第五十二問「終末へ進む世界」
よろしくお願いします。
この物語もあと3話くらいになって参りました。
どうぞ最後までお付き合い下さい。
AOFにログインすると共に、サラから連絡が届いているのを確認する。
どうやら無事にダスターの居場所を見つけられたみたいだ。直接説明したいという事なので、ほのか達も呼びながら始まりの街の冒険者ギルドで合流する。
「遅くなってごめんね、お兄ちゃん。最初にここはないだろうなって思ってた所に居を構えてたものだから、見つけるまでに時間が掛かっちゃったわ」
そう言って開口一番に謝るサラ。別に遅くなったのは気にしなくても大丈夫。サラじゃなかったら、もっと遅くなっていただろうし。そう伝えると、ちょっとはにかんだ後に続けた。
「それとお兄ちゃん。ひとつ謝らないといけないことがあるの。実はね、私が向こうを見つけたのを、向こうに気付かれちゃったみたいなの。だから、もしかしたら向こうから攻めてくるかもしれないわ」
ポンッ!!
【緊急クエスト「始まりの街の防衛戦線」が発令しました。こちらは強制クエストになります。
このクエストに失敗した場合、始まりの街が消滅する可能性があります。
魔物の先遣隊が街に到着するまで、現地時間で約2時間です】
サラの言葉を肯定するかのようにクエストが発行される。
その知らせを受けて街中が大騒ぎになっているのが、ギルドの中からでも良く分かる。2時間か。人手が集まるかどうか、微妙なラインだな。時間帯的にそれなりの人数がログインしてくれているとは思うけど。
「確かに、魔王軍が動き始めたみたいだね。それで、サラ。ダスターの本拠地はどこにあったの?」
そう尋ねる僕にささやくように答えるサラ。
「……世界樹の森よ」
あー、なるほど。灯台下暗しってことだね。まさか自分の古巣に居を構えているとは考えにくいか。
それにしても、今回の騒動って、世界樹の森に始まって、世界樹の森で終わることになりそうだ。まぁ最終決戦にはお誂え向きだね。
そう思ってたらギークさんが僕の所に来て一声かけて行く。
「おう、テンドウ。聞いてると思うが、俺たちは街の防衛線を今から張る。外来人街の奴らも応援に呼ぶし、こっちの事は心配するな。お前たちはやる事があるんだろ。ならさっさと終わらせて来い」
ポンッ!!
【緊急指名クエスト「魔王討伐」が発行されました。こちらは他のあらゆるクエストよりも優先されます】
男前でかつ、まるでこっちの事情を全部知ってるんじゃないか勘ぐりたくなるような発言だ。
まあ、折角の指名だから、ありがたく使わせてもらおう。
「じゃあ、ここはみんなに任せて僕らは魔王の所に向おうか」
「ええ」「はい」「任せて」
そうして僕らは街の南側に出る。そこは早くもバリケードと陣地が形成され始めている。こういう時に街作りのノウハウが役に立ってるみたいだ。そのさらに外側に出て、街の人たちから見えなくなった所で、ダンジョンへの入口を開き、僕のダンジョンを経由して、師匠のねぐらへ出る。
そこには既に師匠とアシダカさん、カゲロウが待っていてくれた。
「遅かったではないか。待ちくたびれたぞ」
そう言う師匠は今にも飛び出したくてうずうずしているようだ。逆にアシダカさんとカゲロウは静かにそこに佇んでいる。
と、そこで気付いたけど、ねぐらの周りが凄いことになっていた。防壁を張った外側にびっしりと多種多様な魔物が群がっている。そうか、アシダカさん達が静かなのはこの防壁を維持するために意識の大半をそっちに使っていたからか。僕たちが来れるように入口のここを守ってくれてたんだね。
「アシダカさんもカゲロウもありがとう。後は僕らで魔物を蹴散らして行くよ」
そう言うと、ホノカに僕の右肩が叩かれた。
「待って、テンドウくん。テンドウくんは対魔王戦の為に力を温存しておくべきだわ」
さらに、ミーナちゃんが左の袖を引いてくる。
「そうです、お兄さん。わたし達は魔王にも世界樹にも直接的な因縁はありません。だからここはわたし達が道を切り開きますので、皆さんで先に進んでください」
そう言ってくれるふたりの目を見ると、力強くうなずいてくれる。
「うん、じゃあお願いするね。でも無理はしないでね。僕らが走り去った後はダンジョンに入って隠れ里エリアに居てくれれば安全だから」
「分かったわ。でも大丈夫よ。この一か月間、テンドウくんと強力な魔物とばかり戦ってたお陰で、ここに居る魔物が雑魚にしか思えないわ」
「そうですね。これくらいの魔物なら1日中だって戦っていられますよ」
うちの女性陣は時々僕よりも格好いいから困る。これじゃあ僕だけ失敗しました、なんて言えないね。
「それじゃあ、ミーナちゃん。やりましょうか」
「はい、お姉さん」
そうしてふたりが手を繋ぎ、反対の手を世界樹の森の中心へと向ける。すると二人を中心に魔力が渦を巻き始める。これは毎朝公園で3人でやってる特訓の2人バージョンか。
そうして魔力が極限まで高まると、ふたりの突き出した手に収束し、
「「いっけぇ~~~~!!」」
掛け声と共に撃ち出されたそれは、極太の魔力砲となって魔物を蹴散らして行った。
「さあ行って、テンドウくん」
「頑張ってくださいね」
「ありとう、ふたりとも。無事に全部終わらせて、明日の朝にいつもの公園で会おう」
「ええ」「はい」
それだけ伝えると僕たちは二人が空けてくれた道を全速力で駆け抜けていった。
……
…………
………………
「行っちゃいましたね」
「ええ、行っちゃったわね」
「あの、お姉さん。わたし最近、この世界がVRなのかリアルなのか分からなくなることがあるんです」
「あら、メビウス症候群?奇遇ね。私もテンドウくんと活動し始めてから時々そう感じるわ」
「お兄さん、ちゃんと無事に帰ってきますよね」
「もちろんよ。もし帰ってこなかったらダンジョンの奥底まででも探しに行って、首根っこ捕まえてくるわ」
「ふふっ、良いですねそれ。じゃあその為にもまずはここの魔物を蹴散らしましょうか」
「ええ、ちゃんと帰って来れる場所を作っておいてあげましょう」
そんな場違いな会話をしながら、わたし達は万を超える魔物たちに挑むのだった。
最終決戦を前にドロップアウトするヒロイン達。
ここだけは実は結構前から決めていた流れです。
そして最大の問題は、エピローグの構想はあるのだけど、字数的にどう繋げようか。




