十三.
呆れた顔で、敷島がその背中を見送る。
「……台風みたいな奴だな」
「いつものことだろう。――それより万魔の剣、どう思う?」
三笠が問うと、敷島は大きく首を振った。
「朝日はそんなことする奴じゃねぇ……お前も知ってるだろ?」
「あぁ……しかし、何か関係がありそうだ」
『小柄な女』――実際、朝日はわりかし小柄な方だ。
三笠はふとスワロフに視線を向けた。
スワロフはぐっと眉間に皺を寄せ、河内と香取の背中を睨み付けている。
機巧妖魔を連れたアリョール人が結界楼を襲ったという香取の話。そして、先日スワロフと出会ったときに神社で見た光景。
「……機巧妖魔を連れたアリョール人。心当たりはあるか?」
「――ッ!」
スワロフは大きく目を見開いて、三笠を見た。
戸惑うように視線をあたりにさまよわせ、淡いピンク色の唇を何度か開く。
そして、スワロフはうつむいた。
「……キサマに言う義理は、ないわ」
「そうか」
『知らない』ではなく『言う義理はない』。恐らくスワロフは覚えがあるのだろう。
三笠は目を細め、結界楼を見上げた。
目にも鮮やかな朱色の楼閣は、静かに青空に向かってそびえている。
「……話がこじれてきたな」




