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種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売


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第30話 我が娘ながら恐ろしい

「グギャアアアアアアアアアアアー!」


 横っ面に氷の槍(アイススピア)を受けたサラマンダーは、苦し紛れに炎を明後日の方向に吐いた。


「おおっ! 本当に氷系の魔法が仕えたのじゃ!」


 俺たちの前に降り立ったのは、先ほどまでとは違い、自信に満ち溢れたメテオラだった。

 これにはリゼットも信じられないといった顔をしている。


「メテオラさん、あなた……」

「勘違いするでない! お前を助けたのではないぞ。そこの男を助けたのじゃ」


 そしてメテオラは俺を見つめる。


「おぬしの言う通りにしたら魔法が使えたのじゃ。おぬしは役に立つからな」

「おぬしじゃないだろ、メテオラ。お父さんだぞ」

「なっ、そんな恥ずかしいセリフは言えぬのじゃ」


 恥ずかしそうに顔を背けるメテオラに、俺とリゼットは首をすくめる。


「素直じゃありませんわね」

「ああ、素直じゃないな」

「何じゃと!」


 前より良い感じになった気がするが、今はゆっくりしている場合じゃない。先ずは目の前のサラマンダーを何とかしないと。


「リゼット、俺の背中に乗るんだ」

「は、はいですわ」


 素直に乗ったリゼットを背負うと、俺はエステルの方に走った。


「エステル! シャル!」

「はい!」

「はいなの!」


 シャルの背中にエステルを乗せると、俺は迫りくる魔獣を前に言い放つ。


「俺たちパーティーでサラマンダーを倒すぞ! 俺たちは強い! 皆で生き残り、家族になるんだ!」

「はい!」

「なの!」

「ですわ!」

「しょうがないの」


 ゴバァアアアアアアアアアアアア!


 四方向から浴びせられる炎をかわしながら、俺はサラマンダーが一か所に集まるように誘導していく。


 よし、勝機はある! バラバラだと厄介なサラマンダーだが、一か所に集めればメテオラのあれで。


「メテオラ、お前は無詠唱魔法が使えるはずだ」

「むえいしょう? 何じゃそれは」


 メテオラは、きょとんとした顔をする。


「お前は魔王の根源を持つ俺の娘だ! 魔法詠唱を省略して、直接魔法を叩き込めるはずなんだ!」

「そ、そんな話は聞いたことがないのじゃ」

「お父さんの助言は適切です」


 エステルが後押ししてくれた。


「仕方がないの。おぬしを信じてみるのじゃ」

「よし、メテオラ。サラマンダーが密集したところに猛吹雪ブリザードをぶちかますんだ!」

「そんな大魔法は使えぬのじゃ」

「メテオラならできる! 俺の娘だろ!」


 大丈夫だ。メテオラのステータスには、確かにブリザードがあった。

 これまでの経験を考えれば、ステータスに書かれているスキルは必ず使えるはずなんだ。


「メテオラ、俺を信じろ!」

「う、うむ」


 メテオラが両手をかざす。


「今だ、メテオラ! イメージしろ!」

「むむむ! 猛吹雪ブリザード!」


 ビュバァアアアアアアアアアアアア!


 俺たちの前方に超低温の空間が出現し、猛吹雪が暴れまくった。それは湖を凍らせて木々を雪化粧に変え、サラマンダーの纏っている炎を消してしまう。


「よし、今なら攻撃し放題だ! 一斉に行くぞ!」


 俺の合図で、娘たちが猛攻撃を開始した。


龍雷撃ドラゴンライトニング!」

重力打撃グラビティインパクトなのぉおお!」

「ホーリーライトですわ!」

「魔王の力を思い知るがよい!」


 圧倒的脅威であったはずのサラマンダーが、次々と打ち倒されていく。連携がとれた俺たちは強い。


「なっ! 何だと! し、信じられぬ! ダンジョン最下層から転移させた魔物がぁああ!」


 ギムネムは愕然と天を仰ぎ、崩れるように膝をついた。


「これで終わりだぁああ!」

 ズガガァーン!


 最後に残っていたサラマンダーの頭を、真上から剣を叩きつけカチ割ってやった。

 圧倒的勝利だ。


 ザンッ!


 俺は腰を抜かしているギムネムの前に立つ。


「おい、そこの金ぴか野郎! 聖職者でありながら、子供を殺せとはどういうことだ! 俺は子供を虐待する奴が一番嫌いなんだ!」

「ひぃいいいいっ!」


 ギムネムは、這いつくばいながら逃げようとする。


「逃がさねえぞ! お前が全ての黒幕だろ!」

「ま、まま、待て! ワシは大主教であるぞ! ワシに危害を加えたら貴様は斬首だ」

「そんなの知ったことか! 暴力は全てを解決するんだよ!」


 俺は拳を握り力をこめる。


「ま、待てぇええ! いや、待ってください! か、金をやろう! いくら欲しい? あっ、奴隷もやるぞ! 若い女だ! 獣人族が良いか? それともエルフ族か? 人族もおるぞ! まだ年端も行かぬ若い娘だ! どうだ? グハハ!」


 ガタガタガタガタガタ!


