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VR世界は問題だらけ  作者: たてみん
最終章:世界は問題だらけ
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第五十一問「道を正す為に」

よろしくお願いします。

要塞攻略の次の日は、攻略に参加したみんなで集まっての打ち上げが行われ、何故か僕についての詰問コーナーみたいになっていた。


それはまぁ良いんだけど、サラから連絡が来ない。どうやらダスターは相当見付けにくい所にいるみたいだ。もしくは僕の予想が外れたか。

要塞攻略が終わったその足で、ダスターのダンジョンに行ってみたけれど、神社ごと無くなってただの広場になっていた。

もしもの時の為にゲートを本殿の床下にセットしておいたんだけど、そのせいでゲートだけ取り残されたみたいだ。まぁ、もしかしたら、また戻ってくるかもしれないし、ゲートはこのまま残しておこう。


そしてその次の日、僕とほのかと水菜ちゃんは今後の方針について話し合っていた。

「魔王の居場所が見つかったとして、天道くん。どうするの?」

「そもそもお兄さんは、どうしてそこまで魔王を目の敵にされてるんですか?」

「それもそうね。天道くんがそこまで怒ってるのってよっぽどよね」

あ、そう言えばまだ僕とダスターの関係についてふたりに話してなかった。なら、この機会に一通り伝えておこう。別に隠す必要もないしね。

「ちょうど長くなるんだけど、世界樹の卵イベントの事は覚えてるかな。……」

と、世界樹から始まり、ダスターとの出会い、ダンジョン改革に協力したことや先日の盗賊騒ぎから始まった要塞攻略戦までの話を伝えた。


「弟分か。なるほどね。天道くんが自分で落とし前を付けたいって言ってた理由がよく分かったわ。だから天道くんは今回の事にそんなに責任を感じてたのね」

「じゃあ、盗賊討伐の後に一人で出掛けていったのは、ダスターさんに会いに行ってたんですね。まったく、弟分なのにお兄さんの想いを裏切るとは。妹分としてもご挨拶に行かないといけないですね」

一通り伝えると、ふたりとも納得してくれた。

「そんな訳で、今回の事の原因って、半分は僕にあるんだ。だからダスターにお説教するのは僕に任せて欲しい」

「分かったわ。じゃあ、私たちで魔王までの道を空けるから、天道くんは魔王に集中してね」

「わたしたちの分までお尻ぺんぺんしてきてください」

「うん、ありがとう。後はサラからの連絡待ちだね」


そう話が纏まったところでマスターがパンケーキと珈琲のお代わりを持ってきてくれた。あ、こういうときは年長者の意見も聞いてみるべきかな。ちょうどお店も落ち着いてるし。

「あの、マスター。相談したい事があるのですが、今少しお話する時間はありますか?実はですね……」

「ふむ。子供を叱るときのコツ、ですか」

そう言いながら水菜ちゃんのことをちらっと見るマスター。

「うちの娘は見てのとおりでして余り参考になるかどうか」

「あーそうですね。確かに」

そう納得し合う、僕とマスター。それを聞いてあたふたする水菜ちゃん。

「水菜ちゃん、出来が良すぎて叱る事なんてそうそうないですよね」

「そうなんですよ。私達には勿体ない程良くできた娘でして。いやまったく、親ばかで申し訳ない」

そう言いながら笑うマスターと、照れて真っ赤になる水菜ちゃん。マスターと話すときは1回くらいはこの親ばかトークが入るので、僕はもう慣れて来た。

「まあ、なので一般論ですが。そうですね。間違った事をしていても叱らない親を3流としましょう。間違ったことをただ叱る親は2流です。そして、次に間違わないように指導するのが1流だと言います」

「なるほど。確かに『ダメじゃないか、なんでそんなことしたんだ』って怒った所で、じゃあどうすれば良かったのかが分からないと同じ失敗を犯してしまう訳ですね」

「そういう事です。そして実際の正解例を示してあげるのが良いのではないでしょうか」

「『やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、褒めてやらねば人は動かじ』でしたっけ」

「そういう事です。っと、お客様ですね。それでは私はこれで」

「はい、ありがとうございました」


あれ?ほのかと水菜ちゃんがぽかんとしてるし。どうしたんだろう。

「ねえ天道くん、さっきのあれってどういう意味?」

「あぁ。昔の人の言葉。誰かに何かを教える時に、ただやれって言うんじゃなくて、実際にやって見せたり、褒めてあげたり、話を聞いて、信頼して託したり、そうした事の積み重ねで弟子は育つんだよって事。だから、今回のことも、ただ、お尻100叩きすれば良くなるかって言ったらそうじゃないよね」

「確かに。わたし、お父さんにお尻叩かれた事は無いです。間違った時は『何がしたかったの?』から始まって『じゃあどうすれば良かったかな』ってゆっくり考えさせてくれます」

「あー、マスターらしいね。うん。だから水菜ちゃんはこんなにまっすぐ育ってるんだね」

あ、また水菜ちゃんが赤くなっちゃった。


「まぁ、後半教育論っぽくなっちゃったけど。ともかくダスターの居場所が分かって突撃するとなったら、かなり厳しい戦いになると思うから、ふたりともよろしく頼むね」

「任せて」「はい、お兄さん」


そしてその日の夜、サラから魔王の居場所が見つかったと連絡が入った。

山本先生のお言葉をお借りしました。

ただ怒るのではなく、叱って導いてあげましょう。


そして世界は最終局面に向かいます。

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