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Universe Create Online  作者: 星長晶人
第一章

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第一回イベント最終日

 遂に、イベント最終日となった。


 《ラグナスフィア》の売り上げは良く、大黒字となっている。今日も渚のビーチ、海底都市アトランティス、天空城マチュピチュで売り子三人がアイテムを売るのだが、『調合』をするメンバーは日夜働いているためクタクタだ。イベント後はギルドホームを買って休息出来るようにしてやろう。

 イベント最終日になると次の街が二つ開放される。開放と言っても最初の街からゲートと言う転移システムを使って街だけを開放し、フィールドは開放しないのだが。

 だが《銃士(ガンナー)》にとってこれ程嬉しいことはない。


 何と、ハンドガンが手に入るのだ。もちろん銃弾も手に入る。


 これにはレヴィも小躍りした。俺も内心で小躍りした。レヴィはやっと深海の機関銃が使えると滅茶苦茶喜んでいた。俺もこれでやっと実際の銃が装備出来ると喜んだものだ。

 だがゴム弾を撃つのは厳しくなってしまった。ゴムで銃弾の型を作らなければならない。と言うか、銃弾型では跳ね方がおかしい。スキルのおかげで跳ぶには跳ぶのだが、先端に当たるのと後ろの部分や側面に当たるのでは威力が異なりそうで怖い。ゴム弾専用の銃を開発するべきなのかもしれない。丸いゴム弾を放てる銃などだな。『跳弾』と言うスキルのがあるので開発出来るかもしれない。トリガー部分に銃の仕組みを使い、銃口やマガジンなどに工夫を加えれば作れないこともない。……今は銃を作ることさえ出来ないのだが。


 因みにこのハンドガンは自動装填出来るタイプなので二挺拳銃も出来る。『銃術』がレベル50となりMAXになったので現れた上位スキル『双銃術』を習得した。『機関銃術』、『狙撃銃術』、『散弾銃術』、『小銃術』、『擲弾銃術』などがあったのだが、俺は二挺拳銃を目指していると言った手前、二挺拳銃を習得した。……『機関銃』は『銃術』がなくても習得出来るが、『機関銃術』は機関銃を扱うためのアビリティが多い。『機関銃』は機関銃を使う補正の多いスキルではあるが、アビリティはない。『剣技』と『剣術』の違いは俺にはよく分からないのだが、最初のアビリティが【スラッシュ】か【袈裟斬り】かの違い、つまり片仮名か平仮名または漢字かの違いと言うことだ。

 ……やっていることにあまり違いはないのだが。


 職業も《銃士(ガンナー)》から変わり、《双銃士(ツインガンナー)》となっている。《銃士(ガンナー)》はレベル30でMAXとなった。


 《ラグナスフィア》の売り上げは右肩上がりに上がっていた。それは『調合』に飽きて俺の方に来てゴロゴロしていたモコモコクーアの効果もあるだろう。モコモコした子供がゴロゴロしている姿に興味を示したり可愛いと思ったりしたプレイヤーが集まってきてそのまま購入――と言う流れになったことも一度ではない。

 クーアは契約者である俺とカタラの下を自由に行き来出来るので、ウィネの下から俺の下まで転移してきたと言う訳だ。


 俺は海底都市に来ていた。


 もちろん一人で、クーアもいない。レイドボスの時はあまり手を出さないでチビチビと参加していた。それは、弾丸節約のためである。新しい弾丸に変わったので大量購入したが、イベントボスである海神ネプチューンの思念体ともなるとソロで攻略するのは厳しいかもしれない。二人でボスを攻略したプレイヤーがいたので(ウィネとティアーノの二人なのだが)、俺がソロで突破すれば一位に躍り出ることになる。新人三人も何とか(時間は倍以上もかかったのだが)クリアしたのでギルドマスターとして俺が上にいて威厳を見せるべきだと思ってのことだ。クノやカタラも先輩の威厳を見せようとユイを誘って挑んでクリアしているので、俺がクリアしない訳にはいかないだろう。

 新規プレイヤー限定の経験値三倍も手伝って、三人のレベルはどんどん上がっている。追いつくとまでは言わなくとも、足を引っ張ると言うことはないだろう。


「……」


 一人一回自由時間を作りイベントダンジョンに挑めるのだが、それを誰かと共闘して使ったのだ。俺は今まで使っていないので、一人でボスに挑むことにする。

 俺は道順を暗記しているのでダッシュで迷路を突っ切っていく。モンスターが出現しても新しい銃を手に入れた俺の敵ではない。すれ違い様に頭を撃ち抜けばそれで終わりだ。動きは鈍くなっているが、俺もレベルが上がった。しかも装備も強化した。海底都市に挑むため速度が上昇する装備を中心に身に着けている。


「……」


 俺はあっと言う間にボスのいる広場に到着する。


『……また貴様か。貴様の女子(おなご)は流石に良いモノを持っておったな』


 前回戦ったことが記憶にあるのか、エロジジイはややうんざりとした表情でそう言った。……もしかしたら二回目に来たメンバーのことを言っているのかもしれない。


「……そうか」


 俺はそう言うと、全力疾走で正面から突っ込んでいく。両手に二挺の銃を携え、駆けていく。


「……【ショット】」


 俺は『早撃ち』で【ショット】を放つ。左手の銃でだ。右手の銃は開始早々から『チャージ・ショット』を使うため光を溜めている。


『甘いわ!』


 だがもちろん威力の上がった銃弾とは言え水中では威力が下がるのであっさり三叉の矛に弾かれる。……これで良い。俺の狙いは最初から接近し、岩塊を破壊した後にコアを攻撃し続けること。他の部位に当たっても《銃士(ガンナー)》の攻撃力では大したダメージにはならない。


