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種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売


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第29話 陰謀は暴かれた

 森の中から立ち上った炎と轟音で、俺は娘たちをかばうように走り出した。


「何だ! 何が起きた!」


 ズシンッ! スガガガガーン!

「グギャアアアアアアアアアアアース!」


 木々を薙ぎ倒しながら現れたのは、全身に火をまとった大トカゲだった。


「あれは、サラマンダーじゃないか! 何でこんな場所に!」


 火蜥蜴サラマンダー

 火の元素を司るドラゴンの眷属。ドラゴンの下位互換のイメージだが、体に火を纏ったモンスターであり、非常に厄介な存在だ。


「クソッ! これはヤバいぞ!」


 俺はすぐに娘たちに指示を出す。


「エステルとリゼットは、安全な場所まで下がるんだ! 後方から魔法で援護を! シャルは俺と前衛だ! 火を纏ってるから気をつけろ!」


 三人に指示を出してから、俺はメテオラを見た。


「メテオラは……」

「わらわには期待するでないぞ。覚醒しておらぬ」


 俺は素早く彼女のステータスを確認する。


 ――――――――――――――――

 メテオラ Lv82

 種族:ハーフ魔族

 職業:魔法戦士

 スキル

 魔王の根源

 氷の加護

 魔の絶剣

 アイススピア

 ブリザード

 ――――――――――――――――


 メテオラも凄い初期ステータスだ。まだ子供なのに圧倒的な強さとレベル。これで覚醒していないのか。

 だが、氷系の魔法属性なら。


「メテオラ、覚醒していないというのは、どういうことなんだ?」


 俺が問いかけると、メテオラはバツの悪そうな顔をした。


「魔王といえば、絶大な魔法を誇る存在じゃ。しかし、わらわは弱い魔法しか使えぬ。歴代魔王は獄炎で全てを焼き尽くしたというのにの」


 炎系魔法だと!? そもそも習得しようとする系統が間違っていたのか?


「メテオラ、お前は氷系魔法だ」

「何故そう言い切れる」

「俺を信じろ! いいからお前は氷の槍(アイススピア)を使うんだ!」

「はあ?」


 ズガァアアアアアアアアアアアア!


 サラマンダーが炎を吐き出した。

 俺はシャルとメテオラを抱えて横に飛んだ。今はゆっくり話している場合じゃない!


「クソッ! アースドラゴンの次はサラマンダーかよ! こんなの偶然じゃありえねえよな!」


 やはり誰かがモンスターを放ったとしか考えられない。

 誰が? やはりジャスティンなのか? だが、あいつにモンスターを転移させるような力は無いはずだ。


 俺の疑念は、すぐに確信へと変わる。不快な笑い声によって。


「ふぁーっはっはっはっは! 観念しろ、悪党レイン・スタッド!」


 高らかに声を上げたのは、学生時代からずっと俺に嫌がらせを続けている、聖騎士団長のジャスティン・ベックフォードだった。


「ジャスティン、やっぱりお前か!」

「レイン! よくもこの俺の顔を殴ってくれたな!」

「いや、それは試合だろ」

「うるさい! この悪党レインが! 貴様のせいで大変だったんだぞ! 高級ポーションや神聖魔法で傷を癒したり」


 とんでもない逆恨みだ。そもそもコイツが俺に喧嘩を売ってきたんだろ。俺を斬り殺すとか言ってやがったくせに。

 負けたから俺を恨むなんて意味が分からねえ。


「おい、ジャスティン! このサラマンダーもお前の仕業か!?」

「ふははははっ! レイン、貴様は終わりだ! この俺に楯突いたこと、あの世で悔やむんだな!」

「質問に答えろ! この前のドラゴンもお前なのか!?」

「ひゃあぁっはっは! レイン死ね! この平和を乱す悪の権化め! 俺のメンツを潰した貴様だけは許さん!」


 相変わらずコイツは話が通じない。質問にくらい答えろよ。

 だが、そんな俺の疑問は、別の男が答えてくれるみたいだがな。

 ジャスティンの後ろから、見たことのある聖職者服の男が現れたのだ。


「この男に高位魔法が使える訳なかろう!」


 そう言い放ったのは、大司教ギムネムだ。

 派手な司教服に身を包み、豪奢ごうしゃな司教冠とマントを装備した男。その手には黄金の司教杖を持っている。

 もう動くキラキラみたいな奴だ。


「大司教ギムネム、もしかして、あんたがドラゴンやサラマンダーを転移させたのか?」

「いかにも! ワシの偉大な高位魔法により奇跡を行使しておるのだ!」


 こいつ、認めやがったぞ。

 大司教ギムネムの周囲には、何人もの神官が杖を掲げ、魔法を集中させている。もしかして、一人では転移魔法が使えないから、部下の魔力を利用しているのか。


「いでよ、ダンジョン最下層レベルより来たれし魔物よ!」


 ギュワァーン!


