表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天気晴朗ナレドモ水ノ月  作者: 伏見 七尾
四.二人のインペラートル
48/114

五.

 背後にスワロフの視線を感じる。しかし一切振り返らないまま、自室へ戻った。)

 ランプをつけ、姿見を覗いてみる。

「やれやれ……ずいぶん、好き勝手にやってくれたものだな」

 三笠はため息をついた。

 雪のような肌の上には無数の爪痕が刻まれ、赤い血を薄くにじませていた。三笠はその上に軽く指を滑らせ、そのきりきりとした痛みに顔をしかめた。

 明日の朝には全て癒える傷だ。

 だがその痛みは肌に留まらず、胸の奥深くにまで染み込んできているような気がした。

 ため息をつき、三笠は布団の上に転がる。

 天井を見上げていると、先ほどのスワロフの言葉が脳裏に蘇ってきた。

――キサマはワタシの標だったのよ……。

「――何故」

 主を失い、バルチックという支柱を失い、スワロフは自分自身のことで精一杯なはず。

 三笠を憎み続けていれば、気が楽だろうに。

 まっすぐに睨んでくる潤んだ瞳を思い出し、三笠は顔を覆った。

「どうして、私なんかを追いかけるんだ……?」

 弱々しい問いかけは誰にも答えられることはなく、薄闇の中に溶けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