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天気晴朗ナレドモ水ノ月  作者: 伏見 七尾
五.振りさけみれば
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六.

「んーと、それなんだけど……なんかちょっと厄介な場所にいるみたいなの」

「厄介な場所?」

 首をひねる三笠に対し、河内はぶるっと震えてみせた。

「浅草の下町近く。【大襲来】の時、地震で壊滅しちゃったとこ」

「……確か、未だに妖魔が出るんだったな」

【大襲来】の際、神州では巨大な地震が起こった。その影響でかつて神州一繁華だった下町は壊滅し、遊郭街は火炎に包まれた。

 今はほとんど復興しているが、それでもあの近辺は時折妖魔が現れるらしい。

「それだけじゃないよ。あそこらへんかなり治安悪いの。ホント怖いんだから」

「警察の連中も苦労しているらしいな」

「そ。だから、先輩についてきてほしいんだけど……」

 河内の声は徐々に細くなり、消えた。

 腕組みをして考え込んでいた三笠はぴくりと眉を動かす。

「私に、か?」

「そう! 今は香取の捜索に人員割いてるし……元々霊軍の警邏隊って人員あんまり足りてないの。今の状況だと、私だけであそこに行くことになるかも……」

 河内がすがるような目で見つめてくる。

 三笠はその捨てられた子犬のような様子に、ふっと笑みを浮かべた。

「……わかった。出よう」

「ほんと!」

「元々居場所がわかり次第出るつもりだった――待っていろ、準備をしてくる」

 はしゃぐ河内を背に、三笠は家の中に戻った。

 居間に入ると、ちゃぶ台を睨み付けていたスワロフがぎろりと視線を向けてくる。

「何事?」

「朝日姉さんの居場所がわかった。お前も来るか?」

「……フン、仕方がないわね」

 スワロフはゆっくりと立ち上がり、近くの壁に立てかけていたサーベルを取った。

 三笠はシャツを脱ぎ捨て、旧軍服に袖を通した。

 ふと、右手の薬指に嵌めた銀の指輪が目に入った。初瀬から与えられたお守りだ。

「……今が動くべき時、なのか? 初瀬姉さん」


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