最強の敵(改)
俺は、根城のコンビニを後にして、
”ばあちゃんちか、敦子おばさん”の所目指して、出発した。
チビ助はいない。たった二日だったけど、正直ウザイ時もあった。
でも、今は寂しい。何かが欠けてる気がする。
俺が寂しいなんて、ガラでもない そんな心の迷いを忘れようと、
歩きに歩いた。
川にかかる橋を渡るときに、気づいた。
失敗した~~。ちょうど、俺の天敵”小学生”の通る時間だった。
向こうから、ヤンチャそうな男の子が歩いてくる、まずい、避難したい。
回れ右して、戻ろう、と思ううちに、男の子の3人がグっと近づいて来た。
「よるな、さっさと、とおりすぎろ」
俺の威嚇は、逆効果だったようだった。
「すごい毛が逆立ってる。シャアっていってるし」
「よしお君、危ないよ。引っかかれたら大変」
「汚いし、放っておこう。早く学校でサッカーしようよ」
3人のうち、俺にちょっかいを出しそうなのは、”よしお君”と呼ばれた子だ。
肉付きの良すぎる手足。他の二人より高い背。ツリ目できかなそうだ。
さっするに、この3人のリーダーってとこか
「俺はやさぐれた野良猫で凶暴で汚いんだ、お前ら、さっさと行け。」
そう言っても、もちろん通じなかった。
そのうち、”よしお君”が、俺のシッポをギュっと握った。
「あぎゃ=」俺は、痛さのあまり大声で悲鳴をあげ、男の子をひっかいた。
シッポは、俺の弱点なんだ。骨が入り組んでて、触られただけで痛いからだ。
「ウワ、何するんだ、この猫。生意気だ」
尻尾のつかまれた痛さで、逃げるの、遅れた。
その男の子に、後ろからムンずとつかまれて、
橋の欄干から俺を腕ごと外にのばす。
だめだ、もし反撃して手を離されたら、落下してお陀仏。
おとなしくしてても、お陀仏のようだ。
さよなら、俺。下は河川敷のグランドで芝生だけど、
この高さだと助からないだろう。
縄張りの近くで死ねるならそれもいいか。
「よしお君。何やってるの、駄目だよ」
「そうだよ。後でたたられるよ。猫は怖いって」
残りの二人は、とめようとしてくれてるが、よしお君とやらは、俺を離さない。
いや、今、離されてもこまるんだけどさ・・・
その時、俺は、少年ごと抱きしめられた。背の低いじいさんが、俺も一緒に
”よしお君”をゆっくり欄干から離し、俺をを抱きとってくれた。
(じいさんは小柄でやせてた。”よしお君”に体当たりされたら、
転びそうなくらいだ)
”よしお君”の様子を見て、身を張って俺を助けてくれたんだ。
「こら、何をやっとる。馬鹿者が! 落ちたら死んでしまうじゃないか」
「へー。猫って高い処、平気だと思ったけど、死ぬんだ。」
よしお君とやらは、平気な顔で、まだ俺に 手を出そうとする。
「やめれ!今度、こんな事したら、警察を呼ぶからな。猫だけじゃなく、
動物は全部、苛めてはだめだ。
動物愛護法違反。りっぱな犯罪だぞ、クソガキ」
「なんだよ、クソ爺」
言い合いしてるようだけど、後の二人がよしお君をひっぱって、走って行った。
”あの爺、やばいぞ。””かかわるなよ。俺たちまで巻き込まれてしまう”
「ば~かば~か」
「お前こそ、大馬鹿者じゃ 」
これって、喧嘩か。声の大きさを競ってるのか?
じいさんは、橋を渡るまで、俺をシッカとだいて、俺は身動きとれなかった。
それに、安心したら、気が抜けた。
橋の終わりで、じいさんは、俺を下におろした。
「これからは車と子供には気を付けて帰られよ。
君子危うきに近寄らずじゃ。わかったな?」
・・・車と子供に気を付ける。ありがとうございました。
俺は、返事をすると、じいさんは、手をあげて、答えた。
そしてひょこひょこと、目的地・コンビニまで歩いていった。
(猫にとって)すごい親切な人間もいるってことだ。
黄色い髪のにいちゃん、夏江おばさん、
病院で僕をかくまってくれた女性、じいさんやコンビニの店員さん。
それに親切というより、俺にとって家族だったニート君、今は健一君か。
彼は、俺に干渉しなかった。そして、彼も自分の好きなように暮らしていた。
でも、俺に必要な食事と温かい寝床は、必ずあった。
反対に、さっきの子供のような、天敵の犬より怖い人間もいる。
チビ助は、間違いなく、人に捨てられた猫だ。
片方の前足が短くて不自由な、乳離れ前の子猫。一匹で出歩くはずないだろう。
自力で生きていけないの、わかっていたはずだ。
それでも、コンビニに捨てて行ったんだ。たまにそういう猫がいた。
俺にしては、珍しく考え事をした。
懐かしいコンビニで一休み。やれやれ。
ここまでくれば、ばあちゃんちまで後、少しだ。
「おい、お前、ここは俺の縄張りだ、出てけ」ザっと 荒々しい足音がしたかと思ったら、正面きって、喧嘩を売られた。
目の前には、トラ縞の気性の荒いオスがいた。
見覚えがある。こいつは通称、”ボス”だ。
うっかり気を抜いてたぜ。
俺と、ここらあたりをめぐって、よく縄張り争いしたライバル猫だ




