十一.
「香取?」
「……あたしら香取型は、先輩ら敷島型の後継。特にあたしは先輩の魄炉を発展させたものを使ってる。ここまでは知ってますね?」
「あ、あぁ……」
香取と三笠の魄炉は似ているらしい。
どちらも本居博士が、マキナの本場であるアングリア連合王国で作られた魄炉に大幅な改良を加えることで作り出されたものだという。
しかし、それが一体どうしたのか。戸惑う三笠に対し、香取はため息をついた。
「色々重いんですよ。ポスト三笠、とか言われちゃってさ」
「……周囲の期待か」
ようやく香取がなにを言いたいのか理解できた。
自分の鈍さに若干苛立つ三笠に対し、香取はうなずいた。
「えぇ。みんな勝手にあたしに期待して、勝手に失望していくんです」
「そんな……大尉殿は、立派な方です!」
警邏兵の男が大きく首を振った。
しかし香取は微かに笑って、肩をすくめてみせる。
「ありがとね。……でも、あたしじゃ先輩には追いつけっこない」
「香取……そんなことはない」
三笠は香取の両肩に手を置くと、暗い色の瞳をしっかりと見つめて言った。
「お前は前弩級分離の時も、軍に残されたじゃないか」
「大した理由じゃありませんよ。製造時期が他よりも若干新しめだったのと、たまたま軍式鬼道が得意だったから残る事を許されたんです」
香取は三笠の手をそっとどけつつ、どこか悲しげに笑う。
三笠は一瞬口をつぐんだ。退役を望んだにもかかわらず、彼女は軍側の強い要望によって予備役として残された。
だが、香取は――。




