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天気晴朗ナレドモ水ノ月  作者: 伏見 七尾
弐.凍土の獣と炎の拳
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五.

 しばらくして、三笠は小さな土鍋を載せた盆を手にスワロフの部屋に戻った。

 横たわったスワロフが、青い瞳を細める。

「……それは何?」

「玉子雑炊だ。神州での病人食と思ってくれていい」

 三笠は慎重に布団の側に座ると、盆を置いた。猛獣の餌やりをしている気分だった。

 スワロフはゆっくりと身を起こした。

 険しいまなざしで三笠と、目の前に置かれた土鍋とを見比べる。

「そうか、毒ね! さすがは神州人、卑劣なまねをするわ!」

「……そんなわけがないだろう」

 若干イラッとしてきたが、三笠は平静を装った。

 スワロフはじっと三笠を睨んでいたが、やがてふいっと視線をそらした。

「……ふん、とりあえずいただくとするわ」

「安心して遠慮無く食え」

 静かにさじを取り、スワロフは雑炊を口に運ぶ。上品な食べ方だった。

「どうだ?」

「味が薄いわ」

「病人にそんなくどいもの食わせられるか。がまんしろ」

「ヴォトカはないの?」

「ない。私は下戸だ」

 ぴたりとスワロフが動きを止め、探るように三笠を見た。

「それはつまり、キサマの弱点と言うことね?」

「まぁ、そういえるな。飲んだらすぐに酔ってしまうんだ。飲めないわけじゃないが」

「フ、これでバルチックはまた勝利に近づいたわ」

「……そうか、よかったな」

 勝ち誇ったように笑うスワロフ。

 対して、三笠はもう答えることが面倒くさくなってきていた。

 しかしふと、あることを思い出した。


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