 空間に転移の門が開き、その中から新たなサラマンダーが現れた。しかも三体も。

 湖畔の周辺には、計四体のサラマンダーが炎を吐き出し、さながら地獄絵図のようだ。


「どうだ、レインよ! このワシの力、思い知ったか! ガハハハッ!」

「はははっ! そうだ思い知ったか、レイン!」


 ギムネムに続き、ジャスティンまで高笑いする。

 お前は何もやってないだろ。この金魚のフンが。


「クソッ! 何しやがる! 俺の娘を危険にさらしやって!」

「ガハハッ! そんなガキなど知るか! ワシに楯突き聖女見習いのリゼットを奪ったのを忘れたのか! この不心得者が!」

「何だと!」


 ギムネムの横柄な態度に、俺は奥歯を噛みしめる。


「リゼットは教会の道具じゃねえ! 俺の娘だ!」

「知ったことか! 失敗作の道具など廃棄処分だわい! 新たな種を手に入れ、もっと優れた聖女を作るのみよ! ハハハッ!」

「な、何だと!」


 怒りで眩暈めまいがしそうだ。こいつらは、天帝の種共有協定で生まれた子供を、人とは思っていないのか。


「サラマンダーたちよ、こ奴らを殺すのだ! この用済みになったガキどもを皆殺しにせよ! 骨も残らず焼き尽くしてしまえ! おっと、レインの種だけは必要だったわい! レインだけは生きたまま捉えよ! 生きておれば四肢が無くても構わぬ!」


 ギムネムは言ってはならねえことを言いやがった!

 用済み? 皆殺し?

 俺は子供が虐待されているのを見ると、抑えようのない怒りが湧き上がってしまうんだ!

 実験で子供を生み出し、利用価値が無くなったから廃棄処分だと!?

 それは絶対に言っちゃあいけねえ言葉だ!


「ギムネムぅうううううううううう!」

「やれ! 奴らを殺すのだ!」


 ズガァアアアアアアアアアアアア!


 ギムネムの合図で、サラマンダーが一斉に火を噴いた。モンスター四体の同時攻撃は、凄まじい威力だ。

 俺は炎をかわしながら、娘たちに声をかける。


「シャル、距離をとるんだ! 近づきすぎると危険だ!」

「はいなの!」


 俺の声で、シャルが後方へと走った。


 これは厄介だな。強さだけならアースドラゴンの方が上だが、サラマンダーは炎を纏っていて危険だ。

 しかも四体も同時に相手するとはな。


「ふあぁっはっはっは! どうだレイン・スタッド! 貴様は俺がボコボコにしてやるぞ!」


 しかもジャスティンがしゃしゃり出てきやがった。俺の前を塞ぐように。


「邪魔だ、退け!」

「うるさい! 俺に命令するんじゃない! 貴様はここで終わり――ぐはぁああああ!」


 スガァーン!


 ジャスティンが喋り終わる前に、サラマンダーの尻尾が彼を薙ぎ払った。

 吹っ飛ばされたジャスティンは、木に体を打ち付け動かなくなる。体が捻くれて再起不能っぽい。

 あいつは何をしに来たんだ?


「クソッ! うおぉおおおおおお!」


 ガキンッ!

「熱っ!」


 近くにいる一体に剣を撃ち込むも、サラマンダーの炎で致命傷を与えられない。燃え盛る炎で近づけないのだ。


「きゃああああ!」


 その瞬間だった。サラマンダーの一体が、いつの間にか後方に回り込み、リゼットを襲おうとしていた。


「リゼット!」

「お父様ぁああああ!」

「間に合えぇええええええ!」


 大地を蹴り、全色力で走った。

 あと少し、あと少しでリゼットを。

 俺がリゼットの手を掴むのと、サラマンダーが炎を吐くのとが同時だった。


 マズい! 回避が間に合わない! せめてリゼットだけでも守らないと!


 ズババババババ!


 俺が致命傷覚悟でリゼットに覆いかぶさったその時、何処からともなく放たれた氷の槍(アイススピア)が、サラマンダーの側面に突き刺さった。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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ブレイブ文庫 第1巻
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