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062 Resurrection - 神も知らない

 



 ティタニア、ファフニール、ニーズヘッグの三人は全力疾走で宿へ向かった。

 そして蹴飛ばすように扉を開くと、サーヤの部屋に駆け込む。


「サーヤっ!」


 先頭にいたのはティタニアだ。

 彼女は部屋を見渡す。

 血で汚れた床、それを掃除するレトリー。

 セレナは深刻な表情で俯きながら椅子に腰掛け、ベッドには――胸元に包帯を巻かれたサーヤが横たわっていた。

 本来白いはずの包帯は、溢れ出す血で赤く汚れている。


「サーヤ……サーヤぁっ!」


 ティタニアはサーヤにすがりついた。


「ご主人様っ!」


「……そんな」


 続けて部屋に入ってきたファフニールとニーズヘッグは、呆然とその場に立ち尽くす。

 突然現れた三人に驚くこともなく、セレナはサーヤの顔に視線を移し、ぼそりと呟いた。


「今、シルフィードちゃんにファーニュさんを呼んできてもらってるの」


「サーヤは……生きてるワケ?」


 無言でうなずくセレナ。

 その反応を見て、ティタニアは「はあぁ~……」と大きく息を吐いてへたりこんだ。

 一方でファフニールは、眉間にシワをよせたまま、サーヤの胸元を覗き込む。


「セレナ、ご主人様は本当に生きてるのか?」


「……」


 答えられないセレナ。


「胸元の傷。出血量からしてかなり深い。それに位置が……」


 ニーズヘッグが言うと、さらにセレナは唇を噛んだ。

 ドラゴンたちが言いたいことは、ティタニアにもわかっていた。

 サーヤは心臓を潰されたのではないか。

 ならば生きているはずがない。

 セレナは現実逃避のためにそう言っているだけ――しかし、サーヤの手を握ったティタニアにはわかる。


「サーヤは生きてるし。こんなにあったかいんだから、死んでるワケない」


「ティタニアさんの言う通りです」


 レトリーは、普段から想像できないほど暗い声で話す。


「でも、ファフニールさんやニーズヘッグさんの考えも間違っていません」


「わかるようにあたしらに説明してくれないか」


「わかるようにって言われてもね……私にもわからないことばっかなの。サーヤちゃんは、たぶん、魔王に襲われたんだと思う」


「直接殺しにきたっての!?」


「それだけ追い詰められてる」


「でもそこで、サーヤちゃんは負けて……心臓を、潰された」


「はぁ? おかしいじゃんそんなの。触ったら温かいんですケド。ウチの手がおかしいわけじゃないっしょ!?」


「そう、サーヤちゃんは心臓を潰されても生きてる」


 ティタニアたち三人は目を見開き驚愕した。

 いくらモンスターでも、魔王に作られた雑魚ならコアを、ティタニアたちのように命の営みによって生まれた者ならば心臓を潰されれば、間違いなく死ぬ。

 人とて例外ではない。


「私たちだけでは判断できないので、胸の傷の治療も含めて、対処してもらうためにファーニュさんを呼んでもらう必要があると思ったんです」


「驚いた。心臓を潰しても死なない人間がいるなんて」


「でも考えてみりゃ、ご主人様は魔王と賢者の間にできた子供かもしれないって話なんだろ? 普段の様子からみても、それぐらいできても……いや、それでも納得するのは難しいけどな」


「はぁ……ウチは、セレナとレトリーの判断は正しかったと思う。後から来たウチらだって、いくら生きてるって言っても、心臓のないサーヤの姿を見たら冷静じゃいられないし……つか、今もハラワタが煮えくり返ってるし……!」


