表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天気晴朗ナレドモ水ノ月  作者: 伏見 七尾
四.二人のインペラートル
55/114

十二.

「……お前と私は違う。無理に比較する必要はない」

「そうは考えてくれない人もいるんですよ。あたしは先輩に比べれば、いてもいなくてもどっちでも良い存在なんです」

「お、おい……」

「っと、時間食っちまった。あたしらは警邏に戻ります」

 香取はきびすを返した。その後ろから、慌てて二人の部下がついて行く。

 三笠はとっさにその背中に呼びかけた。

「香取!」

 香取は立ち止まり、三笠に視線を向けた。

 なにを言えばいい? 逡巡しつつ、ぎこちなく口を開いた。

「お前は、かけがえのない存在だ。だからそう……自分を、投げるんじゃない」

 香取はぴくりと眉を動かした。

 しかしすぐに軍帽を目深に被ると、三笠に背を向ける。

 三笠はやや苦々しい表情を浮かべ、足早に去っていく香取の姿を見つめた。

「……もっと、うまく言えたはずだ」

「そうね。でも、今更悔やんでも仕方が無いじゃない。それよりキサマ、さっきはよくもワタシの脇腹に肘を――!」

 スワロフがぎりりと歯を噛み、睨み付けてくる。

 三笠は額を押さえた。

「ここでお前がバルチックの総隊長だと明かしたら、よけいに香取が怪しがるだろう」

「ぐっ……しかし……」

「下手をすれば連邦に送還されるぞ。――それは、困るんじゃないか?」

 三笠の言葉に、スワロフは沈黙した。

 連邦――スヴェート血盟連邦。アリョール帝国崩壊後、革命派により建てられた国だ。建国より半年が経った今も、かつての帝制派を執拗に追っている。

「だから下手にバルチックの名前を出さない方が良い。わかるな?」

「……えぇ」

 スワロフは仏頂面で、銀髪をいじくる。

 三笠は「よし」とうなずくと、鳥居の方に向かって歩きだした。

「私達も帰ろう。妖魔に対する警戒を怠らないようにな」

「――ねぇ、聞きたいことがあるのだけど」

「ボーリグラートの事は答えない」

 振り返らずに即答すると、背後でスワロフが舌打ちした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