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ペンギンが教えてくれた物理のはなし
渡辺 佑基 著
受賞
第68回毎日出版文化賞
単行本 B6 ● 256ページ
ISBN:978-4-309-62470-9 ● Cコード:0345
発売日:2014.04.14
定価1,540円(本体1,400円)
この本の内容
目次・収録作品
ペンギン、アザラシ、アホウドリ……人間の計り知れない世界を生きる動物たち。その体に記録機器を取り付ける手法「バイオロギング」を用い、驚くべき動きのメカニズムを明らかにした1冊。
著者コメント
皆さん、こんにちは。ペンギン、アザラシ、魚などの海洋動物を研究しています、渡辺佑基と申します。このたび、私の研究やフィールドワークの経験をまとめた本が完成しました。
海洋動物の動きは驚くくらいにダイナミックです。マグロは太平洋を横断してまた戻ってきますし、アザラシは一時間も息をとめられます。なぜそんなことができるのかという素朴な疑問からスタートして、進化の不思議を解き明かしていこうというのが本書の狙いです。生物学というとどうしても、実験室で顕微鏡を覗いているイメージが強いですが、こちらは電気や水さえ満足に使えない、大自然のフィールドから発信する生物学です。
私は著者であるより先に、ポピュラーサイエンス本のいちファンです。だから以前より、もし自分自身が著者になったあかつきには「こういうものを作りたい」という理想像が、具体的にありました。それは研究例を羅列するのではなく、一本のストーリーに沿ってするすると読める、楽しいものに仕上げることです。
この目的はそれなりに達成できたと自負しておりますので、どうぞ一度手に取ってご覧ください。
著者
渡辺 佑基 (ワタナベ ユウキ)
1978年生。国立極地研究所生物圏研究グループ准教授。極域に生きる大型捕食動物の生態を研究。東京大学総長賞、山崎賞、第68回毎日出版文化賞受賞。著書に『進化の法則は北極のサメが知っていた』。
(河出書房さんのサイトより)
マグロは時速8キロメートルで泳ぐ。あれ?!
カラスノさん間違っていますよ。マグロは時速160キロで泳ぐのです。
うん。おれも『マグロは時速160キロで泳ぐ―ふしぎな海の博物誌』は夢中になって読んだ。問題は時速160キロって体表から泡出して進んでいるのかよな速度ってことだが。最近の研究では違うんだってさ。なんでも当時はリールをぐいぐい引かせて伸びた糸の長さで測ったそうで、その時は画期的な研究だったらしい。
本作はいろいろなものになりたがった少年だった著者が物理の明確な法則。野球の凡フライから飛行機が飛ぶことまで簡潔に示してくれる魅力に取りつかれ……なぜか生物学者としてペンギンだの鵜だのクジラだの、果ては九州なみに広いバイカル湖固有種バイカルアザラシに行動記録をつけるための機械をつける専門家として世界を駆け巡る羽目になっているというよくわからない冒険だか珍獣記録(※著者をはじめとしたニンゲンも含まれると思われる)である。例えばマンボウが好きで好きでマンボウネタのTwitterやっている人と……あれ?! その人知っているぞ!?
生物学者という職業は大抵師匠筋にレジェンドメンバーがいたりするが、生物学に物理学ほど相性がよさそうに見えないジャンルはない。が、結構な割合で物理でなんでもかんでも説明できてしまうことを著者は本書で示す。
「マンボウの背びれと尻びれは(見た目はさておき)全然別のものなのに、なぜか水中を泳ぐ翼として機能している」
「アホウドリは羽ばたきもろくにせず46日で地球を一周する」
おい! 80日間世界一周より速いぞ!
でも時速8キロで泳げたら結構地球をぐるぐる回れるらしい。一年中TUBEのコンサート状態でいつでも夏。ましてアホウドリならなおさらだ。
ちょっと待て何故はばたかずに飛べる!?
実は振り子の原理と風上風下の有効活用で飛んでいる。
これは位置エネルギーと運動エネルギーなどで容易に解説できる。
そもそも水と空気では抵抗が違う。またホバリング飛行を行うハチドリや昆虫(有名なのは『飛べるわけがない蜂』として有名な熊蜂)サイズになると空気の粘度が変わり昆虫は肺を持たずとも気門を全身に装備して身体を動かすことができる。
ちなみに物理学では鳥の羽ばたきと滑空は別の原理になる。最近の研究では羽ばたきに渦ができるらしい。ひょっとして空ならぬ水を飛ぶペンギンにもその渦は出来るのか?!(キラーン!)
『鳥は飛行機のように飛んでいないしそもそもあいつらの羽は流線型してない』
次々判明する驚愕の物理学と工業デザイン的生物の構造。
さらに時々作者が罹患する中二病的食い物うんちく。もっとも数か月たてば治る。南極帰りは伊達じゃない。
フランスの越冬隊は通信はゴミでもフランスパンの旨さには全力投球予算らしい。そんなフランス留学経験を謳う筆者。実際はケルゲレン島で鵜の仲間とキャッキャウフフである。若い娘とシャンゼリゼどころじゃない。
そうして世界をめぐって物理学を語りつくして、たまに日本に帰ったらビールがとってもおいしい。多分この方凝りていない。
『光の強さで緯度を大雑把に測ったりGPSしたりできる各測定器を用い動物の動きを動物自身に測定させるバイオロギング手法が明らかにした野生動物のダイナミックな動きを紹介し、その背景にあるメカニズムや進化的な意義を明らかにすること』→名づけ。『ペンギン物理学』
すっきりした! おいそれでいいのか。
大丈夫だ。ニシオンデンザメの目玉にカイアシ類の寄生虫が巣食っている謎よりスッキリする。案外寄生虫がホルモンでも出して目玉の代わりをやっているかも知れんがそんなことはどうでもよろしいし鴉野の妄言だ。
そんなことよりきいてくれ。マンボウには浮袋がない。
なんで浮くんだよ!
それよりきいてくれ。クジラは元は陸上生物だ。
オットセイもアシカウミガメも肺呼吸でなぜかむっちゃ海中に適応している。お前ら出鱈目かよ!? というかハチドリだって昆虫の真似していたら昆虫と同じ生活様式になってしまっている。生物は次の遺伝子を残せればそれでいいので結構出鱈目な進化をする。悲しき専門化である。
それを筆者は『バイオロギングしかしない自分もハチドリと同じでは』と不安に思っていたりする。
とりあえず近所のルリビタキにウッキウッキしたり、南極行くときペンギンがどんどん増えて一直線に列車のようになって腹で滑って行ったり、ウェッデルアザラシの子供の警戒心ゼロっぷりやキタゾウアザラシの趣味は寝ることです状態に『あなたそれでも野生生物か』と突っ込んだりする様子を見れば……多分大丈夫です。




