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天気晴朗ナレドモ水ノ月  作者: 伏見 七尾
参.死人に口無し
32/114

十三.

 呆れた顔で、敷島がその背中を見送る。

「……台風みたいな奴だな」

「いつものことだろう。――それより万魔の剣、どう思う?」

 三笠が問うと、敷島は大きく首を振った。

「朝日はそんなことする奴じゃねぇ……お前も知ってるだろ?」

「あぁ……しかし、何か関係がありそうだ」

『小柄な女』――実際、朝日はわりかし小柄な方だ。

 三笠はふとスワロフに視線を向けた。

 スワロフはぐっと眉間に皺を寄せ、河内と香取の背中を睨み付けている。

 機巧妖魔を連れたアリョール人が結界楼を襲ったという香取の話。そして、先日スワロフと出会ったときに神社で見た光景。

「……機巧妖魔を連れたアリョール人。心当たりはあるか?」

「――ッ!」

 スワロフは大きく目を見開いて、三笠を見た。

 戸惑うように視線をあたりにさまよわせ、淡いピンク色の唇を何度か開く。

 そして、スワロフはうつむいた。

「……キサマに言う義理は、ないわ」

「そうか」

『知らない』ではなく『言う義理はない』。恐らくスワロフは覚えがあるのだろう。

 三笠は目を細め、結界楼を見上げた。

 目にも鮮やかな朱色の楼閣は、静かに青空に向かってそびえている。

「……話がこじれてきたな」


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