第四十七問「そして今度こそ」
よろしくお願いします。
早いもので最終章に突入します。
まさかここまで書き続けられるとは思ってもみませんでした。
このまま最後までお付き合い頂けると幸いです。
海から帰ってきた日から3日ほどが経った日の夜。
AOFで僕達は先週から引き続き凶悪化した魔物の討伐を兼ねて各地を回っていた時。
ポンッ!!
【基準値をクリアしましたので、Aランク昇格クエスト「凶悪魔獣の討伐」をクリアしました】
という通知が送られてきた。
みんなが頑張ってくれるから凄く順調であまり実感は無いけど、これで無事にAランクに昇格できるようになったらしい。
なので報告の為に始めの街に戻る事にしたんだけど。
あれ?なんか空気が澱んでいるというか気持ち悪いというか変な感じだ。それに前回来たときに比べて街に活気がない。ホノカ達に確認しても特に何かがあったとかは聞いてないらしい。まあ、冒険者ギルドに行けば何か分かるかな。
そう思ってギルドの受付に行くと、そのままギルドマスターの部屋に通される。これはいよいよただ事では無さそうだ。
「よく無事に帰って来てくれた、テンドウ。もう薄々気付いていると思うが、少し相談に乗って欲しい」
そう言って僕たちを席に招くギークさん。僕らが座ったのを見計らって話を続けてくれる。
「先日、外来人達が要塞型ダンジョンを巡って戦争じみた事を知っているだろ」
「まあね」
元はと言えば、僕が発起人だし。2つのグループに分けて争わせたり色々要素が増えてたのは、ダスターか運営がやった事なんだろうけど、責任の所在があるとしたら僕だろう。
「あれの後くらいからなんだが、どうも街を含めて空気が重いというかな。なにか嫌な予感というか虫の知らせっていうのか。どうにも近いうちに何かが起こるんじゃねえかって漠然とした不安があるんだ。多分みんな口には出さないが、同じことを思ってるんじゃねえかな」
そうか。この感じは僕たちだけのものじゃないんだね。
「こんなよく分からねえ話だが、出来る事なら大事になる前に解決したい。これまで色んな難題を解決に導いてきたお前さんなら何とかしてくれるんじゃないかと勝手な期待だが頼めるか」
渋い顔をさらに歪めて話すギークさんを見ると、ただの勘ではなく、実際に何かが起きてるんだと思わされる。
そんなギークさんの目を見て頷いたところで、突然部屋が暗くなる。昼間だから明かりじゃなくて外だ。
慌てて皆が窓の外を見ると南の空が一瞬で闇色の雲で覆われていく所だった。
それと同時にプレイヤー全員に対して通知が送られてくる。
【ワールドインフォメーション:魔王が地上に降り立ちました。
これより各地にて魔物の活性化および、魔王が討伐されるまで魔王軍による侵攻が起きる可能性があります。この侵攻は一定以上の損害を魔王軍に与えることで沈静化させることが可能です。
なお、これにより主要国家すべてが滅んだ場合、世界の終焉を迎える場合があります】
それを聞いて顔を見合わせる僕達。
「ギルドマスターが言っていた嫌な予感ってこれの事かしら」
「魔王がってことは、この前のなんちゃって魔王軍の比じゃなくやばそうだね」
「世界の終焉っていうのは、ゲームオーバーって事でしょうか」
そうやって話していると、今度は黒い雲をスクリーンに誰かの姿が映し出される。
『はーっはっはっはっは。聞け!そして跪け!おろかな人間どもよ。我は闇と迷宮を統べる魔王ダスター。貴様らに恐怖と絶望を与えるものだ。無駄な抵抗は止めて失意の元に朽ち果てるがいい。
あぁそうそう。先日、間抜けなG共には、我が力を蓄える為に無駄な争いをしてもらったことに感謝しよう。お陰で我は神にすら届く存在となった。
そして!! これより我の力を授けし者達が先日の要塞戦跡地から世界に侵攻を開始する。まあ前哨戦といったところだ。
その軍勢をみて、立ち向かおうとする愚か者が居るならば、見事これを打ち砕いて見せよ。
我は遠くの地より貴様らが絶望する姿を見物させてもらうとしよう』
って、ダスター!? いったい何をしてるの。まったく。
いつからそんな悪役になったんだか。って、最初からダンジョンマスターだとは言ってたか。でもこれは話が違うよね。立派なダンジョンマスターになるんじゃなかったのかな。
あーじゃあ、あれかな。あれもこれもそれもひっくるめて、僕が手伝ったことってダンジョンの為じゃなくて、魔王なんてものになる為に使われたんだね。つまり、全ては僕が原因か。じゃあ僕が落とし前を付けに行かないといけないよね。それに弟の尻拭いは兄貴の役目だ。ふふふっ、反省して改心するまで尻叩きの刑にしてあげようね。
そう思ってたら左右から袖を引っ張られた。
「テンドウくん、どうどう。落ち着いて。ね」
「そうですよ、お兄さん。何があったかは知りませんが、わたし達も一緒ですから相談してください」
そう言われて、ちょっと自分が冷静で無くなってたことに気が付く。友人の事になると形振り構わなくなるのは僕の悪い癖だね。
「ありがとう、ふたりとも。少し落ち着いたよ。今回のことって、僕も無関係じゃないんだ。だから事態の収拾に向かおうと思うんだけど手伝ってくれるかな」
「もちろんいいわよ」
「愚問ですよ、お兄さん」
「うん、ありがとう。それじゃあ、ギークさん。僕らはちょっと魔王ダスターっていうのにお説教しに行ってきます。出来れば他の外来人たちにも声を掛けて被害を最小限に食い止めてください。では」
そう言って僕らは退室していく。
「お説教って、まったく。まあ、あいつなら本当に散歩するみたいにやってきてしまいそうだが」
部屋のなかから、そんなギークさんの声が聞こえるけど、気にしなくて良いだろう。
さて、まずはダスターが言っていた、前哨戦っていうのを済ませて被害を抑えないといけないね。
皆様の予想通り、ダスターが魔王になりました。祝:脱引きこもり。
おいたをした弟分を叱るのは兄貴の役目です。
そして!!
こっそり次作品書き始めました。まだ内容全然考えてないので毎日連載までは時間かかるかもですが、
良かったらブックマーク付けておいてください!
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