『させるか!』


 だが一度戦った記憶があると言うことは、俺がそれを狙うこともネプチューンは分かっているのだろう。近付けまいと三叉の矛を縦横無尽に振るって俺を狙ってくる。だが水中とは言え俺を攻撃することは出来ない。『集中』の上位スキルである『見切り』のスキルを手に入れたので相手のモーションから攻撃の軌道が読めるようになったのだ。つまり相手が攻撃してくる軌道が読める俺は予め避けれる場所に移動しながら突っ込んでいるため当たることはない。今の俺に攻撃を当てるなら、攻撃の軌道を無理矢理変えるか攻撃の軌道が読めても避けられない程に攻撃するかのどちらかしかない。


「……」


 俺はそうして素早くネプチューンの懐に入ると左手で『零距離射程(レンジ・ゼロ)』を三連続で使い、岩塊をあっさり破壊する。


『ぐぬっ!』


 開始早々に弱点を丸出しにされたネプチューンは後退するが、俺はその行動も読めていたので『早撃ち』と『精密射撃』でコアを撃つ。


『ぐっ! き、貴様ぁ!』


 銃弾は見事にコアに当たりネプチューンの五本もあるHPが目に見えて減る。ネプチューンは呻くと俺を睨みつけ、三叉の矛を突き出してくる。


「……【ソード・ブレット】」


 ボス戦では初使用である、『変幻弾丸(プロティン・ブレット)』の一つ。弾丸を剣に変えて放つアビリティだ。俺はそれを十発放ち、十本の足に漏れなく命中させる。更に足に突き刺さった剣の柄に銃弾を放ち剣をもっと突き刺して足を両断する。


『ぐっ! 足を切られたぐらいで、このネプチューン、倒れたりはせぬぞ!』


 ネプチューンは最初と違って身軽になったからか、俺に突っ込んでくる。……そちらから来てくれるとは有り難い。


 俺は内側の吸盤についたコアを狙うため、自らネプチューンに突っ込んでいく。


『させるか!』


 ネプチューンは三叉の矛で俺を狙ってくるが、俺は銃弾一発で軽く軌道をズラすと容易に懐に入っていく。


「……くらえ」


 俺は充分に溜め終わった状態で、右手の銃を『零距離射程(レンジ・ゼロ)』と【チャージLv7】の併用でコアに放った。


『ぐおおおぉぉぉぉぉぉぉ!』


 ネプチューンのHPは大きく減少する。HPの本数が多いからと言ってHPが高いと言う訳ではない。ボスにもHP一本の数値に個人差があるらしいので、サキュバスよりは高いが二倍以上あると言う訳ではないらしい。その点を考えると素早さがあり状態異常にもしてくるサキュバスの方が厄介だと考えるプレイヤーは多い。一本はすでに真っ白になったので、二挺の銃口をコアに突きつけて『零距離射程(レンジ・ゼロ)』を放つ。『双銃術』の効果で二挺の銃を同時に使用すると威力が上がる。ネプチューンが魔法を放とうとしてきても『魔法破壊射撃スペルブレイク・ショット』で防ぎ下に留まってコアを攻撃し続ける。するとあっさりとネプチューンのHPが三割を切った。


『許さん! 許さんぞおおおぉぉぉぉぉ!!!』


 ネプチューンは俺の届かない位置まで上昇すると憤怒の表情で言い、赤いオーラを纏う。……これが噂に聞く憤怒状態のネプチューンか。赤いオーラを全身に纏い、豊かな髭や髪が逆立つ。最初の時はエロジジイのネプチューンを倒したためこれを見ることはなかった。


「……やっとか。これを倒さなければお前を倒したとは言えない」


 俺は呟く。ネプチューンを選んだ理由の一つがこれだったりする。これを見て、倒す。そうすれば俺はちゃんとこいつを倒したと、胸を張って言える。


『ぬかせ! 【オーシャン・トルネード】!』


 ネプチューンは憤怒の形相で言うと、三叉の矛に超巨大な渦を纏わせた。……全ステータス上昇と全アビリティの威力、効果の上昇があるのだったな。


「……それは受けたくないな」


 俺は言って、広範囲大ダメージ攻撃である【オーシャン・トルネード】を回避するために、動き出す。……『見切り』で攻撃範囲は見えているが、無理だろう。ならばネプチューンを怯ませて攻撃を中断させるしかない。

 と言うことで、俺は執拗にネプチューンの目を狙う。……渦のせいで軌道が変えられるが、『射線表示』を持っている俺には変えられた射線さえも視えていた。なので五発目で見事に両目共を捉える。


『ぐおっ!』


 両目を潰されたネプチューンは流石に攻撃を中断せざるを得なくなり、その間に俺はコアの下へ向かう。駆ける間もチャージし、【チャージLv1】で二つの銃口をつけ、『零距離射程(レンジ・ゼロ)』を放つ。更に攻撃を止めず、着地しては両手で『零距離射程(レンジ・ゼロ)』を繰り返し、何度か魔法を受けてしまったが無事、ネプチューン討伐に成功する。

 ……三十分ぐらいなので最速には及ばないが、最少人数では確実に一位を獲得出来ただろう。


「……ギリギリだな」


 俺はレッドゾーン数ドットのHPを見てそう呟き、出現した一つの宝箱を開ける。すると中には『筒作成』と『銃部品作成』スキルの書が入っていた。……おぉ、これは物凄いレアなモノを手に入れてしまったぞ。

 俺は内心で歓喜した。


 俺は満足し、イベント最終日早々のイベントボス討伐から帰還した。

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