5話※挿絵あり
休日、俺はチャイムの音で目を覚ました。
「ふぁあ……はぁーい……」
欠伸をしながら玄関を開けて外を眺めるも誰もいない。
なんだイタズラか。
しかし今時ピンポンダッシュとは珍しい。
そんな事を考えながら扉を閉めようとすると何かにそれを阻まれる。
「……うぅん?」
見れば俺の腰くらいの背の少女がジト目で扉にしがみついていた。
俺はその少女に見覚えがあった。
「……ん? あれ? 琴音ちゃん、どうしたの」
「……」
すると琴音ちゃんはジト目のままこちらを見ると俺の腰にガシッと抱きつく。
「んー、とりあえず一回家に入ろうか?」
「……」コクッ
うん、ひとまずこれでOKだな。
あとは琴音ちゃんから話を聞いて施設に電話しないと。
◇◇◇◇
「それで、急にどうしたの琴音ちゃん。施設抜け出してきちゃったの?」
「……」コクッ
「そうなんだ、なんか嫌な事でもあった?」
「……」ブンブン
あれから、こんな感じで俺は琴音ちゃんから事情を聞いていた。
ご覧の通り琴音ちゃんは言葉を話せない、だから俺が質問してそれにyesかnoで答えさせている。
「んー、どうしたんだろうね……あっ、もしかして俺に会いたくなったとか?」
自分で言って恥ずかしくなったがその瞬間、琴音ちゃんがコクコクッといつもより元気に首を縦に振った。
「えぇ……まさかの当たりかよ……いや嬉しくないわけじゃないけどさ……」
ガシッ
困惑している俺の腹に琴音ちゃんが再び抱きついてくる。
コアラかな?
まだ怪我が治っていないので鈍い痛みが俺を襲う。が、気合いで耐えて琴音ちゃんの頭を優しく撫でた。
「そっかそっか……俺に会いたかったんだね……よしよし」
「……♪」スリスリ
匂いでもつけているつもりなのだろうか?
琴音ちゃんは気持ち良さそうに目を細めて、座っている俺の腹に頭を擦りつけてくるが……ちょっと待ってくれ、らめっ! そんなことしたら開いちゃう! 傷が開いちゃうからぁあああああ!!
ジュワッ……
あっ、濡れちゃった♡(出血)
◇
その後、俺は琴音ちゃんが預けられている児童養護施設"あいの里"に電話して琴音ちゃんを1日だけウチで預かる旨の話をした。
「なんかスッゲェすんなりOKされたけど良いのかね?」
「……?」
そして現在、俺は琴音ちゃんを膝の上に乗せながら一緒にゲームをしている。
『ファ⚫️コォォン……パーンチ!!』バコーン!!
「ぐわー! また負けた! 琴音ちゃん強すぎませんかね!?」
「……!」ふんすっ
ダダダダダダ!! バコーン!!
「うわっ!? 空中でその膝キックは反則だってぇ!!」
「……!!」ふんすっふんすっ
琴音ちゃんはゲームが強かった。
そこそこ上手い自信があったのにさっきから一度も勝てていない。普通に悔しい。
ていうか琴音ちゃんの使っているキャラが全身タイツでヘルメットのオジサン(ピンクカラー)な件について。
もっとこう……あるだろ?
桃の姫様とかピンクの悪魔とか可愛いのがいっぱいいるだろ!
なんでよりにもよってそんなランチの画像を淡々とアップしてそうなオジサンを使うんだ(伝われ)
「……く、クソッ、こうなったら仕方ない! 必殺『くすぐり』だぁ!」
「……っ!?♡」ビクビクビクンッ
脇をコショコショとくすぐられた琴音ちゃんの身体が震え、言葉にならない悲鳴のような嬌声のような声をあげたその瞬間、俺はコントローラーを構えて一発逆転を狙う。
勝てばよかろうなのだぁあああああ!!!(ゲス顔)
「そこだぁ!!!! 行っけぇええええ!!!」
『ファ⚫️コンキィック!!』バコーン!
————————— G A M E—————————
—————————— S E T—————————
「アイエエエエエエエエ!!! マケタ!? マケタナンデ!?!?」
「~~っ!!」ペチペチペチペチ!
「いてっ、いたいいたいっ、ごめ、琴音ちゃんごめんって!」
俺氏、幼女に卑怯な手を使うも完全敗北した也。
強すぎんだろ……(驚愕)
◇
「Foo↑ 気持ちぃ~!」
夜になり、風呂を済ませて俺がリビングに戻ってくると琴音ちゃんが俺の枕を抱きしめるようにして眠っていた。
「……」スゥースゥー
「おほ~、グッスリ眠ってらぁ……しかし俺の寝る場所どうすっか。流石に幼いとはいえレディと一緒に寝るわけにもいかんし……まぁ、床で寝れば良いか」
俺は琴音ちゃんの体に毛布をかけてから床にタオルケットを敷いて横になり目をつぶった。
「おやすみ、琴音ちゃん」




