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種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売


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第34話 キャンプしようと思っただけなのに、家とオートマタを手に入れてしまう

 これで王都イストファンともお別れか。長いようで短い生活だったな。

 俺は街並みを見つめながら感慨かんがいにふける。


 俺を見送りに来る奇特な奴なんていないよな。

 さよなら王都。


「レインさぁ~ん!」


 街に背を向けた時だった。俺を呼ぶ声が聞こえてきた。


「レインさぁん! 待って~!」


 あれは、ギルド受付嬢のサーシャさん。と、荒くれ者ども。

 そこには息を切らせながら走るサーシャさんと、ザークやガランなどお馴染みの面々の姿があった。


「レインさん、黙って行っちゃわないでください!」

「そうですよ」

「水くさいですぜ」


 皆が俺との別れを惜しんでいるだと!

 前世では邪魔者扱いされたり、社会から存在しない者のように扱われてきたのに。

 この世界でも悪役貴族として疎まれてきたのに。

 まさか俺を見送りに来てくれる人がいたなんて。


「サーシャさん……」

「レインさん、私も連れて行ってください!」

「えっ?」


 サーシャさんが俺の手を取った。


「あの、サーシャさんはギルド受付嬢の仕事がありますよね」

「レインさんと一緒なら、仕事を辞めてついて行きますよ」

「それはマズいでしょ」

「私、ギルド職員の資格を持ってますから。きっと役に立つと思うんです」


 えっ、本気で一緒に行く気なのか?

 俺なんかと一緒に行っても、苦労するだけなのに。


「ちょっと待ってください」

「待てません!」

「わ、分かりました。じゃあ手紙を出します」

「手紙?」


 サーシャさんが首をかしげた。


「まだ行く場所も決まってないんですよ。定住先が決まってからでも遅くはないですよね」

「それでしたら……」


 何とかサーシャさんが納得してくれた。

 行く当てもないのに、仕事を辞められたら責任重大だからな。


「では、そういう訳で」


 俺が背中を向けると、今度は何やら凄い勢いの足音が聞こえてきた。


 ズダダダダダダダダダダダダダダダ!

