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ありそうでなかった! 三〇〇回以上 #小説家になろう に #レビュー した記事をコピペでまとめ!  作者: 鴉野 兄貴
311-315

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#聲の形 #映画

映画 聲の形

the shape of voice

監督山田尚子

脚本吉田玲子

原作大今良時(講談社コミックス刊)

出演者入野自由

早見沙織

悠木碧

小野賢章

金子有希

石川由依

潘めぐみ

豊永利行

松岡茉優

音楽牛尾憲輔

主題歌aiko「恋をしたのは」

撮影髙尾一也

制作会社京都アニメーション

製作会社映画聲の形製作委員会

配給松竹

公開日本の旗 2016年9月17日

スコットランドの旗 2016年10月22日(SLA)

イギリスの旗 2016年11月6日(LIFF)

シンガポールの旗 2017年3月9日

イギリスの旗 2017年3月15日

アイルランドの旗 2017年3月15日

タイ王国の旗 2017年3月23日

台湾の旗 2017年3月24日

カンボジアの旗 2017年3月31日

オーストラリアの旗香港の旗 2017年4月6日

ニュージーランドの旗 2017年4月13日

マレーシアの旗ブルネイの旗 2017年4月20日

インドネシアの旗 2017年5月3日

メキシコの旗 2017年5月5日

コスタリカの旗エルサルバドルの旗 2017年5月5日

グアテマラの旗ホンジュラスの旗 2017年5月5日

パナマの旗ペルーの旗 2017年5月5日

大韓民国の旗 2017年5月9日

フィリピンの旗 2017年5月10日

ベトナムの旗 2017年5月12日

ボリビアの旗アルゼンチンの旗 2017年6月8日

パラグアイの旗 2017年6月9日

チリの旗 2017年6月17日

エクアドルの旗 2017年6月23日

コロンビアの旗 2017年7月28日

中華人民共和国の旗 2017年9月8日

ドイツの旗オーストリアの旗 2017年9月26日

アメリカ合衆国の旗 2017年10月20日

イタリアの旗 2017年10月24日

カナダの旗 2017年11月10日

スペインの旗 2018年3月16日

上映時間129分

製作国日本の旗 日本

言語日本語

興行収入日本の旗 23.0億円[1]

世界の旗 $31,648,638[2]

(約35.3億円)

(Wikipedia日本語版より)

 鴉野はかなりの間とある女性を殴っていた時期があると告白せねばならない。

 主に小学生から中学生の頃だったと記憶している。

 風の便りによれば彼女は既に死んでいるそうで、通勤に伴って彼女の家の前を通るときそのことを深く悔やむことよりも早く電車に乗ることに注力していることも伝えなければならない。


 その女性は大変容姿に恵まれていなかったが実家が小金持ちで自己顕示欲が強く、周囲のクラスメートという名前の付いた子供たちが変わり者かつ癇癪持ちの鴉野とその子をカップル認定してからかうと必死で否定する鴉野は彼らの思いのまま彼女を殴ってカップルではないと自己証明をせねばならない状況だった。彼女にとっては多少の醜さ(少なくとも太り過ぎていたり痩せすぎてはいない)程度でそのような目に遭い、コミュ障で癇癪持ちで暴力的な少年の彼女扱いされてはたまらなかっただろう。

 ある程度『無笑』の企画で化粧を覚える羽目になった今の鴉野の感覚で考えると多少鼻は横に広がっているが許容範囲でありをちょいちょい化粧すりゃブサイクと呼ばれることはない程度には盛れる自信がある。色黒に関しては鴉野の好みと合致する。平均値だが小柄な鴉野よりは背が高い。背が高くて健康的ならなおさらいいだろう。ぶっちゃっけ問題ない。

 だとすればあの日々はなんだったのだろう。


 この物語の主人公はいじめの加害者である。

 生まれながらに耳が不自由で筆談しかできない少女を揶揄う子供たちの旗印役を演じ、そのまま『旗』は飽きて捨てられてしまった。ごみのように。担任や大人たちも捨てた。例外は補聴器代170万円を即日払って詫びた母だけである。


 友人にも担任にも因果応報とばかりに捨てられた彼は他人の顔が見えなくなった。

 すべてが『×』と見える。

 彼はアルバイトをして170万円を貯める。死ぬために。母に返すために。

 家では奔放な姉がとっかえひっかえ男を連れ込み、連れ子の面倒は彼が見ている。


 かつての人気者、今はいじめられっ子。

 あるいは存在すら認められない空気。毒ガス。


 彼の世界は閉じられていた。

 ふいに、戯れに助けた少年が彼に付きまとう。少年の『×』が剥がれた。


 170万円を返すことは、自殺はできなかった。

 彼はかつていじめていた少女に再会してしまう。


 拒否。戸惑い。恐怖。贖罪。悔み。

 彼女もまた、『いないほうがよかった』。



 彼女の身内は死体を写真に収める。

 生きていてほしいから。

 彼女の身内は彼を拒否する。

 いまだ許されることはない。


 謝罪の言葉は上滑り。手話は見えているのに伝わらない。

 この世界は既にあるのに、それを受け取るフィルターである人はどこか破れ壊れている。


 言葉は常に反逆で、逆説の中で世界は輝く。

 輝く世界は汚く苦しくもの哀しく。そのくせ他人にはキラキラと憎たらしく光っているのだ。


 世間体しか気にしない少女。

 人を信じない少年。

 恋する心が深刻なすれ違いを生み出したことを後悔し続ける少女。


 少年少女たちの思いは、言葉があるのに形にならない。


『生きる事を手伝ってほしい』


 行きたい。生きたい。活きたい。逝きたい。あの場所に往きたい。


 弱者は協力し合うは大嘘だ。かくも弱きものは潰しあう。

 ならば本当の強さとはなんだろうか。暴力で全てを潰し覆いつくすことだろうか。


 鴉野はいたずら者の同級生どもにフルボッコにされたとき、中学の担任がこう述べたのを今でも覚えている。


「(一人逃げずに立ち向かい、暴力を使わず屈しない)鴉野君のほうが君たちより強い」


 癇癪もちだった当時の鴉野は担任の言葉を半分も理解できていなかったが、この言葉は長く鴉野のこころにとどまり続けた。



 もちろん力なき理想論は暴力で打ち砕かれるのはわかる。

 しかし力を持つならあえて振るわないことを選択する。ないならば弱さと向き合う。

 自分の醜さ、哀しさ、辛さと、過去と向き合うのは本当に辛いことだ。


 それを多くの人間は知らないふりをして過ごす。何年も経って振り返れば大したことなくなっていても大きな傷だと感じて恐れ続け、心の隅にも留めぬようにばかげて振る舞う。


 美しいものは言葉にせず、作品にせずとも自然界に存在している。

 それをあえて認識し、言葉や芸術にするのは翻訳という名の反逆とあざなできなくもない。

 しかしそうせねば少なくとも自分は物事を認識することすらできない。驚き、発見、深い人生の悲哀が物事を再定義していく。



『生きる事を手伝ってほしい』


 弱さを認める事。強さを振りかざさない事。

 それができてしまい、協力しあえるならばもうその者は『強者』と言って良い。


 彼らは弱さに打ち勝った。

 弱さの連鎖を断ち切る力を得た。


 その愛が続くかは、誰れが知るか。


『聲の形』


 声、手、耳をもって想いを伝えよう。

 愛していると伝えれば。


 とはいえ、鴉野はやっぱり美人でかわいい彼女のほうが良い。

 この辺、自らの未熟さを思い知る次第である。

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