第4話 冒険者ランク
勝手に契約されてしまうなど色々な出来事はあったが——
まずは、この世界についての情報を収集する事にした。
「よし、とりあえず……レイって言ったよな。ここはどこなんだ?」
「俺、日本って国から来たんだけど、正直この世界のことがさっぱり分からなくてさ」
「そうなんですか?日本……という国は聞いたことありませんねぇ」
レイは少し首を傾げてから、にこやかに続けた。
「かなり遠くから来たんですね。ここはですね、強い魔物がゴロゴロいる魔域って呼ばれる場所ですよ。普通の人は、まず近づかない危険スポットです」
……なるほど。
だからさっきから、見るからにヤバそうな魔物が普通に徘徊していたのか。
――いや待て。
俺の初期転移スポット、運悪すぎだろ!?
初心者に優しくないにも程がある。
「じゃあさ、なんでレイはそんな危ない場所にいるんだ?普通、近づかないだろ」
「それはですね〜」
レイは胸を張り、えっへんと得意げに言った。
「魔域には、美味しい食べ物がたくさんあるからですよ〜」
「……理由それだけ?」
「あ、ちなみに」
急に話題を切り替え、ドヤ顔で続ける。
「私はAランク冒険者ですよ〜。強いですよ〜?」
「へえー」
「……え?」
レイの動きが、ぴたりと止まった。
「ちょ、ちょっと待ってください」
「反応、薄すぎませんか?マスター」
腕を組み、じーっとこちらを睨んでくる。
視線が微妙に痛い。
「いや、そう言われてもな」
「あ……そうでした」
やれやれ、と肩をすくめる。
「マスター、この世界の常識が分からないんでしたね」
そこから、なぜか講義が始まった。
「いいですか?冒険者ランクというのはですね」
「E・D・C・B・A・S、この順番で上がっていくんです」
やけに丁寧だ。
「そして私は……上から二番目のAランク。しかも、ソロですよ?ソロでAランクって、実はかなり凄いんですからね!!」
どうだ!とでも言いたげに、必死な目で見上げてくる。
「へえー」
「ねえ!?」
「もう少し驚いてもいいんじゃないんですか!!」
「Aランクですよ!Aランク!!」
食い気味に詰め寄ってきた。
どうやら、想定していた反応とだいぶ違ったらしい。
ギルドのランク制度まで懇切丁寧に説明してくれたが、正直そこまで驚けない。
だって――
あの巨大なクマみたいな魔物と、正面から互角にやり合ってたんだぞ。
あれを見た後で「実はAランクです」って言われても、
そりゃそうだろとしか思えない。
レイはついに俺の真正面まで来て、じっと見上げてきた。
目尻が少し潤み、声まで震え始める。
「ねえ……ちょっとは驚いてくださいよぉ……」
……あ、これ面倒なやつだ。
驚かないと、たぶん一生この調子だ。
仕方ないので、俺は驚くフリをすることにした。
「わあ〜Aランク冒険者に会えるなんて驚きだな〜サインとか欲しいな〜」
自分でも分かるほど、感情ゼロの棒読みだったが――
効果は抜群だった。
「そうでしょう!」
レイの表情が一気に明るくなる。
「こんな私と契約できたこと、喜んでいいんですよ!」
腰に手を当て、ふんすと鼻を鳴らす。
「しかもですよ!聖騎士はこの世界にたった五人しかいない、超レア職業なんですよ!私!」
「それは……凄いな」
「でしょ?」
満足そうに腕を組み、何度もうんうんと頷く。
さっきまで涙目だったのが嘘みたいだ。
感情の切り替えが早すぎる。
ただの大食い女騎士だと思っていたが、
本当に凄い人だということは、よく分かった。
……分かったんだが。
同時に、色々と惜しい人だなとも思ってしまった。