 ティタニアはギリ……と噛み締めた歯を鳴らす。

 いくらハルシオンがサーヤの身内だったとしても、それは見過ごせる所業ではない。

 今、ティタニアの胸中には、四天王らしいどろりとした殺意が、今にも溢れ出さんばかりに満たされていた。


 それから、シルフィードがファーニュを連れて戻ってくるまで、数分とかからなかった。

 どうやらファーニュはほとんど状況を聞かされないまま連れてこられたようだが、部屋の様子を見てすぐに察した。

 だが、包帯をほどき、サーヤの胸の傷を見ると、困惑する。


「これは……」


「どう?」


 セレナが尋ねると、ファーニュは「うーん……」と唸ってから、申し訳なさそうに言った。


「サーヤさん、どうして生きてるんですかねぇ」


「あんたねぇ、それがわかんないから連れてきたんですケド!?」


「落ち着け、ティタニア」


「シルフィード、こんな状況で落ち着けるわけがないっしょ!?」


「ティタニア様ごめんなさい、でも本当にわからないんですぅ。心臓が欠損してるとかじゃなくてぇ、完全に無いんですよぉ? なのに体に血は巡っててぇ、意識は無いですけどぉ、他の部位は健康そのものでぇ……胸の心臓とは別にぃ、体に見えない心臓でも入ってるとしか思えない状態なんですぅ」


「見えない心臓ぅ……?」


 睨みつけるように、怪訝そうな表情を浮かべるティタニア。


「あとぉ、回復スペルでも心臓の治癒は出来ないので、私は傷を塞ぐことしかできないんですけどぉ、心臓は勝手に治ってるみたいですぅ」


「自然治癒してるってことかよ……」


「ますます信じられない」


「私も目を疑いましたぁ、でも間違いありませんよぉ」


「……あのさ、ウチ、思ったんだけど」


 ふいに口を開いたティタニアに、全員の視線が集中する。


「300年前、マーリンが持ち去ったって言われてる神器。あれ全部、サーヤの中にあるんじゃない? 聖拳術って、普通ありえないじゃん。いくら訓練したって、あんなでたらめな力が身につくワケがない」


「つまりあれは拳術じゃなくって、神器の力を解放してたってこと……?」


「なるほどぉ、サーヤさんの体に埋め込まれた神器の力がぁ、心臓の代わりになって命を繋いでるんですねぇ」


 未だ確証は無いが、それが一番辻褄の合う解釈だった。

 そして、イグニートはサーヤが生き残っていることに気づいていない。

 つまり彼女の生存は、魔王にとっても予想外の事態ということである。


「どれぐらいで治りそうなの?」


「明日かぁ……明後日かぁ……おそらくぅ、イグニートの襲来には間に合わないと思いますぅ」


 宣戦布告の声は、宿の中にいるセレナとレトリーにも届いていた。


「イグニート、新たな神鎧……」


「口調がイフリートそっくりだったし、あいつの人格をコピーして作った人形だと思うケド……悪趣味極まりないし」


「明日の夕方、襲ってくるんですよね」


「あたしらで迎え撃つしかないな」


「ご主人様がいないのは、正直、すごく心細い」


「そうよね……今までだって、サーヤちゃんがいたから何とか戦えてきたんだもん」


 いざイグニートの襲来の話を聞くと、不安にもなる。

 サーヤがいないとなればなおさらに、である。


「前回みたいに“遊び”のある神鎧にだって、ウチらは太刀打ちできなかった……」


 勝てる確率は、限りなく0に近い。

 誰もがそう思っていたし、それが変えようのない事実であるからこそ、イグニートはわざわざ“明日の夕方”と予告して、あえて準備期間を与えたのだろう。

 魔王はこれで、帝国にいる人々やモンスターたちの心を完全にへし折るつもりなのだ。


「戦う前から弱気になってる場合じゃないぞ。サーヤが目を覚ました時、誰かが欠けて悲しませないで済むように、あちしらは完全勝利しなくちゃならないんだ!」


「あんたは前向きだよね、シルフィード」


「サーヤと訓練して、以前の自分より強くなった自信はあるからね。ティタニアはどーなのよ」


「ウチは……」


 ティタニアはサーヤの手を握る力を、少しだけ強める。

 そして軽く目を閉じて、彼女との想い出を想起した。


「自分が強くなったかどうかなんてわからない。むしろサーヤと出会って、弱くなった気がする。でも……これで終わりなんて、嫌だ。まだ自分の気持ちだってちゃんと伝えられてないのに、終わりたくない」


