表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/34

第28話 本当にやりたいこと

 落ちた書類を拾った俺は、迷わずそれを破り捨てた。


「メテオラ、もしかして危ないことをしてるんじゃないだろうな?」

「うっ……」


 俺が問いただすと、メテオラは目を逸らして黙り込む。

 さっきの書類は城の情報だ。もしかして、アドラメレクに……?


「メテオラ、危険なことに関わっちゃダメだ。もうアドラメレクの言うことは聞くな」

「わらわは次期魔王、それしか道はない」

「そんなことを言うなよ。俺と一緒に暮らそう」


 俺はしゃがんでメテオラと目線を合わせた。


「皆と一緒に暮らせばいいじゃないか」

「ふっ、わらわは魔族よ。この街で暮らすなど無理な話じゃ。魔王となりこの国を亡ぼす」

「メテオラ! それは本当にお前がしたいことなのか?」

「わらわの……したい……こと?」


 メテオラの瞳が揺れた。迷いが生じたかのように。


「魔王になってどうするんだ? 戦争をするのか? 魔族幹部の言いなりになって」

「それは……」

「その後はどうするんだ? 先の大戦のように、勇者と戦って滅ぼしたり滅びたりなのか?」

「うっ……」


 あれほど頑なだったメテオラが迷っている。

 やはり大人の道具にされていたのか。

 アドラメレクもラプラスも、考えていることは分からねえ。でも、メテオラを使って何かをしようとしているのかもしれない。


「もう悪い大人の言うことを聞くな!」

「じゃ、じゃが」


 ギュッ!


 俺はメテオラを抱きしめた。何処にも逃がさないように。

 もう魔族とか関係ない。この子は俺の娘だ。

 戦争の道具なんかにさせてたまるか!


「帰ろう、メテオラ。俺たちの家に」

「お、おい」


 メテオラを抱っこすると、彼女は手足をジタバタとさせ始めた。

 俺は有無を言わせず歩き出す。


「こ、こら! 降ろさぬか」

「降ろすと逃げるだろ。このまま帰るぞ」

「やめぬか! 恥ずかしいのじゃ!」

「ほら、大人しく抱っこされてろ」


 手足をばたつかせるメテオラを無理やりお姫様抱っこし、そのまま歩き出した。



 ◆ ◇ ◆



「帰ったぞ」

「はひぃ……酷い羞恥プレイであったわ……」


 パタパタパタパタ――


 お姫様抱っこのまま家の玄関をくぐると、娘たちが一斉に駆け寄ってきた。


「お帰りなさい、お父さん。と、メテオラちゃん」


 俺とメテオラを見て、エステルが安堵の表情になった。


「わー、メテオラちゃんだけズルいの! シャルも抱っこ」


 シャルが飛び掛かってきて、メテオラの表情が変わる。


「こ、こら、じゃれつくでない!」

「わふぅ! シャルも抱っこ、シャルも抱っこ!」


 俺に抱っこされたがったシャルだが、何故かメテオラを抱っこする格好になってしまう。どうしてそうなった?


「降ろせ~!」

「わふぅ!」

「まったく、世話のかかる妹ですわね」


 リゼットが呆れたようにぼやいた。

 

「何じゃと! この女神官め! わらわが姉じゃ!」

「その格好で強がっても怖くないですわよ。あと、姉はわたくしですわ」

「ぐぬぬ……」


 相変わらず二人は喧嘩しているが、前より穏やかになった気がする。

 何より、どっちが姉かで争うのは、姉妹だと認めているということだよな。


「よし、今日はバーベキューに行こう」


 俺の提案に、娘たちはきょとんとした顔をする。

 あれっ? この世界にバーベキューってなかったっけ?


