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第二十七話 決戦前夜

明智光秀あけち みつひでは本能寺の変後


京の治安を掌握することから動き始めた。


坂本城や安土城という要害を押さえるため


武田元明たけだ もとあき京極高次きょうごく たかつぐらを近江へ派遣し


数日のうちに瀬田城(せたじょう)日野城(ひのじょう)を除く近江一帯を平定した。


しかし、瀬田城の山岡兄弟は光秀の誘いを退け


瀬田橋を焼き落として抗戦の構えを見せる。


光秀は縁戚である、細川藤孝ほそかわ ふじたか忠興ただおき父子にも加勢を求めたが


二人は「喪に服す」として剃髪(ていはつ)


中立の姿勢を装い婉曲に拒絶した。


奥丹後(おくたんご)一色氏(いっしきし)は味方につけたものの


南丹後(なんたんご)の細川勢は動かず


筒井順慶つつい じゅんけいは表向きは協力を約しながら


密かに秀吉方に心を寄せていた。




秀吉接近の報せが届くや


光秀は急ぎ淀城・勝龍寺城(しょうりゅうじじょう)の修築を命じ


男山から兵を引き上げた。


だが羽柴軍の進軍速度は光秀の予想をはるかに超えており


兵力差は二倍、いや三倍とも囁かれる中で


決戦は避けられぬ情勢となる。




その夜、羽柴軍の本陣では


伊東祐兵いとう すけたか天王山てんのうざんの闇を見据えていた。


そこへ軍師・黒田官兵衛くろだ かんべえ河崎祐長かわさき すけながが現れる。


祐兵(すけたか)様……この戦、勝てまするか」


祐長(すけなが)が低く問う。


「勝たねばならぬ。日向再興の道は、この一戦に懸かっておる」


祐兵(すけたか)は焚き火の光を瞳に映し、静かに言った。


官兵衛が口を開く。


「光秀殿は備えを整えきれておりませぬ。我らは速さと奇襲で敵の心を折る。祐兵すけたか殿には、その刃の先となっていただきたい」


祐兵すけたかは力強く(うなず)く。


「ならば、命を一つにして戦いましょう」


やがて秀吉が官兵衛を伴って祐兵(すけたか)の陣を訪れた。


祐兵(すけたか)、そなたの武勇は耳にしておる。明日は敵の左翼を崩す役、任せてもよいな」


祐兵(すけたか)は膝をつき、深く頭を下げた。


「必ずや、ご期待に応えてみせます」


秀吉は笑みを浮かべ、官兵衛に目をやる。


「この男、使えるぞ」


官兵衛が静かに答える。


「秀吉様、祐兵(すけたか)殿は日向再興を胸に秘めております。その執念こそ、勝利の刃となりましょう」


遠くで陣太鼓が鳴り、兵たちは槍を磨き、弓弦(ゆみづる)を張る。


月が雲間から顔を覗かせ、決戦の夜は静かに更けていった。

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