「なら落ち込んでる暇はないな」


 シルフィードは歯を見せて笑った。


「……そーね」


 ティタニアは微笑み返すと、サーヤから手を離し、立ち上がる。

 名残惜しいが、手ぐらいなら、後からだって握れるのだから。


「あちしだって、単純に神鎧と戦って勝てるとは思ってない」


「けど、準備しとけばわからない、と」


「そーゆーことだ」


 元より、ティタニアとて抵抗せずに負けることなど考えいなかった。

 血反吐を吐いて、地面を這いずってでも、抗うつもりではいた。

 だがその先に予測される未来が勝利か敗北かで、モチベーションも変わるというもの。

 無謀かもしれない。

 楽観視しすぎかもしれない。

 それでも――どうせやるなら、勝利を想像しようと思った。

 自信の有無など関係なしに、単純に、サーヤともっと一緒にいたいから。


 決意を固めたシルフィードとティタニアは、部屋を出ていく。

 その姿を見て、ファフニールが口を開いた。


「あたしらも行きますか」


「うん。ご主人様のロリい体を蹂躙するまで死ねない」


 もはやニーズヘッグは欲望を隠しもしない。


「おいおいニーズヘッグ、そこはご主人様と“セレナの”だろ」


「私を巻き込むなっての……!」


「へへっ、でもあたしらが勝って凱旋したら、ジュンと来て気が変わるかもしれないだろ?」


「5P! 5P!」


「この不健全ドラゴンめぇ……!」


「あはははっ! またこういうやり取りができるように、あたしらもがんばってくるさ」


「うん、やれるだけのことはする。命は賭けない程度に」


 二人のドラゴンは、「じゃーな」、「じゃ」と手を上げて、部屋を出ていった。

 セレナとレトリーは、寂しげにその後姿を見送る。


「行っちゃいましたねぇ」


 ファーニュは、サーヤの胸の傷を治療しながら言った。


「みなさんすごいですね。私なんて、倒れてるサーヤさんを見ただけでダウンしちゃったのに」


「その反応の方がマトモだと思うわ。だから落ち込むこと無いっての、レトリーらしくもない」


「お嬢……」


 セレナはレトリーの頭を撫で、微笑む。


「私たちは私たちにできることをしましょ」


「はいっ! あの、でも――」


「何?」


「セレ×レトは流行らないと思います……」


「あんたはぶれないわね!」


 せっかく真面目に慰めていたのに、それを台無しにするレトリーの発言に、セレナは手のひらに力を入れて彼女の頭を鷲掴みにした。


「あいたたたたたたっ! 痛いですっ! 潰れますっ! ひしゃげますぅっ!」


「変形させたらまともになったりしない?」


「しーまーせーんーっ!」


 いつも通りの騒がしいやり取り。

 もちろん空元気だが、それでもただ塞ぎ込んでいるより、ずいぶんと心が軽くなったような気がした。




 ◇◇◇




 その頃、宿の外では、祭りの片付けもほどほどに、人々は戦いに向けて準備をはじめていた。

 子供や老人などの非戦闘員は、帝都の端にある地下施設へ避難していた。

 炎の檻に囲まれた帝都から逃げることはできない。

