第四十四問「海だーー!!」
よろしくお願いします。
期待していた皆さん。残念ながらさらっと進みます。
海岸沿いの丘の上に建つ洋館が、今回お借りした別荘だ。
僕ら3人は車から降りてしばし洋館を眺める。
「凄い豪勢な別荘だね」
「はい、すごいです」
2人がそうこぼすのも無理は無いと思う。どこからどう見ても、ザ、金持ちの別荘だ。しかも定期的に掃除などをしているのか、ごみ一つ落ちていない。
先を行く千堂さんについて僕らは別荘の中に入って行った。
1階部分は広々としたリビングとキッチン、お風呂などがあり、冷蔵庫の中には2日では食べきれないだろう食材が詰まっている。
2階には部屋が3つあり、それぞれベッドが2つずつ置かれている。僕が一部屋、ほのかと水菜ちゃんで一部屋、もう一部屋は千堂さんに使ってもらう事になった。
元々千堂さんは僕たちをここに連れてきた後は明日の帰りまで近くのホテルに泊まるつもりだったらしいが、折角ならということで、残った部屋に泊まってもらう事にした。
荷物を置いてまず行うのは、セキュリティシステムへの登録処理。これをすることで、僕ら以外の人が別荘に侵入しようとすると各種警報などが鳴るようになる。それが終われば早速海に行こうという話になり。
「じゃあ、天道くんは先に行ってて」
という事になった。あ、その前に。
「千堂さん、水着って持ってこられてますか?」
もともと、送迎のみで空き時間は仕事をしようとしていた千堂さんだ。僕の専属であることから強権を発動して、この2日間は僕らの大人の保護者役という立ち位置で一緒に遊んでもらう事にした。ただそうすると水着などの用意は持ってきていない訳なので。僕は自分の荷物の中から紙袋を取り出して千堂さんに渡す。
「これ、千堂さんの水着ね。持ってきてないだろうと思って用意しておきました」
そう言って、千堂さんが何かを言う前にさっさと渡して海岸に向かう。あ、ちなみに僕は元々、水着を中に着こんでいるので向こうで上着を脱ぐだけで着替える必要がない。
「……あの、これ。どうしましょう」
受け取った困惑する千堂さん。心なしか顔が赤いのは気のせいではないだろう。
「覚悟を決めて着るしかないですね」
「そうです。折角お兄さんが選んでくれたんですから」
そう言って千堂さんを挟んで部屋へ移動する、水菜ちゃんとほのか。
「こうしてキチンと用意しているところは、さすがお兄さんですね」
「そうね。でもいつの間に選んだのかしら」
「え、こ、これ!? こんな素敵なデザイン、私に似合うのでしょうか」
そう言いながら、3人は水着に着替えるのだった。
そして20分くらい待ったころ
「お待たせしました。お兄さん」
「おまたせ。どうかな天道くん」
「……」
僕の前に水着姿の3人がやって来た。ほのかと水菜ちゃんは期待した目で僕を見ていて、千堂さんはほのかの後ろで所在なさげに立ってる。
「みんなとっても良く似合ってて可愛いね」
水菜ちゃんは水色をベースにツーピースの布面積広めの水着だ。清楚で可愛らしい中に女性としての魅力も十分にアピールしている。
ほのかの水着は赤をベースにしたビキニで、モデル顔負けのスタイルと胸を強調したデザインで布面積の少なさから、見てるだけでドキドキしてしまう。
最後に千堂さんは、黒をベースにした帯状の布を重ね合わせたようなデザインのワンピースタイプ。大人の女性の魅力を余すところなく表現している。
そう思いながら、一人ひとりに感想を伝えていくと、みんな赤くなりながら喜んでくれた。
「みんな、海で遊ぶって言ったら何が思い浮かぶ?」
「ビーチバレーかな」
「浅瀬で水を掛け合ったり、泳いだり、でしょうか」
「・・・・・・砂のお城を造るのは如何でしょうか」
上から、ほのか、水菜ちゃん、千堂さん。千堂さんの場合、本格的なお城を造ってしまうイメージがあるな。
「じゃあ、まずは浅瀬で遊んでからビーチバレーにしようか。多分それくらいでお昼になるから、午後から砂のお城を造ったり泳いだりしようか」
「「「はい(はーい)♪」」」
「じゃあ浅瀬まで競争ね♪」
「あ、お姉さん、ずるいです」
そういって走り出すふたり。
僕も負けずに駆け出す、と、その前に、まだ少しもじもじしている千堂さんの手を引っ張る。
「ほら、千堂さんも行きますよ」
「え、天川先生! ちょっと、まだ心の準備が」
なんて言ってるけど、こういうのは勢いだと思うから気にせず、ほのか達のところへ向かう。
「天道くん、遅いよ。それっ!」
「千堂さんも、行きますよ」
そう言いながら先に着いていた2人から水を掛けられるのを皮切りに、僕らは夏の海を満喫していった。
日が暮れ始めると、僕らは海から上がって、夕食の準備に取り掛かる。
こういう時はBBQだろうと暗黙の了解のもと、BBQセットを倉庫から取り出してきて火を起こす。
冷蔵庫から食材を取ってきたり、食器や飲み物を用意し終えるころには皆もシャワーを浴びて私服に着替えてやってきた。
「すみません、天川先生。準備をお任せしてしまいまして」
「気にしないでください。こういう時って身支度が少ない分、男のほうが余裕がありますから」
そう言いながら早速、肉と野菜を焼き始める。みんなも飲み物片手に今日の思い出話に花を咲かせる。
「それにしても、天川先生は文才だけでなくスポーツもお上手だったんですね」
「まあ、それなりに、ですね。ただ、今日のビーチバレーはひどかったと思いますけど」
そう言って横のふたりに視線を向けると、若干視線を外しながら肉を食べてるし。今日のビーチバレーはなぜか僕vsほのか&水菜ちゃんペアでの対戦だった。普通、どう考えてもバレーを一人では出来ないと思うんだけど「天道くんなら行けるんじゃない?」というほのかの一言でやることになった。ちなみに千堂さんは審判役に逃げている。
「それでもしっかり試合になるのがお兄さんの凄いところです」
「そうそう。ジャンピングレシーブした後に自力でカバーしてたもんね」
「私としてはフェイントに完全に対応されていたのも凄いと思いました」
まあそうは言ってくれるけど、遠くから見たら、僕が一人コートの中をドタバタ跳ね回っているように見えたことだろう。
「そういう千堂さんも午後に作ってた砂のお城は凄かったですね」
「誰が見てもシンデレラ城だって分かる出来栄えでした」
「うん、見てた人が写真取り捲ってたもんね」
今もまだ残っているので、もしかしたら明日テレビの取材なんかが来るかもしれない。
BBQが終わった後はみんなで花火を楽しむ。手持ち花火から打ち上げ花火に線香花火と各種用意されていた。
それも終われば後片付けをして、明日に備えて休むことにする。
女性陣はほのか達の部屋に集まって夜通し女子会をするらしい。というか、千堂さんは連れ去られた感じだけど。
その晩、僕は久しぶりにベッドで寝ることが出来た。
・・・・・・VRが来て以来だから、ちょっと懐かしく思ってしまった。
翻弄される主人公
「水菜ちゃん、それじゃあ水掛けじゃなく津波だがぼごぼっ」
「アタック、アタック、もいっちょアターック。ってなんでこれが取れるのよ!」
「天川先生、そこはもう2mm大きく。あぁ違いますちょっと貸してください!!」
元の構想の1/10になっています。




