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極道の義兄ができました  作者: リラックス夢土


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第13話 バイトに行く条件



 テーブルの上に注文した通りに和食の料理が並び私はようやく夕飯を食べ始めた。



 あ、この煮物の味好きだな。

 こっちの焼き魚もおいしいし。ここの家の料理人さんってすごい腕前かも。



 アパートにいた頃はいつも簡単にできる物を作って食べるかレトルト食品で食事を済ませていた私にとって火風光家の食事はご馳走だ。

 夢中で食べていたが私はあることを思い出した。



 そうだ。明日のバイトに行かせてもらえるように天飛さんに交渉しないと。



「あの、天飛さん。お願いがあるんですが……」


「なんだ? 凛子のお願いなら何でも聞いてやるぞ」


「明日は大学は休みですがバイトがあるのでバイトに行っていいですか?」


「ダメだ」



 もしもし、私のお願いなら何でも聞いてやるって言いませんでしたか?

 それともその言葉はヤクザさんの言葉を信用してはいけないということを私に教えただけだったのだろうか。



 それでもここで簡単に引き下がる訳にはいかない。

 お母さんが帰って来てまたひとり暮らしをするためにも私の資金源を確保しておくのは重要なのだから。



「いえ、今のバイトは時給もいいので辞めたくないんです。どうかお願いします」



 すると天飛さんは食事するのを中断して私に鋭い視線を向けてくる。



「金が欲しいなら俺が小遣いをやる。いくら欲しい?」


「私は天飛さんからお小遣いをもらうつもりはありません」



 天飛さんの視線に怯みそうになるが私は自分の意見をハッキリと告げる。

 私が欲しいのはお小遣いではなくひとり暮らしに戻った時の生活費となるお金だ。


 それに私は大学生とはいえ成人した大人。

 身内からお小遣いをもらうような立場はもう卒業したのだ。



 お母さんからも学費以外のお金をもらっていないのに義兄とはいえ天飛さんからもらえるわけないじゃん。

 たとえもらえるとしてもヤクザの天飛さんからお金の援助を受けたら何かと怖い気がするし。



「俺からの金は受け取れないというのか? それなら暁刀や愛斗の金なら受け取る気か?」



 なぜそういう考えになるのだろうか。

 私は誰からもお小遣いもらうつもりはないってば。



「私は誰からもお小遣いはもらいません。自分の使うお金は自分で稼ぎます」


「なんだと? 女というのは男から金をもらうのが当たり前なんじゃないのか?」


「は? 何でですか? 普通、大人になったら自分で使うお金は自分で稼ぐのが当たり前ですよね?」



 まあ、結婚して専業主婦だったら夫の稼ぎで生活することもあるだろうが私は結婚していない。

 それに天飛さんの言い方だとまるで女が男に金を貢がせるのが当たり前のようなニュアンスがある。



 もしかして天飛さんは私をキャバ嬢か何かだと思っているのだろうか。

 天飛さんの周りにいる女性って天飛さんにタカっているのかな。



 脳裏にヤクザの天飛さんに群がるキャバ嬢たちの姿が浮かぶ。

 ヤクザとキャバ嬢。組み合わせとしてはありふれているがなぜか想像すると胸の奥がもやもやする。



 なんだろう。この気持ちは……



「タカ兄。リンリンがお金で買えるようなどこにでもいる女だと思わないでよ。僕のリンリンはお金に変えられないほど価値の高い女なんだからね」


「そうです。暁刀兄さんの言うとおりです。凛子さんはキャバ嬢ではありません。凛子さんは私たちの義妹です。天飛兄さんにいつもタカっている虫ケラのような女とは価値が違います」



 暁刀さんと愛斗さんが私の価値は高いと評価してくれるが私が言いたいのはそこではない。

 私の価値が高かろうが低かろうが自分の生活費を自分で稼ぎたいと言いたいだけだ。



「いえ、そうではなく私はただ自分の使うお金は自分で稼ぐのが当たり前だと言いたいだけで……」


「なるほど。凛子は自分のシノギで稼ぎたいということか。確かに俺たちの義妹なら自分のシノギで稼ぐくらいの能力があって当然だな」



 天飛さんは納得がいったという顔をした。



 ただのバイトを天飛さんたちが稼ぐシノギと同じだと言ってもいいのだろうか。

 別に私がやってるバイトって闇バイトじゃないですよ。



「それなら凛子がバイトに行くのを認めてやる。凛子にも自分のシノギで稼ぐ権利があるからな。ただし護衛に吾郎丸を連れて行くことが条件だ」



 バイト先に吾郎丸さんを連れて行くのか。

 う~ん、とりあえずその条件を呑めばバイトしていいならここは譲歩しよう。



「分かりました。吾郎丸さんを連れて行きます。あの、でも、ひとつだけ私も条件をつけていいですか?」


「なんだ? 凛子」


「吾郎丸さんがバイト先に来る時は目立たないようにスーツを着ないで私服で来て欲しいんです。スーツ姿だとたぶん目立つので」



 スーツ姿の吾郎丸さんはどう見てもヤクザさんにしか見えない。

 そんな人をバイト先のお店に連れて行ったらバイト先がパニック状態になるに違いないので私はそう条件をつけた。



「分かった。吾郎丸にはスーツ以外の私服で凛子の護衛をするように言っておく」


「ありがとうございます」



 とりあえず天飛さんからバイトに行ってもいい許可が取れて良かったな。

 これでバイトが続けられるからまたひとり暮らしに戻っても大丈夫。



 私は自分のいざという時の資金源を断たれずに済んでホッと胸を撫で下ろした。

 



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