表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/15

9話

 ある日、僕の家に一匹の犬がやってきました。

 お母さんが道に捨てられているのを拾ってきたそうです。


『お母さんありがとう! 僕、この子大事にするよ!』

『えぇ、ちゃんとエサをあげるのよ?』

『はーい! おいで! "猫"!』


 僕は、その犬に"猫"と名付けて飼うことにしました。

 猫は最初こそ怯えていましたが、すぐに僕に懐いてくれました。


 "ワンワンッ!" ペロペロ


『あははっ! くすぐったいよ猫ったら!』


 毎日のように僕らは公園で遊び、僕と猫は友達になりました。

 僕には友達があまりいないので凄く嬉しかったです。

 ずっとずっと一緒だよ、猫。

 大好き。

















 ある日、猫が庭で死んでいました。

 全身が血だらけで、それはひどい姿でした。


『……な、んで……なんで……ずっと、一緒だよって言った、のに……友達だったのに……こんなの、ひどいよ……猫……猫ぉ……ごめんね、僕が……僕がちゃんと見てなかったからぁ……!』

『あら? その犬死んじゃったの?』

『……お母、さん……?』

『可哀想に……よしよし』

『う゛ぅ゛! うぁああああ! 僕、猫を死なせちゃったぁああああああ!!』

『……ねぇアカネ……確かにこの犬は可哀想よね……でもね、この子はアカネに飼われてすごく幸せだったと思うわ』

『……ぐすっ……そう、なの……?』


 僕は、いまだに止まらない涙を拭きながらお母さんの顔を見つめました。

 お母さんは凄く優しい顔で、僕の頭を撫でながら言います。


『そうよ、だってあんなに可愛がってあげてたんだもの……きっと今も天国でアカネのこと見てくれているわ』


 お母さんの手を握りながら猫のほうを見つめます。

 僕もそうだと良いな、と思いました。


『ほら、いつまでも泣いてたらあの子も困っちゃうわよ? アカネはそれでいいの?』

『……ううん、僕もう泣かないよ……猫のためだもん……』


 その後、僕とお母さんは一緒に猫を埋めてお墓を立ててあげました。

 猫と一緒に遊んだオモチャをお墓の前に置いて、僕は最後のお別れをします。


『……っ……猫……大好き、だったよ……たくさん、遊んでくれて……ありがとう……これ、からは僕のことを天国で見守っていてね……さよう、なら……』


 泣いてはいけないと分かっているのに、目から涙がこぼれそうになります。

 そんな僕を、お母さんが後ろからギュッと抱きしめてくれました。


『いい? アカネ。あの子は遠くに行っちゃったけど、お母さんだけはどこにも行かないから……ずっとずっとアカネのそばにいるからね』

『……うん、お母さん……ぜったいだよ?』

『えぇ、約束よ……愛してるわ、アカネ』







 ◇◇◇◇◇◇


『……じゃあ、家に入ろうか?』

『うん』


 僕とお母さんは手を繋ぎながらお家に入っていきます。


『アカネは、今日は夜ご飯なにが食べたい?』

『うーんとね、僕は━━あれ? お母さん、靴になんか赤いのが付いてるよ?』

『…………あら、本当だわ。一体"どこ"で付いたのかしらね』

『僕が水で洗おうか?』

『……フフッ、お母さんが自分で洗うからいいわよ。ほら、涙で顔がベチョベチョよ、顔洗っていらっしゃい』

『うん、わかった!』


 この日のお母さんは凄く優しくて、僕を叩いたりはしませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ちょっこわい [気になる点] 唐突な
[良い点] この主人公闇が深い!! タイトルと最初の内容から全く感じさせない闇の深さ!!
[気になる点] ま、まさか踏み殺され…ひぃっ!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