五.
「大丈夫なら良いけど……それより大事なお話だよ。すっごいことがわかっちゃった」
「すごいこと?」
「うん、朝日さんの居場所」
「何……?」
頭痛など一気に吹き飛んでしまった。
三笠が鋭いまなざしを向けると、河内はびくりと首をすくめる。
「こ、怖い顔しないでよ! びっくりしちゃった……」
「す、すまない。――ところでその話、確かなのか」
「確かだよ! 私すっごく調べたんだからね! 研究所走り回ったりしてさ!」
「ふむ……」
思い返せば、河内が霊軍研究所を調べていると香取も言っていた。
そこで三笠は香取の姿が見えないことに気づいた。
「そういえば香取はどうした? 非番か?」
「香取ぃ? うーん……」
河内はそこで困った顔になり、髪の紫色に染めた部分をいじった。
その反応に三笠は眉を寄せる。
「何かあったのか?」
「それが……香取、今日仕事に来てないの」
「何?」
「非番でもないのにさ。信じらんないよ」
「……香取が、無断欠勤?」
三笠の胸の中には違和感が燻っていた。
いつも無気力で、何をするにも億劫そうな香取。だが彼女はどれだけ面倒がっていても、職務を放棄することはなかった。
いてもいなくても――寂しげに笑う香取の姿が頭をよぎり、三笠は首を振った。
「連絡は取れないのか?」
「全然。今朝から部下に行方を捜させてる。多分すぐ見つかると思うけど」
「だが……」
「――っとと、忘れてた。それで朝日さんの話だけどさ」
なおもたずねようとする三笠に対し、河内がぽんと手を叩く。
正直香取のことが気になって仕方がなかったが、朝日の行方も重大な事柄だ。三笠は言葉を呑み込み、たずねた。
「朝日姉さんは、どこにいる?」




