外伝というかボツストーリー的なもの 前編
最近、嘘告なるものが流行っているらしいので作者なりの嘘告を書いてみました
——突然だが、諸君は嘘告というモノをご存知だろうか?
そう、虚偽の告白をして相手がウッキウキでOKしたらウッソぴょ~ん!って言うアレである。
全くもって楽しさが分からないが、なんでも巷では空前のブームとなっているらしい。
何故興味もないのにいきなりこんな話をしたのか。
それは勿論、今現在俺自身が嘘告されている真っ最中だからに他ならない。
どうしてこうなった。
◇
「ふぁーwww コイツマジで来やがったぜwww」
「アホ過ぎワロタwwwww」
「スッゲーマヌケな顔してて草wwww」
放課後の体育館裏、3人の男子生徒が俺を取り囲むようにして大爆笑している。
下駄箱に手紙が入ってて『伝えたい事があります、体育館裏に来てください♡』というのでメチャクチャ期待して行ってみたらこれだ。
途中鼻歌なんて歌ったりスキップしたりして、通りすぎる人達に変な目で見られたんだぞ、なんてことをしやがるのか……(憤慨)
「なんでこんな事したんだ? って顔してるねぇ……良いぜ、教えてやるよ」
俺が絶望にうちひしがれていると、男子生徒の一人が俺の顔を覗きこみながらそう言った。
「3組の雁木 真理って知ってんだろ? ソイツ俺の幼馴染みなんだけどさぁ……この前、真理が恋愛相談したいって連絡してきて俺に言ったんだよ。『アタシ茜っちのことが好き、コクろうと思うんだけど何て言えばいいのかな?』ってさぁ……いやー、俺は心底驚いたね。真理はずっと俺の事が好きなんだと思ってたからさ」
「……」
俺は黙って男子生徒の話に耳を傾けながら、脳ミソをフル回転させる。
……すぅー……雁木 真理……ガンギ マリ……。
そんな人いたっけかな……?
なにやらキメてそうな名前だ。
「そんでさぁ……俺、その時になって気付いたワケよ。『あっ、俺は真理の事が好きなんだ』って」
「ほうほう」
「……相手が普通のヤツなら応援したぜ? でもお前はダメだ。知ってるぜ? お前、この学校の女どもにスゲー人気らしいな? クッソ気にいらねぇ……そんなヤツが真理を幸せに出来るわけがねぇ。どうせすぐに浮気して悲しませるに決まってるからな……だからさぁ、"俺が真理を幸せにしてやらなきゃ"って思ったわけよ……ククッ」
「ファッ!?(驚愕)」
何それ、俺が学校の女子に人気ってどこ情報だよ。
そんな人気なら今頃彼女がいるはずだろ、いい加減にしろ!(全ギレ)
「……もう分かっただろ、お前を今日ここに呼び出したのは忠告をするためってワケだ。もしも俺の真理に手を出したらこうなるぞ……ってな。おい、やれ」
「「うぃっす」」
背後にいた男子生徒二人が、突然俺の体を地面に押さえつけるようにのし掛かってきた。
「!? ガァッ!!?!」
背後に感じる人間の重さに吐き気を感じると同時、手に激痛が走る。
——見れば、俺の右手の甲には"釘"が地面に縫い付けるよう深く突き刺さっていた。
……おいおい、俺はキリスト様じゃねぇんだぞ。
「ヒャハハッ! もう片方もいくぞぉ!」
いつの間に持っていたのか、俺の前に立っていた男子生徒の手には金槌と釘が握られていた。
そして俺の左手に釘の先端を押し付け、握っていた金槌を思い切り振り下ろした。
カァン!
「~~ッ!?!!?」
再びの激痛、口の中に土が入るのも構わず呻き声をあげる。
両手の甲に釘が突き刺さり、俺はまるで土下座しているような格好になってしまう。
尻はプリッと上に突きだしており、端から見ればこのうえなく無様だろう。
一瞬、自分で想像して笑ってしまった。
「お似合いの格好だなぁ……でもまだ足らねぇ……徹底的に痛めつけて、反抗なんて出来ないようにしないとなぁ?」
俺が痛みに耐えているとなにやら体をまさぐられるような感触。
嫌悪感で鳥肌がたちすぎて、本当に鳥になり羽ばたいてしまいそうだ。
…………なんだ? 体がスースーする……。
「うわっ!? なんだコイツ! 体中、傷だらけだぜ! 気持ち悪い!」
「……オェッ、これアイロンの痕か? こいつ虐待されてたんかよ、ウケるわwww」
……どうやら、俺は服を脱がされていたようだ。
お前らホモかよ!? なんて心の中でツッコミを入れる俺をよそに、彼らはひとしきり俺の体を笑いながら蹴り、そして『どうせ傷だらけなんだから灰皿にしちまおう』と煙草で背中に根性焼きをした後、去っていった。
『チクッたり、真理に手を出したらどうなるか分かってるよな?』なんて最後に言い残して。
「ペッ! ペッ! ……いってぇ……口の中もジャリジャリするしマジ最悪だ……」
——正直、体よりも心が一番痛かった。
後編に続く




