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種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売


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第33話 もう遅い

 俺たちは、王城で開かれた裁判のようなものに出廷させられていた。

 石造りの巨大な広間。立ち並ぶ騎士や兵士たち。手枷こそされてないが、弁護人もおらず、俺と娘たちは立たされたままだ。


「被告人レイン・スタッドよ、貴様は魔族と通じて国家の転覆を謀った嫌疑がかけられている。素直に真実のみ語るのだ」


 オズワルド陛下の前に立つ騎士団長みたいな奴が、声高らかに言い放った。

 だから俺は何も知らないのに。


「疑惑その一、レイン・スタッドは、魔族の幹部と度々密会を重ねていたのは事実か?」

「事実かと言われれば事実だけど」


 俺の返答で、広間内がざわついた。


「つまり罪を認めるのだな?」

「罪? 俺……じゃなくて、私は何も知りませんよ。相手が勝手に会いに来ただけです」

「どういうことだ?」

「私を仲間にしたいとか、協力しろとか言われました。もちろん断りましたけど」


 また広間内がざわつく。


「魔族は貴様を引き入れようとしているのか?」


 そんなの魔族に聞いてくれよ!


「知りませんよ。そもそも七魔大公ラプラスは、王覧試合に出場してましたよ。闘技場で会ったのが初めてです。そもそも魔族幹部を王都に侵入させ、なおかつ王の御前試合にまで出場させるってのが問題なのでは?」


 ザワザワザワザワザワ――


 俺の発言で、空気が一気に張り詰めた。


「ま、まさか、魔族幹部が王都に入り込んでいたのか!」

「国王の御前にまでだと……」

「これは由々しき事態ですぞ」

「警備はどうなっておるのだ」

「なぜ誰も気づかなかった」


 あれ? 大問題になってるような?

 言っちゃマズかったか?


「魔族幹部の件は、一旦不問とする。次の疑惑だ」


 騎士団長は、気まずそうな顔で口を開いた。


「続いて疑惑その二、魔族と共謀し、国家転覆を謀った件だ!」

「だからそれは断りました」

「ぐぬぬ」


 騎士団長が、苦虫を嚙み潰したような顔になった。

 だから何度も同じ話をするんじゃねえよ!


「さ、最後に重要な件だ。疑惑その三、レイン・スタッド、なぜ貴様は魔族の子供をかくまっておるのだ!?」


 騎士団長がメテオラを指差した。

 帽子でツノを隠してはいるが、魔族特有であるネコのような縦長の瞳は誤魔化せない。


「なぜって言われましても、この子は私の娘です」

「まさか、天帝の種共有協定の子か?」

「そうです」


 ザワザワザワザワザワ――

「魔族の子を育てるとか背信行為ではないか!」

「それを言うのなら異種族の子もだ。いつ敵に寝返るのかも」

「異種族の子は追放すべし」


 また場内がざわつきやがった。

 俺の娘を悪く言うんじゃねえ! 腹が立つな!


「他の子も全て俺の娘です。国や種族の都合で、子供を兵器や道具にしようとしたのかもしれませんがね。思ってた効果がなかったとか、利用できないからって、追い出したりするのはどうなんですか。全て俺の大切な子供です。俺が育てるのに何も問題はないはずですよね。誰にも渡すつもりはない」