「それは何か楽しいのか?」


 真顔のメテオラにツッコまれた。


「ほら、外で食べると美味しく感じるだろ?」

「そうかの? 旅で野営する時に食べ飽きておるわ」

「確かに……」


 しまった。この世界で野営キャンプは楽しむものではなく、仕方なくするものだったか。

 だが突き進むのみ。

 娘たちとバーベキューすれば、きっと楽しいはず。


「とにかく行くぞ。準備だ」

「わー、たまには外で食事も良いかもしれませんね」


 気を遣ったのか、エステルが賛同してくれた。

 すまんエステル、気苦労が多くて。


「お肉がたくさんならシャルも行くの!」

「仕方がないですわね」

「やれやれじゃ」


 他の三人も頷いたことで、急遽バーベキューに行く流れになった。




「じゃあリズさん、家のことは頼みます」

「はい、行ってらっしゃいませ、レイン様」


 家をリズさんに任せて、俺たちは山へと出発した。

 途中までダンジョンクエストに行くのと同じ要領だ。ダンジョン手前で道を分かれ、モンスターが少ない丘に向かう。



 しばらく歩いたところで、景色が美しい湖畔に出た。ここを野営地とする。


「これは良いロケーションだな。王都からも近いし、街道からも移動しやすい。水も綺麗だし。このままずっと野営できそうだぞ」


 自然とそんな感想が出てしまう。前世でキャンプなどやっていなかった俺だが、こんな綺麗な場所ならやっても良いと思うくらいに。

 ただ、何か言いたそうなリゼットが、俺をジト目で見ているのだが。


「どうした、リゼット?」

「お父様、このままここに住むとか言わないでくださいましね」

「さすがに住んだりしないよ」


 キャンプは良いと思ったけど、森に永住するつもりはないぞ。

 王都を追放でもされない限りな。


「ほら、準備しよう。肉を焼くぞ」


 バーベキューセットを広げ、持ってきた食材を焼き始める。

 最初は気乗りしない様子だったリゼットやメテオラも、肉の焼けるいい匂いがしてくると態度が一変した。


「美味しそうですわね。この大きいお肉を頂きですわ」

「これ! それはわらわが育てた肉じゃ!」


 肉の取り合いをする二人を眺めていると、やっと一安心できそうだと思った。最初は攻撃し合うような仲だったからな。


「もうっ! 何でわたくしの肉ばかり横取りしますのよ! くらいさない、神の鉄槌を!」

「たわけが! それもわらわの育てた肉じゃ! 魔王の力を見せてやる!」


 あれぇ…………。仲良くなってるんだよな?



 しばらくすると、肉でお腹がいっぱいになったからなのか、娘たちが大人しくなった。

 シャルは蝶々を追いかけて、エステルとリゼットは花で冠を作り始め、メテオラは湖を眺めている。


「まるで休日の父親みたいだな……」


 そんな独り言が、自然と出てしまう。


 前世では体験できなかった幸せな家庭だ。

 休日に娘を連れバーベキューに出かける父親。俺は張り切って準備をするも、娘はゲームをしたいと乗り気じゃないんだ。

 でも、いざ山に到着し肉を焼いたら、娘も乗り気になって。何だかんだ言っても、最後は楽しかったねって話になったり。

 そんなありふれた日常だけど、俺は小さくて細やかな幸せを感じるんだ。


「父親か……」


 俺はメテオラの隣に腰かけた。


「どうだ、メテオラ。楽しかったか?」

「ふん、肉は美味かったのじゃ」


 相変わらず素っ気ないメテオラだが、少しだけ態度が軟化している気がする。


「そうか、それは良かった。美味しいものを食べるのは、幸せに繋がるからな」

「そうなのか?」

「ああ、食事は大切だ。粗末なものばかり食べていると、心も荒むからな」


 前世の俺は、毎日同じカップラーメンやら菓子パンばかりで、愛情のこもった手料理を食べられなかった。食生活の乱れは心の荒廃を招くんだ。

 それは身をもって実感していた。

 何処かで聞いたことがある。美味しいものを食べると、幸せホルモンが増えたり免疫機能が高まるって。


「メテオラ、考えてくれたか? 俺たちと一緒に暮らすって」

「魔族であるわらわが、人族と一緒にはなれぬ。わらわは、魔王に……」

「メテオラは魔族じゃなく俺の娘だ」

「うっ、そ、その」


 俯いたメテオラは、静かに口を開いた。


「わらわは……次期魔王と期待されながら……その力も覚醒せず……」

「えっ?」

「このままでは用済みになってしまうのじゃ。新たな種を手に入れ……真の魔王を生み出さねば」


 絞り出すように吐露とろするメテオラに、俺はアドラメレクの言葉を思い出した。


『では、私がレインとセッ○スします。セッ○スしまくります。ドスケベセッ○ス百回します』


 まさか! アドラメレクのアレは、俺の種を採取するという意味だったのか!

 待てよ!? 種を採取して、新たな魔王候補が生まれたら、メテオラはどうなるんだ? 用済み……なんてことに!?


「メテオラ! もう魔族のもとに戻っちゃダメだ!」

「しかし」

「このままじゃ用済みって言ったよな? でも、真の魔王を生み出したら、メテオラはどうなるんだ?」

「あっ……」


 メテオラはハッと顔を上げた。


「このままじゃメテオラは戦争や陰謀の道具にされちゃうぞ! 俺と一緒にいろよ!」

「それは……う、うん……」


 やっとメテオラが首を縦に振った。やっと俺の想いが通じたのか。


 ズガァアアアアアアアアアーン!


 その時、森の奥で爆炎が噴き上がった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

-


姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

書籍情報
ブレイブ文庫 第1巻
ブレイブ文庫 第2巻
COMICノヴァ

-

Amazonリンク

i973423
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