第9話 義兄たちとの夕食
「お嬢。夕食の時間なのでご案内します」
一通り屋敷内を見て回りだだっ広い自分の部屋でテレビを見ていた私に吾郎丸さんが声をかけてきた。
時計を見ると18時を過ぎている。
いつの間にか夕食の時間か。
でも18時に夕食ってかなり規則正しい食事時間のような気がするな。
私は大学が終わるとバイトをすることが多かったので帰宅時間はいつも20時くらいだった。
それから夕食を食べるので18時に夕食を取るのは久しぶりな気がする。
そういえばバイト先にまだ連絡してなかったな。
今日はバイトがない日だったけど明日はシフト入ってたしバイト行かせてもらえないだろうか。
だが昼間の天飛さんの様子を考えるととてもバイトに一人で行くことを許してもらえそうにない。
しかし今のバイト先は時給が高いのでできれば辞めたくない。
たとえ一時的にこの火風光家で暮らすことになったとしてもお母さんたちが新婚旅行から帰って来たら義父とかけ合ってまた一人暮らしさせてもらう予定だ。
その時のためにも条件の良いバイト先を確保しておくことは大事なことだ。
夕食には天飛さんも一緒だって言ってたよね。
それならバイトを続けさせてもらえるように頼んでみようかな。
「夕食には天飛さんもいらっしゃるんですよね?」
「はい! カシラと白煉獄組の暁刀組長さんと愛斗さんがご一緒です!」
そうだった。私には三人の義兄がいるんだった。
愛斗さんはさっき会ったけど次男の暁刀さんはまだ会ってないんだよな。
どんな人なんだろう……
「吾郎丸さんから見て暁刀さんってどんな人ですか?」
私は事前に暁刀さんの情報が欲しいと思い吾郎丸さんに訊いてみた。
どんな人物か最初に分かっていれば心構えができる。
するとなぜか吾郎丸さんの顔が赤くなった。
そして少し恥ずかしそうな口ぶりで話す。
「その……暁刀さんは……う、美しい男性で、怒らせると怖いですけどめちゃくちゃ素敵な人です!」
暁刀さんのことを語る吾郎丸さんの瞳がキラキラと輝いている。
う、美しい男性……? 男の吾郎丸さんから見て美しいと思うなんて。
それって吾郎丸さんの主観的な意見だろうか。それとも客観的な意見なのだろうか。
主観的なら吾郎丸さんってもしかしてボーイズラブなのかな。
私は思わず顔を引き攣らせてしまう。
けしてBLが嫌いなわけではないがそれは二次元での話。
三次元のBLは正直ちょっと怖い。だってもし暁刀さんもそっち系ならヤクザの組長と新人組員のBLということになる。
あ、でもBLならそういうシチュエーションもあるなあ。
いやいや、勝手に暁刀さんがそっち系だと考えたら失礼か。
「そうなんですね。それじゃあ、食堂に行きますから」
「はい」
危なくなる思考を一度停止して私と吾郎丸さんは食堂に向かう。
そして食堂の扉を吾郎丸さんが開けてくれた。
「どうぞ、お嬢」
「失礼します」
食堂に入るとそこには予想通り三人の男性が席についていた。
ひとりは天飛さん、もうひとりは愛斗さん、そして三人目の男性を私は見た。
前髪が長く右目を隠すように流した髪型をしておりその髪の色はなんと銀髪。
私を見つめるその男性の左目は青い。
そして吾郎丸さんの言った通り超絶綺麗な顔立ち。この人なら三次元BLでもOKだ。
この人が暁刀さんだよね?
BLの主人公でも許せる顔面だけど私の義兄なのに銀髪に青い瞳って、暁刀さんは日本人じゃないの……?
暁刀さんと思われる男性はその瞬間、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「リンリン! 会いたかったよ」
は? リンリンって私のこと……?
っていうか日本語ってことはやっぱり日本人なのかな。
「あ、あの……リンリンって私のことですか……?」
「もちろん! 凛子だからリンリン。可愛い呼び方でしょ? 僕が考えたんだ。いいセンスだと思わない?」
いえ、思いません。
リンリンなんてパンダの名前じゃないんだから。
「そ、そうですね……」
それでも相手がヤクザの組長をやってる人物だと思えばその言葉を否定することもできず私は無難にそう答える。
「ところであなたが暁刀さんですか……?」
「あ、ごめんね。自己紹介がまだだったね。そうだよ、僕がリンリンの二番目の義兄の白煉獄組の組長をやってる暁刀だよ。これからよろしくね、リンリン」
「よ、よろしくお願いします……暁刀さん」
暁刀さんの中では私の名前はリンリンに決定してるらしい。
すると天飛さんの声が聞こえた。
「とりあえず席に座れ、凛子。食事をしながら義兄妹で仲良く語り合おうじゃねぇか」
「は、はい」
私は用意された席に座る。
正面には天飛さん、右側には暁刀さん、左側には愛斗さんという配置だ。
この三人に囲まれての食事って緊張するな。
仲良く語り合うことなんてできるのだろうか。




