12話
ほのぼの回です
「ぐわぁああああっ!! 負けたもぉぉぉん!! あんなに練習したのにぃいいい!!!」
「……」ふんすっ
休日、俺はコントローラーを砲丸投げしながら叫んだ。
再び施設を抜け出して、俺に会いに来た琴音ちゃんにリベンジするため、某スマッシュ兄弟を起動するもコテンパンにされてしまった。
もうね、動きが変態すぎるんだよね(使用キャラもだいぶ変態だが)。
せっかく練習したメテオも使わせてもらえず、一方的に画面外へとぶっ飛ばされる。
流石にここまで実力差があっては、もはやプライドも糞もない。
「はぁ……なんだか自信無くしちゃうなぁ……」
「……?」ナデナデ
俺がガックリと首を落としている(打ち首ではない)と、琴音ちゃんが俺の頭を撫でてくれた。
「くぅ……その優しさが逆に辛い! よし! 琴音ちゃん別のゲームやろう! 今度は二人で協力して遊べるやつ!」
「……!」コクコクッ
そして俺達が選んだのはデカいモンスターを強力な武器で狩るゲームのポータブル版だ。
ちなみに俺はポータブルを二台持っている。
友達がいないから一人で二台使って遊んでいたのだが、今回はそれが功を奏した。
言ってて悲しくなった。
琴音ちゃんに操作方法等を説明しながら、互いに装備を整えギルドでクエストを受注する。
「よっしゃー! じゃあ狩りに出発!! おー!」
「……!」
俺は太刀、琴音ちゃんは大剣という感じでフィールドの雑魚モンスターをぶっ飛ばしながらボスモンスターを探す(というか琴音ちゃん、前から思ってたけどメチャクチャパワー型ですよね)
GUAAAAAAAAAAAAAA!!!
「……!?」
なんて言ってる間に、琴音ちゃんがボスモンスターを発見したようだ。
「待ってて琴音ちゃん! 俺もそこに行くから!」
急いで琴音ちゃんのマーカーが表示されているマップへと向かう。
ようやくたどり着き、琴音ちゃんとともにモンスターに斬りかかるが、相手も上級のモンスターなので一筋縄ではいかない。
二人対一匹のギリギリの戦いはどんどん白熱していく。
「……!?」ガキン!
「……」ジョウズニヤケマシタ!
「……!」ザシュッ! ザシュッ!
「……」ジョウズニヤケマシタ!
「……!」ペチペチペチペチ
「いたっ!? いたい! ごめっ、琴音ちゃん! 叩かないで!」
戦闘そっちのけで肉を焼いてたら、琴音ちゃんに怒られた。
だって琴音ちゃん初心者なのに俺より上手いんだもん。ぐすん。
━━目的を達成しました━━
そして、ようやく目標のボスモンスターを討伐し、剥ぎ取りタイムへと移行する。
「いやぁ……琴音ちゃん本当にゲームが上手いねぇ……俺2落ちしちゃったのに、琴音ちゃん一回も死ななかったもんね」
「……!」ふんすっふんすっ
「それで、どうだった? このゲーム気にいった?」
「……」コクコクッ
すると琴音ちゃんが頷いた後、紙に文字を書いて俺に見せた。
"おにいちゃんといっしょにあそべるからすごくたのしい"
「ぐわぁあああ!! なんて良い子なんだ琴音ちゃん!!! 俺も琴音ちゃんと一緒に遊べて嬉しいよぉ!!!!」
「……っ!?」ジタバタ
あまりの嬉しさに、思わず琴音ちゃんを抱き締めてしまうが凄く抵抗されてしまい、泣く泣く解放する。
顔を真っ赤にしていたから相当イヤだったようだ。
なにもそんなに嫌がらなくても……。
「オォン! オォン!(号泣)」
落ちこみ咽び泣く俺に、琴音ちゃんがトントンと肩を叩き再び紙を見せる。
"もういっかいやろ?"
「琴音ちゃん……」
「……♪」ちょこん
まるで、俺の膝の上が定位置なんだと言わんばかりにご機嫌で座る琴音ちゃん。
……そっか。
きっとさっきのは照れ隠しだったのだ。
そう思うとなんだか無性に彼女が可愛く思えてきた。
「よし! 次はもっと難しいクエスト行こう! 今度は俺メチャクチャ本気だすから! 琴音ちゃんの出番なかったらごめんね!」
「……」"ほんとかなぁ?"
——その後、俺は一人で3落ちしてクエストに失敗し、琴音ちゃんにペチペチ叩かれた。




