第11話 義兄妹盃
「あの、日本語を教えてくれたって……暁刀さんは日本人じゃないんですか……?」
暁刀さんの外見は銀髪に青い瞳。
普通に考えれば日本人とは思えない。
だけど暁刀さんは天飛さんと愛斗さんと兄弟のはず。
それとも兄弟というのはヤクザさんの世界の盃を交わした義兄弟ということなのだろうか。
「ああ、僕はね、国籍は日本人に間違いないけど8歳まで外国暮らしだったんだ」
「外国暮らし……?」
「暁刀は俺の親父の妹に当たる叔母の息子だったんだ。暁刀の両親が亡くなって暁刀は親父の養子になった。だから暁刀は俺と愛斗とは血筋的にはいとこになる」
天飛さんが補足するように説明してくれる。
なるほど。ヤクザさんの義兄弟ではなく私と同じ養子縁組で天飛さんたちと義兄弟になったのか。
「そうなのよ。それに僕のパパは北欧人でね。両親が亡くなるまでは北欧に住んでたから僕の周りに日本人がママしかいなかったの。そのママが日本語を教えてくれたからちょっとだけ女言葉になっちゃったみたいなの」
母親に日本語を教わったから女言葉になったのか。
暁刀さんが北欧人と日本人のハーフだったとは。
でも暁刀さんは自分のことを「私」とは言わないよね。
「でも暁刀さんは自分のことを「僕」と言いますよね? 暁刀さんのお母さんから日本語を習ったから女言葉になったなら、なぜ「私」ではなく「僕」なんですか……?」
「それは僕のママが「暁刀は男の子だから自分のことは僕って言いなさい」って教えてくれたの」
暁刀さんのお母さん。そこまで教えるならちゃんとした男言葉を教えてあげれば良かったのに。
しかし今更、そんなことを言ってもどうしようもない。
まあ、別に暁刀さんの言葉が女言葉の混ざるちょっとおかしな言葉でも私と会話するのに問題ないのだから良しとしよう。
「だから僕はリンリンと同じで火風光家の養子なの。リンリンと同じなんて僕とリンリンは運命の糸で繋がっていたのよね。嬉しいわ」
暁刀さんはニコニコと笑顔で嬉しそうだ。
いえ、私はヤクザの組長さんと運命の糸で繋がっていたくなかったですが。
ただのイケメンのハーフのお兄さんが私の義兄になったのなら私も素直に喜べたかもしれない。
しかし暁刀さんは白煉獄組の組長さんだ。そのことを忘れてはいけない。
「暁刀。凛子は俺たち兄弟と運命の糸で繋がっていたんだ。お前だけ繋がってたわけじゃねぇ」
天飛さんが低い声で暁刀さんの言葉を訂正する。
いやいや、できればその運命の糸をハサミで切っていいですか。
ヤクザさんとか暴走族さんと運命の糸で繋がっていたくないんですけど。
そうは思うもののこの三人の義兄が私に乱暴をしたわけではない。
まあ、天飛さんに拉致はされたがそれも私の身の安全のためという理由があるわけだし。
それに天飛さんとならヤクザの肩書きを無しにすれば運命の糸で繋がっていたことに感謝したい。
だって本当に天飛さんは私の好みの顔してるから。
暁刀さんだって愛斗さんだって一応、私に優しくしてくれるし、もしかしたらそれほどこの三人の義兄が持つ肩書きに拘る必要はないのかも。
「それじゃあ、夕飯を食うか。まずは飲み物だな。凛子は酒は飲めるか?」
「あ、はい。そんなに強いってわけではないですけどお酒は好きです」
天飛さんの問いかけに私はそう返事をする。
私はお酒は好きだが生活費を節約するためにお酒を飲むのは特別な日だけと決めていた。
「そうか。おい、用意しろ!」
天飛さんの声で食堂に数人の男たちが現れた。
その中の一人の男の人が私の前に盃を置く。
何だろう、この盃は……?
他の三人の前にも盃が置かれて天飛さんの前には日本酒の瓶も置かれた。
「今夜は凛子と俺たちが義兄妹になった最初の食事だ。だから今夜の食前酒は皆で同じ酒を飲むことにする」
天飛さんは日本酒の小瓶を手に取り暁刀さんと愛斗さんが手にする盃にお酒を注ぐ。
「さあ、凛子。お前も盃を持て。俺からの酒を入れてやる」
ちょっと待って! もしかしてこれが本当の義兄妹盃というものでは!?
私はヤクザになる気はないですけど!
心の中で叫ぶがこの状況で天飛さんの盃を断った方がどうなるか分からないので怖い。
顔を引き攣らせながら私は自分の盃を手に取り天飛さんからお酒を注いでもらった。
「では、乾杯するぞ」
天飛さんが自分の盃を手にする。
「乾杯!」
『乾杯!』
三人の義兄たちが次々に自分の盃を飲み干す。
「か、乾杯……」
少し遅れて小さく乾杯の言葉を口にした私も自分の盃を飲んだ。
「これで凛子は俺たちの義妹になったな。盃の絆は血の繋がりよりも強い。これからは仲良くしようぜ、義妹よ」
ニヤッと笑う天飛さんの目が私を逃がさないとでもいうようにギラリと光る。
その鋭い視線に私の背筋がゾクリとした。
マジでヤバい相手の義妹になっちゃったかも。




