表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/49

移ろう季節

  

 その後、ダドリウスは魔封じの魔法をかけられたまま、魔法の国であるカルタシア王国へと連行されることとなった。

 それは今回の騒動に、カルタシア王国では禁術とされる魔法が持ち出された上に使用されたため、責任は我が国にあるとカルタシア王国が言い切ったからである。


 そのため、ダドリウスから禁術に関する魔法を外部に出すことがないように、魔法で記憶を封印するつもりらしい。


 リディスとしてはカルタシア王国を責めるつもりはないと伝えたらしいが、魔法という技術を誇りにしている国であるため、自国の魔法が悪用されたことに対してどうしても責任が取りたいのだという。


 そこでリディスは期間を限らずにダドリウスを再び、カルタシア王国へと送り、魔法使いによる監視を付け、行動を制限した生活をさせることを提案した。


 住む場所は監獄ではないものの、周囲は見張りだらけで彼に王家の人間としての権限を持たせないままの生活だ。

 その生活費と見張りを雇う費用はドラグニオン王国側が持つが、ダドリウス本人が自由に使える金銭はかなり限られており、それまでと同じ贅沢な生活は出来ないものとした。


 カルタシア王国はその条件を快く飲み、両国の間に亀裂が入らないためにも、これからも良好な関係が続くように努めていきたいと返答してくれたという。




 ダドリウスが起こした反逆は国中に伝わっていったが、それと同時にエルシュが国王のリディスをかばい、盾となりながら戦った話まで出回ってしまったのは、現場に居たジークが少し話を大げさにしながら王城中で触れ回ったせいでもあるらしい。


 それだけではなく、エルシュが助けた貴族達も自ら進んで話を広げていったことも国中で噂される要因の一つとなった。


 王を守るべく行動したことが多くの人に称えられ、エルシュの勇敢な戦いぶりと屈辱に折れることなく凛とした王妃らしい姿は老若男女問わず話題の的となり、やがて一連の騒動を元にした物語まで出版されたようだ。


 それだけに留まらず、脚色は加えられているものの大衆向けの劇として、劇場で公開されることとなり、話の元となったエルシュ本人をもう一度見たいと望む国民が増えたらしい。


 国民の間ではエルシュのことはすでに勇敢で凛々しい「銀花の姫」として、名が通っているのだという。


 当の本人であるエルシュはそんな話を聞いて、しばらく頭を抱えては、自分はそういうつもりはなかったのにと赤面することとなり、その表情を見た王城の者達から、王妃は笑うと大変可愛らしいなんて話が出回ったことで、リディスが少しだけ不機嫌になったとか、なっていないとか──。


 そして、エルシュが破壊してしまった謁見の間の壁の修繕費は、今回の件で領地を没収した貴族達の財産から引かれることとなり、ジークから何も心配しなくていいと黒い笑顔で告げられたのであった。




 ダドリウスが反逆を起こした件について収束しつつも、季節は少しずつ廻り、やがて国民達の間では新しい話題が持ち切りとなる。


 ドラグニオン王国の国王であるリディスとアルヴォル王国から嫁いできた銀花の姫こと、エルシュがついに国民の前で結婚式を挙げる日が近づいて来ているからである。

 国中は二人を祝うべく、どこもかしこも賑やかな雰囲気で満ちているらしい。


 それぞれの家や店の軒先に竜と雪の結晶を(かたど)った彫刻を紐に下げたものを吊るしていたり、雪に似た白い花が多く売れ、その花を玄関に飾る家もあるらしい。

 また、白い花が若い女性の間では髪飾りとして使用されることも流行しているようだ。


 もちろん、エルシュはその光景を実際には見ていないので、全て王城で働いている者やジークから聞いた話である。


 自分とリディスの結婚を祝福されることは嬉しいがやはり、気恥ずかしさも溢れてしまっていた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