ。すると轟音が響いて波動のようなモノが拳銃から放たれ、ヘカトンケイルの頭を吹き飛ばした。……何だ?


 俺は何が起こったのかを疑問に思ったのだが、とりあえずそれは置いておいて巨人の残党狩りをしなければならない。


 その三十分後、巨人達は駆逐され、人々の街に平穏が訪れた。すると全員の身体が光に包まれ、最初の街へと転移した。おそらく、イベントの結果発表をするのだろう。イベントは今日の正午までを予定されていて、急遽巨人討伐のイベントが始まった。これが本当の終わりだと言うことらしい。

 《ラグナスフィア》の面々は一ヶ所に集められていた。


 結果発表が始まるのか、巨大な美女のホログラムが噴水の真上に登場する。

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