 怒りで俺の拳が震える。


「年端も行かぬ若い娘の奴隷だと!? 俺は子供を虐待する奴が一番嫌いだと言ったはずだぜ!」

「うぎゃああああ! し、しまったぁああ!」


 墓穴を掘ったギムネムは、見苦しいほどに狼狽うろたえている。


「観念しろ、このゲスが!」

「お待ちください、お父様!」


 振り上げた俺の拳を、リゼットが止めた。


「放せリゼット、俺はこのゲスを殴らねえと気が済まないんだ!」

「放しませんわ。わたくしは大司教ギムネムを許します」

「おまっ、何を言っているんだ!?」


 リゼットは俺の前に出て、ギムネムの前に立った。


「このわたくし、神の代行者たる聖女リゼットが命じます! 大司教ギムネムよ、これまでの悪行、悔い改めるのです。もし反省し二度としないと誓うのなら、その罪を許しましょう!」


 リゼットから神々しい光が放たれている。まるで本物の聖女……いや、女神の使いのようだ。

 まさか、聖女の力が覚醒したのか?


 この神の奇跡のような光景に、ギムネムも頭を地面に擦り付ける。


「ははぁ! このギムネム、心を入れ替えまする! 聖女リゼット様ぁああ! これ、貴様らも頭を下げぬか!」

「「「ははぁ!」」」


 ギムネムの一喝で、他の神官も一斉に土下座の体勢になった。


「そ、それではワシはこれで」

「おい、ギムネム! そこのジャスティンも拾っていけよ!」


 そそくさと逃げようとするギムネムの背中に、俺はボロボロのジャスティンを指差しながら声をかけた。

 あんなのを残されたら環境に悪いからな。



 奴らが去って、そこに残されたのはレアっぽい魔石と大量のドロップアイテムだ。

 またゴールドがたんまり入りそうだが、俺はスッキリしない気持ちだった。悪党を野放しにするなど、新たな犠牲者が生まれるだけだ。


「おい、リゼット。何であんなクズを許したんだよ」


 リゼットは振り返ると、満面の笑みで口を開く。


「許していませんわよ。わたくしは、悔い改めるのなら許すと言っただけですわ」

「えっ?」

「どうせあの男が悔い改めるとは思いませんわ。わたくしは、ずっと近くで見てきましたから」


 そこでリゼットの瞳がキラリと光った。


「殴ってスッキリなんて生ぬるいですわよ。あの男には、死よりも辛い裁きを与えてやりましょう。聖職者でありながら、奴隷の売買に関与。自ら幼い子供を奴隷として虐待。寄付金の横領。その他もろもろ。その全ての証拠をわたくしは握っておりますわ」


 怖っ! リゼット、怖っ! そこまで考えていたのか!

 ただぶっ飛ばすだけじゃなく、犯罪の証拠を白日の下に晒し、その地位から突き落としてやるという訳か。


 やっぱりリゼットって、ちょっと怖いよな。こんな断罪方法を思いつくなんて。


 確かに俺が殴ってスッキリしても、逆に俺が大司教に暴力を振るった大罪人として裁かれてしまう。

 奴を破滅させ蛮行を止めさせるには、元から断たねばならないってか。

 我が娘ながら恐ろしいぜ。


「ふむ、その証拠とやらは、大聖堂にあるのじゃな。ならば、わらわが盗んでこよう」


 話を聞いていたメテオラが、とんでもないことを言い出した。


「あら、メテオラさん。たまには良いことを言いますのね」

「わらわは最初から腐敗しまくった聖職者が大嫌いじゃ」

「わたくしもですわ。気が合いますのね」

「女神官と馴れ合うつもりは無いがの」

「わたくしは聖女ですことよ。うふふ」


 あれっ? 二人の仲が良くなっているような?

 まあ良いか。仲が良いに越したことはない。



 ◆ ◇ ◆



 数日後、大司教ギムネムの悪事は白日の下に晒された。

 それは俺の想像を遥かに超えるものだった。

 奴隷売買に関与し、多くの幼い子供を虐待。

 貧しき者からの寄付金を横領し、自分だけ贅沢三昧。

 至高神アモリスの力を偽って、ただの水を『奇跡の健康水』と高額販売。


 その全ての証拠書類が王都中央広場の掲示板に貼られ、多くの国民が目にするところとなったのだ。

 想像していたより何倍も酷い聖教会の不敗に、国民の怒りも爆発。


 国王はギムネムの地位を剥奪した。奴の牢獄行きが決決まりだ。暗くジメジメしたゴキブリが巣食う地下牢で、残りの人生を過ごすことになるのだろう。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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ブレイブ文庫 第1巻
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