「レイィィィィーン! 待ちなさいよぉおおおお!」


 再び振り向くと、銀髪を振り乱しながら全力疾走する女の姿が見えた。


「あれはヴィクトリアじゃねーか。何やってんだ、あいつ」


 ヴィクトリアは、もの凄い形相で駆け寄ると、俺の肩をガシッと強く掴んだ。


「レインの嘘つきぃいい! 結婚してくれるって言ったじゃない! 何で黙って出て行こうとしてるのよぉおお!」

「言ってねえ!」


 美人顔を涙でグシャグシャにするヴィクトリアを、俺は必死に両手で遠ざける。


「結婚はお前が勝手に言ってるだけだろ」

「約束したでしょ! 試合で私が勝ったら結婚して、あなたが勝ったら結婚するって!」

「それ賭けになってねえ!」


 本当に困った女だ。見た目だけは最高なのに。これが残念美人というやつか。


「ちょっと待ってください!」


 俺とヴィクトリアを引きはがすように、サーシャさんが間に入ってきた。


「ちょっとヴィクトリアさん、レインさんが困ってるじゃないですか!」

「何よ、邪魔しないでよ」

「レインさんは私の……す、すす……すき……友人なんですよ。勝手なことは許しません」

「知らないわよ。私はレイン……旦那様しか見えてないのよ!」


 サーシャさんとヴィクトリアが不毛な戦いをしている。

 今のうちに出発しようか。


「行きましょう、リズさん」

「はい、レイン様」


 俺たちは城門を出て、街道を進み始めた。



 はずだったのだが……。


「レイン、そこの女は誰よ。専属メイドなんて聞いてないわよ。ま、まさか、エッチな命令をしてるんじゃないでしょうね!?」


 どうしてこうなった。

 ヴィクトリアがついてきたのだが。

 サーシャさんまで行くと言い出したけど、さすがにギルドの仕事があるので止めたけど。


「申し遅れました、ヴィクトリア様。私はリズと申します。レイン様の充実なメイドです」


 リズさんがヴィクトリアに向け伝統的挨拶カーテシーをしている。ヴィクトリアは見た目が高貴だけど、実は一般人だぞ。


「変なことしてないでしょうね? 何でレインのメイドに?」

「レイン様の調教が忘れられず、こうして再び雇っていただきました」

「ちょぉっとレイン! どういうことよ! 私も調教しなさいよ!」


 こっちがどういうことだよ。

 娘の前で変態な話はやめてくれ。



 ◆ ◇ ◆



 思うところあって、途中でバーベキューを楽しんだ湖畔に足を向けてみた。

 他の街に行くには時間がかかるし、何処かで野宿をしかくてはならない。それに、焼けた森が心配なんだよな。


「あれっ、どうなってるんだ……」


 湖畔に出たら、予想外の光景が広がっていた。サラマンダーに焼かれたはずの森が、何故か綺麗に整備されているのだ。

 まだそんなに月日が経ってないにも関わらず。


「森が再生されています」


 俺の横にきたエステルがつぶやいた。


「魔法によるものだろうか?」

「どうでしょう……。木を植えたというより、新たに作り替えたような……」


 エステルが言うように、焼け焦げた森林は綺麗に撤去され、芝生や花壇が色鮮やかに整備されている。まるで庭園のようだ。

 湖畔の一角には、建造物まである。


「まるで錬金術のようじゃな」


 メテオラが胸を張る。物知りだと主張するように。


「錬金術?」

「うむ、この世のありふれた物質から、希少な物質を錬成するスキルじゃ」

「ドワーフが得意としているあれか」

「それじゃ。これほど大規模なものは、かなり高名な錬金術師によるものじゃろうが」


 錬金術といえば、希少な金属を生み出したり、強力な武具を作ったりというイメージだけど、庭園を造るなんてありえるのだろうか。

 もうそれは錬金というより創造クリエイト魔法に近いような。


「これ、どうやって部屋に入るのかしら?」


 リゼットが建造物の中を覗いている。どうやらドアを見つけたらしい。


「お菓子の家みたいですわね」

「わふっ、美味しいものあるかな?」


 リゼットとシャルが家に入ろうとしている。


「おい、勝手に入ると危険だぞ。誰が建てたのかも分からないのに」

「きっと私とレインの結婚を祝して建ててくれたのね」


 ヴィクトリアが何か言っているがスルーだ。


「ここに魔法陣がありますわね」


 リゼットの見つめる先には、ドアに書かれた小さな魔法陣がある。

 俺は顔を近づけてみた。


「何だこれは。この魔法陣に手を当てると鍵が開く仕組みかもしれないな」

「当ててみたの」


 シャルが手をかざしてしまった。


「おい、危ないぞ」

「わふっ?」


 シャルの手を掴んで離そうとしたその時、魔法陣が光り始めた。


 ギュイーン!

『パスワードを入力してください』

「きゃっ!」

「しゃべったの!」


 ドアから音声が出て、リゼットとシャルが飛びのいた。


「何だこれは。魔法の扉なのか? パスワードを入力するとドアが開く仕組みのようだな」


 明らかに怪しい。数日で建築した技術も不思議だが、パスワードを必要とする魔法の家など、普通の人間が作ったとは考えられないぞ。


「パスワードはきっと、お父様の名前ですわね」

「そんな訳あるか」


 リゼットにツッコミを入れてしまった。

 まさか俺の名前で開くはずがないだろ。


「レイン・スタッド」

『パスワード照合、自動迎撃システム解除、入り口を開放します』


 そんなバカな!

 本当に俺の名前でドアが開きやがった!


「お父様が建てたんですの?」

「俺じゃねえぞ」

「やるじゃない! 私と旦那様のスイートホームね」

「ヴィクトリア、ちょっと黙っててくれ」


 俺に寄り掛かるヴィクトリアに、リゼットが切れそうになっている。


「ちょっとあなた! わたくしのお父様に色目を使わないでくださいまし!」

「聖女ちゃんこそレインの娘でしょ。つまり私の義娘よね?」

「義娘にはなりません! わたくしは、お父様と結婚するのですわ!」


 おーい、どっちも結婚しないぞ……。


「先ずは俺が様子を見るよ」


 俺はゆっくりと家に足を踏み入れた。

 娘に危険なことをさせられないからな。


 ガタッ!

「生体識別コード確認、照合、対象をレイン・スタッドと認識しました」

「うわっ!」


 突然現れた不審な影に、俺は戦闘態勢を取りつつ距離を置いた。


「誰だ!」

「私は高知能自立防衛型自動人形(オートマタ)、アハツェーンです」

「は?」


 その人影は、人間ではなかった。

 顔の造りは十分に美人だが、目は人形のように感情を感じない。額には『18』と数字が書かれている。

 姿かたちこそ女性に見えるが、メイド服から覗く手は、機械のような関節だ。


自動人形オートマタだと……。こんな精巧な。信じられない」


 この世界にこんなオーバーテクノロジーな自動人形オートマタが存在するなんて。まるでオーパーツだ。

 元ゲームの世界には、こんなキャラは居なかったはず。


「アハツェーンとかいったか。何で俺を知っているんだ?」

「私は偉大なるマスターに造られました。その際、マスターであるモグミ様と、もう一人、レイン様に仕えるよう設計されております」


 意味が分からない。

 王都を追放され、湖畔でキャンプをしようと思っただけなのに、何故か家と自動人形オートマタを手に入れてしまったのだが。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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ブレイブ文庫 第1巻
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