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天気晴朗ナレドモ水ノ月  作者: 伏見 七尾
五.振りさけみれば
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十二.

「ハッ、失礼ね。この朝日をこんなヒヨコなんかと一緒にしないで。――さて、もう休憩は十分ね。今からこれからの話をするわよ」

 朝日は急に表情を切り替えると、壁から背を離した。

 スワロフがびっくりしたように、部屋の中を横切る朝日を見つめた。

「……な、何?」

「切り替えが早い人なんだ……しょっちゅう言動が変わるせいでついて行けない」

 三笠は呆れつつも、心が弾むような気持ちを感じていた。

 朝日は振り返ると、軽く手を広げた。

「正直、ここから抜け出すのは難儀だわ。霊糸で何重にも結界が織り上げられてて、内側から誰も出られないようになってるみたい」

「外はどうなっている?」

 三笠は朝日が入ってきたドアの方を指さす。

 朝日は肩をすくめた。

「この部屋の外も似たようなモノよ。外には小さな部屋がいくつかある。元々の設備を改修したんでしょうね。ただ出入り口は封鎖されてる」

「外にも糸の結界が?」

「そうよ。この地下のフロア全部が封じられてる」

「地下を覆い尽くす結界……? あの軟弱なマキナに、そんな事が?」

 スワロフが目を見開く。

 朝日は壁に手をつくと、不機嫌そうな視線をスワロフに向けた。

「いい加減認識を改めなさいな、バルチックの隊長さん。あんたが軟弱と呼んでる相手はね、あたし達とは別格の存在なの」

「別格、ね……」

 スワロフが苦々しい表情で朝日を睨んだ。

「そっ。弩級はすぐに超弩級に追い抜かされて、忘れ去られてしまったけど……それでも、マキナに革新をもたらした存在であることには違いないわ」

「忘れ去られたマキナ……」

 栄誉とかなんにもないもの――悔しげに言った河内の姿が、脳裏をよぎった。

 考え込む三笠をよそに、朝日は腕時計を確認する。

「もうじき夕方になる。邪魔なあんた達をここに閉じ込めたと言うことは……河内の奴、今夜必ず何かやらかすわ」

「ならとっとと出ましょう。霊気で攻撃すれば結界だって破れるはずよ」

「……お好きにどうぞ」

 朝日は何故か微妙な表情でうなずいた。

「言われなくとも――魄炉、起動!」

 昂ぶる霊気に青い瞳が輝かせ、スワロフは頭上に掌を振り上げる。

 瞬間、ミシミシと音を立てて床から氷柱が伸び上がった。鋭く煌めくそれは槍の如き勢いで、天井めがけて突き上がった。


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