#三等重役 #書籍 #小説
『三等重役』(さんとうじゅうやく)は、源氏鶏太による日本の小説であり、同作を原作とした1952年(昭和27年)製作・公開の日本の長篇劇映画、および『続三等重役』『一等社員 三等重役兄弟篇』の3作のシリーズである。映画版は『新三等重役』に始まる第2シリーズを生んだ。
(Wikipedia日本語版より)
三等重役
源氏鶏太 作
新潮文庫 刊
戦後間もない話。GHQは戦争責任を追及するべく日本の政財界から主な重要人物を公職追放した。
そのせいで昨日はヒラだった人々が急に出世。はからずしも世代交代を果たした日本企業は驚異の復興を成すべく奮闘する……そんな時代。
先代が公職追放されて社長になってしまったおじさんとその側近である人事課長の元には次々難問奇問が降りかかる。浮気好きの取引先による夫婦の危機、社員の奥方が結成する集会がスパイ組織的に社員を追い詰める。あるいはボーナスをめぐって妻に渡すかへそくりを作るかの激闘。仲人をするのが趣味の社長は普段頼りにならないがおろおろしながらも時々漢気を見せ、困難を乗り越えていくのである!
しかし、基本へっぽこで愛すべき人物である。連作短編集だが600ページある。電車に乗りながら一日1エピソード読めば当面楽しめる。だが一気読みするなら辞書を読むほうが楽だ。あくまで自分のペースで本作の主人公桑原社長のようにのんびり読み進めてほしい。
============
新・三等重役(上)(下)
源氏鶏太 作
新潮文庫 刊
「きみ。あんないい女を放っておく気かい? いっちゃ下衆だが顔も体も最高だろ」
本作はまとまった短編集になることと、前作から八年経ち現代仮名遣いに近い文体になって行間がとられるようになったので前作に比べて文学誌があかほ●さとる作品になったくらいに読みやすくなっている。その代わり前作ののんきさはなくなった。8年も経つと公職追放から日本経済も大回復してテレビを売りまくっていた時期だ。
本作は上下合わせて1100ページあるけど筆者は5日くらいで読めた。なぜならヒロイン箱田章子さんがかわいいからである。
本作は大人の恋愛コメディだ。
千人いる関西の会社。その実に七割が平均年齢22歳の女子社員(※この時代なので役職なし)。
その女子社員をまとめる大姐御が御年32歳。結婚しないことが社内七不思議にされてしまっている箱田章子。
彼女に振り回されるのはこれまた再婚しないことが社内七不思議に数えられている沢村専務。
そもそも沢村専務と社長は亡き前社長に大抜擢されて一気に出世しており、大株主である前社長夫人に頭が上がらない。この夫人がやれ女子社員が自分を知らないから社員教育をやるだの占いで土地買収が良くないと出ているだのはちゃめちゃな口出しをしてくるのだ。
利用するつもりで利用され、やっつけるつもりでとっちめられている。
章子と沢村専務の丁々発止のやり取りと『顔も体も最高だが、何故好き好んであんなオールドミスを嫁にしなければならない!』とか結構最低な内心爆発の沢村専務。彼は遊びも仕事もできる人物である。
だからあちこちで女の子と遊ぼうとする。そして章子に阻まれる。なぜそこにいる!
『しかし、俺は章子に不潔な男と思われているから結婚はありえない』
沢村専務。その章子さん時々顔真っ赤だったりしますよ。ささやかな気遣いの言葉にウッキウキしていますよ?
沢村専務と箱田章子のコンビは社内で起きる様々な問題(※多くは前社長夫人のやらかし)を解決し、社内の恋愛問題を見事に次々と円満解決していくが……。
『で、君たちいつ結婚するのだ?』
有能なる社長のツッコミが時々冴える!
大人なので二人は深謀遠慮の塊。故に踏み切れない勢いのなさが命取りとなるか愛を育む力になるか。じれじれとイキイキのバランス取れたラブコメをご堪能ください。