 イグニートが帝都を滅ぼすと宣言している以上、敗北すれば最終的には殺されてしまうのだろう。

 それでも、誘導する兵士に「ここなら安全です」と言われれば、対象の安寧は得られるものである。


 ギルドには帝都に暮らすほぼすべての冒険者が集まり、派遣された軍幹部の話に真剣な表情で耳を傾けていた。

 もちろんその中には、サーヤを気に入っていたベテラン冒険者や、トムの姿もある。


 オーレの営む鍛冶屋は、軍や冒険者たちから預けられた装備のメンテナンスで大忙しだ。

 パーナスの設計した自動メンテナンスマシンもフル稼働し、寝ずに戦いに備える。


 帝国軍の一般兵は、大砲だけでなく、前時代的な投石機まで奥から引っ張り出し、街に配備していた。

 絶対に逃げられない状況というのが彼らを逆に奮起させたのか、多くの兵は目を血走らせながら、いつになく気合が入っているようである。


 そして、城内の謁見の間には――キャニスター、グランマーニュ皇帝と向き合う、四天王や勇者たちの姿があった。

 もちろん、宿から出ていったティタニア、シルフィード、ファフニール、ニーズヘッグの四人もそこにいる。


「ここに集まったということは、俺たちと一緒に戦ってくれるものと判断するが、それで問題ないか?」


 グランマーニュはモンスターたちに問うた。

 もちろん異論は出ない。

 むしろ、『そんな下らないことはいいからとっとと本題に入れ』という圧を感じるほどである。


「……そうか、助かる」


「今さら聞くまでもなかろう、我らはサーヤに借りがある。彼女のいるこの街を破壊されるわけにはいかん」


 フェンリルは愚問だ、と言わんばかりに答えた。


「つまり人間のために戦うわけではないということだな」


「おい、キャニスター!」


「念の為だ」


 眼鏡をくいっと持ち上げるキャニスター。

 ティタニアは軽く彼を睨みつけながら言った。


「そりゃそーでしょ。ウチはサーヤのために戦うの、文句ある?」


「いいや、無い。むしろそちらの方がわかりやすいぐらいだ」


「はぁ……」


「はははっ、皇帝ってのも大変だなぁ」


「キャニ×グラ来てる」


「レトリー某のような発言はやめてくれ」


 げんなりした様子で言うグランマーニュ。

 レトリーの存在は皇帝にすら恐れられているらしい。

 気を取り直し、彼らは再び四天王に語りかけた。


「それでここに呼び出した理由なのだが、君たちとも最低限の連携は取ったほうがいいと思ってな」


「最低限でいいのか?」


「作戦はきちんと練っておいた方がいいと思うゾ」


「それが作戦だ。サーヤが動けない以上、俺たちの最高戦力は四天王、君たちになる。ならば俺たちに合わせてもらうより、俺たちの方が合わせた方が効率がいいはずだ」


「ってことは、あちしらは好きにやっていいってこと?」


「出せるだけの全力を頼む。俺たちはそれをサポートしよう」


「ふーん……意外と話ができるんだネ、皇帝様って。わかった、ならウチらはウチらで好きにさせてもらうから。仕掛け(・・・)の目処が立ったらあんたらに連絡する、それでいい?」