 俺がそう言い切ったら、騎士団長が気色ばんだ。


「なっ! なんだと! 貴様はそれでも元男爵家の人間であろう! 国家に忠誠を尽くす貴族でありながら、国の政策に歯向かうとは何事か!」

「もう私は貴族じゃありません。ただの冒険者です」

「よさぬか」


 騎士団長が掴みかかろうとしたところで、オズワルド陛下が制した。


「レイン・スタッドよ、そなたは王覧試合優勝という輝かしい成績を残した戦士である。もし魔族や異種族の子を引き渡すのなら、再び貴族の位と褒章を与えよう」

「謹んでお断りいたします」


 ザワザワザワ――

「何だと!」

「無礼者!」

「陛下に対して何だその態度は!」


 お断りしたら場内からブーイングが飛んだ。


「わたくしもお断りですわ!」


 その時、俺の横で控えていたリゼットが前に出た。


「ここに居るメテオラは、わたくしの妹ですのよ! エステルもシャルも! 姉妹を引き渡すなどできませんわ!」


 王の御前でリゼットが言い放ち、メテオラがハッと顔を上げた。


「リゼット、おぬし……」

「メテオラさんは、わたくしのプリンを食べたりと生意気ですが、妹には違いないですわ」

「こら、それはもう許されたのではないのか! あと、わらわが姉じゃぞ」


 まだプリンの件で揉めているけど、二人の仲も深まっているようだ。お互いを姉妹と認めている。

 ただ、リゼットが出たことで、騎士団長は困惑の表情を浮かべた。


「リゼット様! 貴女は聖女見習いですよね。大聖堂に戻ってください」

「嫌ですわ」

「嫌と申されましても……。教会を私物化していたギムネムは排除いたしました。もう心配はいりませぬ」

「嫌ですわ」


 リゼットは、にべもなく断った。

 これには騎士団長も肩を落とし、オズワルド陛下は溜め息をついた。


「ふうっ、もうよい。レイン、そなたには失望した。王覧試合優勝者ということもあり、せっかく目をかけてやろうと申しておるのに」


 オズワルド陛下の目に失望の色が浮かぶ。

 これはしくじったか。明らかに俺を断罪する流れだろ。


「レイン・スタッドよ! そなたを王都追放とする! 速やかに荷物を纏めて出てゆくがよい! これはかなり譲歩した処分である」


 堅牢な造りの広間に、オズワルド陛下の声が響いた。


「お待ちください、父上!」


 ここで王の横に控えていたエドガー王子が立ち上がった。王位継承権一位の次期国王だ。


「父上、それはあまりにも酷い仕打ち。レイン殿は王国最強の戦士であり、天啓てんけいのスキルを持った人物ですぞ」

「もう決めたことだ」


 エドガー王子が詰め寄るも、オズワルド陛下の下知は変わらない。


「世界最強のスキルと噂された天帝の種であったが、さしたる成果も出せなかったと聞く。伝説はただの噂だったようだ」

「陛下!」

「その男が魔族の子供を庇うというのなら、いつ裏切るか分からぬではないか」

「しかし……。後に大きな国家の損失となるやもしれませぬぞ」

「くどい、追放は変わらぬ! それより魔族の侵入に対応するよう、警備を強化するのだ」


 こうして、俺たちは王都を追放になってしまった。



 ◆ ◇ ◆



 自宅に戻った俺たちは、引っ越しの準備を進めていた。

 先日引っ越したばかりなのに、もう二回目の引っ越しとは。


「さて、何処に行こうか」


 鞄に服を押し込みながら、ふとつぶやいてみた。

 幸いにも金貨とレア素材はたんまり有る。当分の生活には困らないだろう。

 問題は住む場所だが。

 近くの街に引っ越すのか、それとも農地でも開拓するのか。


 まあ、元ゲームのバッドエンド、『ゴブリンの苗床』と比べたら天国みたいなもんだ。

 むしろ、しがらみから解放されて清々したぜ。


「すみません、お父さん。私たちのせいで……」


 エステルがしょげた顔をしていた。


「エステル、お前らのせいじゃないぞ。魔族とか異種族とかどうでもいい。気にするな」

「シャルはパパと一緒なら、どこでも良いの!」


 シャルは元気そうだ。むしろ、王都追放を冒険みたいに楽しんでいる。


「ふん、やはり父上は凄いのじゃ。わらわを売ることなく、王にもキッパリ言い切ったのじゃ」

「そうですわ! お父様は素晴らしいのです。わたくしもスッキリしましたわ」


 メテオラとリゼットが俺を褒めている。何だかくすぐったい。


 そこに家財道具をまとめたリズさんがやってきた。


「レイン様、調理器具をまとめました」

「ありがとうございます。リズさん、これを」


 俺はリズさんに金貨の入った袋を手渡した。


「これは?」

「退職金です。短い間でしたが、ありがとうございました」

「えっ?」


 リズさんは首をかしげる。


「私も一緒に行きますよ」

「ええっ! リズさんまで追放される必要はないですよ。この金で新たな職場を見つけてください」

「いいえ、私も行きます」


 リズさんの考えは変わらない。


「せっかくレイン様と再会できましたのに。まだまだお世話をさせていただきますよ」

「リズさん……」

「お嬢様方とも仲良くなれましたし。それに、まだレイン様に調教していただいておりません」

「それは勘弁してください」


 せっかく良い感じだったのに、リズさんってば。


「分かりました。一緒に行きましょう。でも、どうなるか分かりませんよ」

「はい、デンジャラスなレイン様には、私のようなメイドが必要なんですよ」

「誰がデンジャラスやねん」


 まあ、リズさんがいれば何かと助かるけど。


「とりあえず行くか。何とかなるだろ」

「何とかどころか何でもできそうじゃな」


 メテオラが口を挟んできた。


「ん? どういうことだ、メテオラ」

「気づいておらんのか? 先日の戦闘で分かったのじゃが、父上の娘は皆最強クラスの強さじゃぞ」

「は?」

「一人一人が七魔大公にも引けを取らぬレベルじゃ」

「はは、まさかな」

「たく、父上め。何でアドラメレクが引いたのか、分かっておらぬようじゃ」


 まだメテオラが何か言っているが、まさか最強なんてことはないよな。


 こうして、六人になった俺たちは、王都を出発するべく城門へと向かった。

 俺たちの新しい門出だ。

 不思議と不安はない。娘と一緒なら何処でも大丈夫だ。

 前世では得られなかった、俺の家族と一緒だから。



 ◆ ◇ ◆



 これで王都イストファンともお別れか。長いようで短い生活だったな。

 俺は街並みを見つめながら感慨かんがいにふける。


 見送りに来る奇特な奴なんて居ないよな。

 さよなら王都。


「レインさぁ~ん!」


 街に背を向けた時だった。俺を呼ぶ声が聞こえてきた。


「レインさぁん! 黙って行っちゃわないでください!」


 あれは、ギルド受付嬢のサーシャさん。と、荒くれ者ども。

 そこには息を切らせながら走るサーシャさんと、ザークやガランなどお馴染みの面々の姿があった。



 もしよろしかったら、ブクマと星評価で応援していただけると励みになります。

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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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