「ああ、頼んだぞ」


「承知した。そうとわかれば、早速取り掛からせてもらうぞ」


 フェンリルは一足先に、謁見の間を出る。

 ティタニアとシルフィードもそれに続いた。


「好きにしていい、か。なかなかどうして、無理難題を押し付けてくれるではないか」


「イフリートに無理難題なんてあるのカ?」


「相手はあの神鎧だぞ、オレ様でも相手にするのは難しい。だが、オレ様ぐらいの漢になるとな――困難な敵が現れるほど、燃えるものだ」


 パンッ! と拳を自らの手に叩きつけ、不敵に微笑むイフリート。


「すげーナ! さすがイフリート、世界最強の炎の使い手ダ!」


「付き合ってもらうぞ、我が友ノーヴァよ!」


「おうヨ、煉獄の果てにだって付いてくゼー!」


 やる気だけでなく、体の周囲でゆらめく炎まで燃え上がらせながら、部屋を出ていくイフリートとノーヴァ。

 残された勇者たち――フレイグはグランマーニュに尋ねる。


「それで、俺たちは何をしたらいい?」


「フレイグ、君のその剣は対イグニートでも切り札になりうる。その分、使い所が重要だ」


「僕にいい案がある、付いてこい」


 グランマーニュの隣に立っていたキャニスターが、出口に向かって歩きだす。

 フレイグが彼の背中を追うと、シーファは不安げにキャニスターに聞いた。


「あのっ、僕はどうしたら?」


「お前には――はっきり言うが、今度の戦いでの役割は無い」


「おいキャニスター、もっと言い方があるだろう!」


「いえ、いいんです。僕にもわかってますから」


 前回のように、兜があっさり外れるような露骨な弱点は、今度の敵には無いだろう。

 かといって、相手の防壁や装甲を突破するような高い威力の攻撃を持っているわけでもない。

 できることは、せいぜい街中をメッセンジャー代わりに走り回ることぐらいか。


「キャニスター、シーファには俺と一緒にいてもらいたいんだが、駄目か?」


「……何のために?」


「シーファが隣にいるのといないのとでは、俺のやる気が違う」


 キャニスターはそれを聞いて、苛立たしげに頬をひくつかせた。


「それはここで言うことか?」


「ここで言うことだ。次の戦いは、誰が、いつ死ぬかわからないんだろう? だったら恋人に近くに居てほしいと願うのは当然のことだ」


「フレイグ……」


 イグニートが一筋縄ではいかない相手であることを、彼は身をもって知っている。

 前回の神鎧よりさらに強い相手が、この帝都に直接攻め込んでくるとなれば、死者が出る可能性は限りなく高いだろう。


「だが……」


「いいんじゃないか、キャニスター」


「グランマーニュ……はぁ。確かに、フレイグのスペルはやる気が出れば出るほど身体能力が上がる力だ。それで剣の威力が上がるのなら、理屈の上でも間違っているわけではない、か」


 自分を納得させるように、一人ごちるキャニスター。


「わかった、勝手にしろ」


「ありがとう、助かる。行くぞ、シーファ」


「う、うんっ!」


 心なしか嬉しそうに、フレイグに駆け寄るシーファ。

 そして謁見の間に残ったのは、マギカとグランマーニュだけになった。


「私はどうしたらいいんです?」


「マギカ、君は神鎧の展開する防壁を相殺できるらしいな」


「まあ、一応は」


「危険な賭けになるが――」


「まさか、私にまた飛んでけって言うんですか!?」


 以前同じ作戦を取ったときは、マギカが自分の意思でそれを提案した。

 だが今回は、グランマーニュに言われて、飛んでいかなければならないのだ。

 彼女が嫌がるのも当然である。


「そのまさかだ。もちろん、命に危険が及ばないように細心の注意は払うつもりだ」


「その作戦自体に注意が払われてないと思うんですが……わかりました。それしかないんですよね」


「無茶なことを言っているという自覚はある。だがいかんせん、相手が強大すぎるものでな。そうでもしなければ突破口を開けそうにないのだ。詳しい話は砲兵に聞いてくれ、部屋の外で待機している衛兵が案内してくれるだろう」


「砲兵って……もしかして私を飛ばすのって大砲なんですか!?」


「細心の注意は払う」


「めちゃくちゃだあぁ……! あーあ、生きて帰れるのかしら、私……」


 がっくりと肩を落として、部屋を出ていくマギカ。

 その脳裏に浮かぶのは、ファーニュの姿だ。

 慰めや救いを彼女に求めるあたり、身も心もすっかり染められてしまったなぁ、と彼女は別の意味で肩を落とした。

 まあ、そんな仕草を見せながらも、内心ではにやついているのだが。

 そんな本心に気づき、再び肩を落とす――マギカの乙女心は、今日も秋の空より複雑怪奇であった。


 


 

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